カオスの世紀

カオスとは「混沌」、そしてこの21世紀に生きる自分の混沌とした日常を気ままに書き綴っていきます。

4分間のピアニスト(ネタバレ注意)

2008-01-19 | 映画(洋画)
ラストのたった4分間の壮絶なピアノの演奏。それはクラシックもロックもジャズもあらゆるジャンルを超えて人間の本能に訴えかける音楽。心の震えが止まらない・・・そして、衝撃的なラスト。久しぶりに恐ろしいほどに心の奥にドスンと響く映画を見てしまった。

ドイツ映画である。
主人公は刑務所でピアノ教師として赴任した老いたピアニスト、トラウデ・クリューガー(モニカ・ブライブトロイ)と、彼女に才能を見いだされるも、荒れた刑務所生活を過ごす女囚のジェニー・フォン・レーベン(ハンナー・ヘルツシュプリング)。最初のレッスンでピアノも弾かずに暴れ出すジェニーに愛想を尽かし、彼女を無視して部屋を出るクリューガー。しかし、部屋の中から強烈なピアノの演奏が流れていく。超絶的なそのピアノの才能に驚くクリューガー。
そして、お互いに人間的に無関心ながらも、音楽の魅力に取り憑かれてピアノのレッスンを行う。看守の嫌がらせで後ろ手で手錠を掛けられたまま、ジェニーは見事にピアノを奏でる。これがきっかけでジェニーはピアノのコンテストに出場する。相変わらず粗暴な態度を続けながらも、クリューガーの指導もあり、コンテストでは群を抜く演奏で勝ち上がっていく。
クリューガーの自分の才能を信じる揺るがない態度に、ジェニーは少しずつ心を開き、彼女は自分が今の境遇に落ちた哀しい過去を話す。一方で、クリューガーにも最初に愛した人との悲劇的な別れがあった。
いよいよ、コンクールの決勝に行われるという時になって、ジェニーは彼女に嫉妬する看守や同僚たちの罠にはまり暴力沙汰を起こす。刑務所の所長は彼女のコンクールへの出場の停止と、彼女をかばったクリューガーを解雇してしまう。
しかし、ジェニーの才能を開花させるべく、クリューガーは彼女を脱獄させて、ドイツ・オペラ座での決勝に向かう。
脱獄に気づいた警官が押し寄せる中で、ついにジェニーの衝撃的な4分間の演奏が始まる。

クリューガーの凛とした演奏。モーツアルトやシューベルトなどのピアノ曲を優雅に奏でる。しかし、その演奏には彼女の哀しい過去を反映するような陰が差し込む。
一方のジェニーは自らの才能の行き場を求めるように、激しい音楽をピアノに叩きつける。クリューガーが幾ら「低俗な音楽は許さない」と言っても、ジェニーはクラシック音楽の範疇を超えてロックやジャズといったあらゆる音楽の要素をぶつけて自らの音楽を叩きつける。
彼女が最初にピアノを弾いた演奏に鳥肌が立った。叩きつけるような音楽、クラシック的な要素も抱えながらも、それはほとばしるロックのリズムであり、心の奥底までドスンと響く音楽なのだ。
手錠を掛けられたまま弾く、自由奔放な曲も思わず体を乗り出してしまった。
しかし、これをクリューガーは諫めて、絶対にクラシック音楽の範疇からはみ出す事を禁じ続ける。
クリューガーはずっと独身だ。それは彼女が若い頃にたった一人愛した人を自ら裏切って死なせた事への罪滅ぼしのように禁欲的で、自らを抑え込み、その才能を深い谷底に押し込める事でその悲しみに耐え続けてきたのだ。
しかし、ジェニーの自由奔放な演奏とその行動に彼女は惹かれていきながらも、二人はぶつかっていく。

そして訪れるラストシーン。ドイツ・オペラ座の舞台にジェニーは立つ。周りには警官が取り囲む。ジェニーを捕らえようとする彼らにクリューガーは後少しだけ待つように懇願する。その猶予は4分間

ピアノの前に座り、ジェニーはシューマンのピアノ協奏曲の冒頭を弾き始める。その見事なテクニック。
しかし、次の瞬間!彼女はイスを蹴り上げてピアノの弦を激しく鳴らす。そして遂に彼女はその才能を爆発させるのだ。
ピアノという楽器の全てに音楽をぶつける。ピアノの台をまるでドラムのように叩き、弦を激しく鳴らす。足を踏みならし、体は舞踏家のように激しく動き、体中で音楽を奏でる。
その激しい音楽は一瞬耳障りにも聞こえるが、人間の本能を呼び起こすような魂の震えとなって聴く者を襲う。

そして「4分間」の心揺さぶる演奏が終わったとき。観衆は静まりかえる。その中でまるで解き放たれたようにジェニーとクリューガーは見つめ合う。次の瞬間、観衆はスタンディングオベーションでジェニーを讃える。
ジェニーは観衆に向けて挑戦的で自信に満ちた満面の笑顔で挨拶をする。そして、その腕を駆け付けた警官が掴み手錠を掛けようとして映画は終わる。

見事なラストシーンだ。緊張感みなぎる中で心震える演奏。
あらゆる人間のエゴを呑み込んで、音楽は怪物のように人の前に現れその心を奪ってしまう。
ジェニーもクリューガーも抑圧された思いを解き放つときに本当の自由を得る。それは手錠を持ってしても奪うことの出来ない崇高な音楽なのだ。

余談ですが、ラストの衝撃的な4分間の演奏と主人公のピアノ指導をされたのはドイツで活躍する日本人ピアニストの白木加絵さんです。これは素晴らしい!

映画「4分間のピアニスト」オリジナル・サウンドトラック
サントラ,ヤン・ティルマン・シャーデ,アネッテ・フォックス,インモ・ツィルヒャー,エンリケ・ウガルテ,ブラヒム・ヒニーネ,白木加絵,レ・フレール,カトリン・シェール,ペーター・クリスチャン・ファイゲル
ユニバーサル ミュージック クラシック

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2 コメント

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観ます!! (blue☆)
2008-01-19 22:03:48
決めました!
絶対観ますっ!
公式HPで調べてみたら、こちらでは1/26(土)公開のようです。
もう、待ちきれない~ という気分です!
takeoさんのレビュー読みながらも、ココロ震えました!
ぜひ!ぜひ! (takeo)
2008-01-20 08:07:53
今年第一弾の映画だったんですが、いきなり最高傑作に出会った感じです。
ピアノがこんなに心震える楽器だなんて新たな発見です。
主人公達のあまりに痛い過去やそれを音楽にぶつけていくところなど、ドラマの部分も本当にズシンと来ます。
そして、ラスト・・・後はぜひ観てから感想お聞かせ下さい!

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