武谷敏子の自分史ノート

埼玉県比企郡嵐山町女性史アーカイブ

『しらうめ』第7号 文芸欄 1986年

2010-05-15 22:10:00 | 『しらうめ』7号(1986)

《川柳》
          恒木花子
  親心知らずにもれる情報かな
  教育は、子供のふれあい、あいさつで
  よい町は、すむ人たちで花ざかり
  こそこそと、夜中の茶のみ、老婦かな
  目をとじて、なき父母の、年をこし

《短歌》
          五区・中島清子
  旅の宿しじまを破って鐘の音
    修善寺の朝は静かに明けぬ

  霧のうみ前方を見つめる運転手
    ハンドルをたくみに使い下りて行くなり

  山門の仁王の肩のひび割れて
    小暗き中にしのぶ秋風

《雑詠
  シグナルが赤に変わってしばらくは
    たたずむ街角木枯し寒し

  一日中風の吹きたる夕空に
    姿やさしき三ヶ月の凧


   母のこと
          五区・中島清子
  七年前ひこ孫抱きて縁側に
    倒れし母の今日は七回忌

  兄妹で母の墓前にひざまづき
    霊安かれと祈りてゐたり

  明治、大正、昭和を強く生きた人
   父なきあと三十四年目に逝く

  十二月は霜枯れて
    山茶花のみが青にとして

  眠ってゐるような母の顔のまわり
    孫達が赤き山茶花をならべる

   菅谷婦人会『しらうめ』第7号 1986年4月