万葉うたいびと 風香’s ブログ

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大津皇子の涙

2016年09月19日 | なごみ
天紙風筆 雲鶴画 山機霜杼 織葉錦(懐風藻 志を述ぶ)
てんしふうひつ うんかくをえがき さんきそうちょ えふきんをおる
風香意訳:
天を紙に見立て 風を筆にして 雲で鶴を描く 緑深き山々は杼によって霜がおり 黄葉(もみぢ)の錦を織り成している


経もなく 緯も定めず 娘子らが 織る黄葉に 霜な降りそね(万葉集巻8−1512)
たてもなく ぬきもさだめず をとめらが おるもみじばに しもなふりそね
風香意訳:
たて糸も、横糸も定めずに美しい乙女たちが織るこの美しい黄葉(もみぢ)に これ以上霜がおりないでください


百伝ふ 磐余の池に 鳴く鴨を 今日のみ見てや 雲隠りなむ(万葉集巻3−416)
ももづたふ いわれのいけに なくかもを きょうのみみてや くもかくりなむ
風香意訳:
百に伝えるい いつの世までも伝え続けていくであろうその磐余の池に鳴く鴨を 僕は今日見るのを最後に雲隠れ命を終えていくのであろうか

金烏臨西舎
鼓聲催短命
泉路無賓主
此夕離家向  (懐風藻 臨終)
きんうせいしゃにてらひ
こせいたんめいをうながす
せんろひんしゅなし
このゆうへいえをさかりてむかふ
風香意訳:
太陽は西に傾き、時を告げる鼓の音がこの世での短い命をさらにせき立てる
黄泉路への道にはただ一人、誰もいない
この夕暮れに家を離れて一人向かう。。。。。


大津皇子が万葉集、懐風藻に残した歌群である。
万葉集には石川娘女との歌もあるが、あくまで万葉歌物語「二上山の落日 大伯皇女の嘆き〜斎王として 姉として」の主人公は大伯皇女であるので、あえて外す。

これらの歌、それぞれ上から
万葉歌「天紙風筆〜葉錦を織る〜」
「百に伝えるい」(オリジナル)
万葉歌「百伝ふ 磐余の池」
万葉歌「臨終一絶」
として、産み出した。

悲しすぎる歌であるにも関わらず、万葉歌が完成した当初から不思議なほどに大津皇子の涙はうっすらとしか見えてこなかったのである。
それは磐余の池の堤の上で流した涙だけ。(歌物語を見てくださった方はうなづいてくださっていることでしょう)
懐風藻や日本書紀に描かれている大津皇子の人柄が自身の最後さえも包み込んでいた、、、ずっとそう思っていた。

いつか歌物語を形ある作品として完成させたら、大津皇子に会いに行こう!と、ずっと心に決めており初演から3年経ってようやくその日がやってきた。

鳥谷口古墳、訪問。
大津皇子の屍を葛城の二上山に移し葬る時に大来皇女の哀傷しびて作らす歌、、、。

訪問時の新たな感動的な出会いは、また別の機会にお話しさせていただくことにしよう。

當麻寺駅で下車すると、傘をさすかささないかぐらいの雨が落ちてきた。

いよいよ鳥谷口古墳である。

すると、いきなり雨が。びしゃびしゃに濡れるほどの雨。

もしや、大津皇子の涙!?



横口式石槨を前にして、思わず一人叫んだ、「ああ、大津」。伝うは涙だけ。
万葉歌「現世の人なる我」を独唱し、大津皇子に捧げる。


現世の人なる我や 明日よりは 二上山を 弟世と我が見む(万葉集巻2−165/大伯皇女)
うつそみのひとなるわれや あすよりは ふたがみやまを いろせとあがみむ
風香意訳:
うつそみに生きる私は 明日からは二上山を弟そのものとして見続けていこう、私が生き続ける限り。。。

磯の上に 生ふる馬酔木を 手折らめど 見すべき君が ありといはなくに(万葉集巻2−166/大伯皇女)
いそのうえに おふるあしびを たをらめど みすべききみが ありといはなくに
風香意訳;
水辺に生えている馬酔木を手にとって見せようと思っても、見せるべき弟、大津が生きているとは誰も言ってくれないわ。 


土砂降りの雨は、鳥谷口古墳を離れ目の前の大池までくると小ぶりの雨に変わった。



万葉集は声に出して歌うことで目に見えないもの、目に見えない心がつくという。



『葛城の二上山』の鳥谷口古墳であった。

二羽のシナガチョウが大池に。大津をよろしくと挨拶。

万葉歌は、誰もが作り手になれる。
しかし、どう読み解いてどう歌うかは作り手、歌い手次第である。

過日の講演会で奈良大学 教授 上野誠先生が奇しくもそれを指摘して下さった。

今後もバランスのとれた無理のない意訳であり続けたいと思うし、何より作者を汚さない万葉歌であり続け、更に声に出して何度も歌い続けることでいにしえ人と心通わせていきたいと願う。
そして本物であることを見抜くのは、聞いてくださる皆さんであり、さらに高いところから学者の先生方やいにしえ人たちが鋭い視線で見張ってくれていることを忘れずに精進していきたいと思っています。

頑張ります!





























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2 コメント

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風香さんへ (Lucky Bird)
2016-09-24 02:54:38
こんばんは^^

現在、夜勤真っただ中でーす。
って、さぼってるわけではございませんよ
休憩中にお邪魔させてもらってま~す。

ガチョウの居るこの地。。。はっ^^私もよく行く探鳥地
沢山の野鳥の宝庫なんですよ
特に、冬場なんですけどね

ちなみに、このガチョウも撮りましたよー
にほひ (風香)
2016-09-24 11:52:24
Lucky Birdさま
お疲れさまで〜す♪

やはり、、、!野鳥の匂ひがしました(笑)
水面ギリギリで飛んでいく鳥がいましたが、一眼レフがな〜い!!!!!
カワセミかと思いましたが、さすがに肉眼でも色が違うのがわかり、もしやあれがヤマセミ!?かとも、、、。(見た事ないので想像ですが大きさはカワセミサイズ、、、)
次回は万葉一人旅兼葛城バードウオッチングといきたいものです!

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