武谷敏子の自分史ノート

埼玉県比企郡嵐山町女性史アーカイブ

心 いろいろ 菅谷婦人会長・中村きみ 1989年

2010-06-22 17:33:00 | 『しらうめ』10号(1989)

 或る日、用事で出かけた車中で、大変すばらしい青年を見ました。先輩らしい方との会話が非常に礼儀正しく、「はい」「はい」との小気味よい返事が何度も聞こえて来るのです。その言葉使いは、青年の育った家庭環境が如何にすばらしいかを、想像するのに充分でした。『はい、と云う素敵な心』と云いますが、まさにぴったりなのです。素直な心はすべてに通じると申しますから、この青年は必ず、幸せへの道、成功の道を歩んでゆく事でしょう。
 このように子供の心を育むのは家庭であり人生最初の教師は両親、そして周囲の人達でしょう。中でも母親の役割は大きく影響をあたえる訳です。町で開講しております『三ちゃん母親学級』がありますが、これは「子供の教育は三才までが肝心」である事や、最近子育てに自信のない母親が多くなっている事等を重視して、若い母親の学習の場として開設しておりますが、その折の保育(0才~5才)を婦人会からも協力させて頂いて五年になります。子供達のそれぞれの個性から家庭環境の重大さをみせられる一時ですが大家族か核家族かによっても大きく左右されるようです。
 核家族が多くなった最近は、当然一人暮らしの老人が増加しております。こうした方達に給食サービス(社会福祉協議会主催)を行っておりますが、この場合も婦人会からも協力させて頂いております。この様に奉仕の心で参加する事業も何回かあります。学習をし乍ら社会参加も出来るのが婦人会の特色ではないでしょうか。
 女性の社会参加が叫ばれて久しくたちますが、各分野で活躍しておられる方達を見ると大変たのもしく、又教えられる事も多々あります。昨年ある会社の女社長さんにお逢いする機会がありました。結婚して十年程は主婦業に専念しておりましたが、ふとした出逢いから仕事を始める事になり、僅か八年目にして年商百億円以上の実績を上げるようになったそうです。女性の潜在能力を充分に発揮しながら社会のために貢献し、経済的にも立派に自立している彼女はまだ四十才の若さです。自信と希望に充ちた顔はキラキラとまぶしい程に輝いておりました。「ものすごいエネルギーですね」の問いに笑みをうかべ乍ら「皆さんのお蔭様なのです、私の力ではありません。」と何の高慢な所もなく好感のもてる謙虚な心の持ち主の女社長さんでした。
 この様なビジネスをはじめ日常生活において一寸したミスや誤解から摩擦や争いが生じる場合もあります。お互いが反省の心をもつゆとりがあれば、自然に優しさが生まれ和が生まれてくるでしょう。
 さて激動の昭和が終わり新しい平成の時代となりました。内にも外にも『平らに成る』事を願っての元号といいますが、リクルート事件、消費税等、生活環境は目まぐるしく急変しております。高齢化時代、情報化時代、国際化時代といわれる社会背景の中で、私達主婦はどのように対処すべきか、大きな生活課題です。やがてむかえようとしている21世紀は、女性の時代といわれており、日本の女性が世界をリードするのではないかとアメリカのライシャワー博士は予言しております。
 人生80年を生き生きと生きるためには、常に学ぶ心を忘れず、時代のニーズに合った学習や研修を重ねつつ、自立しなければならない時代です。何時れにしても戦争のない平和な国、日本に生きられる事に感謝の心を忘れず、地域の和と世界の平和を願いつつ、嵐山町に住む女性として、心の輪をつなぎ共に歩んで参りましょう。

   菅谷婦人会『しらうめ』第10号 1989年4月