よろず戯言

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この世界の片隅に

2017-02-10 02:45:33 | 映画

先日の休みに映画を観てきた。

アニメ映画、"この世界の片隅に"だ。

原作はこうの史代氏の同タイトルの漫画。

監督は片渕須直氏。

キャッチコピーは、"昭和20年、広島・呉。わたしは ここで 生きている。"

 

 

アニメ映画ということで、君の名は。同様、

まったくチェックしておらず、その存在すら知らなかった作品。

そして、この作品もまた鑑賞を薦められた。

過去に自分は広島に住んでいて、広島が第二の故郷だと思っている。

この作品は、その広島が舞台だという。

広島が舞台じゃいうんじゃったら、観にゃあいけんじゃろう!

 

とはいえ、いったい どんなものなのか?

鑑賞する前に劇場の作品紹介を見てみた。

戦時中の呉が舞台!

なるほど、これはやっぱり観るべき。

呉に5年住んでいたし(当時は豊田郡)、

呉にある戦艦大和を中心とした戦争資料館、

大和ミュージアムに もういっかい行きたいと思っていたところ。

そんなわけで、君の名は。を観た翌日に鑑賞した。

二日続けてアニメ映画を鑑賞しようとは。

 

 

広島市江波。

海苔製造業を営む家庭で生まれ育った少女、すず(のん)。

幼い頃からぼんやりとした子で、厳しい兄からいつも叱られていた。

物をなくしたり道に迷ったり、考え事にふけったり。

絵を描くことが大好きで、クラスメートの写生の課題を書いてあげたりもした。

 

そんなすず、家業を手伝いながら成長する。

その間、日本は真珠湾攻撃から太平洋戦争へと突入し、すずの兄も徴兵される。

長引く戦争で国民の生活は厳しくなる。

食糧をはじめ、物資の不足。

平穏だった生活が、だんだんと厳しく鬱屈したものへと変わりゆく。

 

昭和19年。

18歳になったすずに、突如縁談の話がやってくる。

断ることもできず、為すがまま、知らない相手の元へ嫁ぐことになるすず。

こうして江波から、軍港・呉へとすずは嫁に行く。

相手は呉の海軍所属の文官、北条周作(細谷佳正)。

周作と、周作の両親と呉で暮らすことになる。

 

 

配給が不安定になり、生活はますます厳しくなる。 

少ない食材で家族の食事をまかなうため、

米の量を増やす方法を試してみたり、

食べられる雑草などの調理法を学び、それを実践したり、

着物を仕立て直して、もんぺを作ったり、

日々、工夫しながら家事をこなす。

 

周作の姉、経子(尾身美詞)が離縁して北条家へ戻ってくる。

経子はすずと正反対のテキパキとした性格。

のんびりしたすずに、家事のやり方など何かときつく当たる。

だが経子が連れてきた娘、晴美(稲葉菜月)は、すずに懐く。

晴美といっしょに呉の港を眺めて、戦艦の名前を教えてもらう。

晴美といっしょにアリの行列を追い掛ける。

晴美といっしょに魚の絵を描いて笑う。

 

 

昭和20年。

日本各地が空襲される。

東洋一の軍港だった呉も標的になる。

鳴り響く警報、敵機から放たれる機銃、投下される焼夷弾。

防空壕に身を潜める毎日。

 

大和が沈没し、沖縄が占領され、原子爆弾が投下され・・・。

絵を描くのが好きだった、のんびり屋のひとりの女性。

戦争のさなか見知らぬ土地へと嫁いでいき、

どんどんと生活が厳しくなり、大切な人を失い、

自らも過酷な運命にさらされて、生きる意味を失いかけながらも、

心優しい人々に囲まれて、過酷な日々を懸命に生活していく――。

 

強烈だった・・・。

ほのぼのとしたタッチのアニメ。

だけど、それに反して内容は すこぶるハードだった。

はだしのゲンと同じくらいハードに感じた。

戦時中の物語なのだから、そうなってしまうのは予想できるはずなんだけど、

それでも、あのタッチとあのキャラクターから、そうでないものを期待していた。

まあ、よくよく考えれば広島が、呉が舞台ってだけで、そうじゃないことは明白か。

個人的に火垂の墓よりもハードだった。

 

幼少期のすずさんが可愛いくてたまらない。

大きな海苔の缶を風呂敷に包んで、それを背負って納品おつかい。

あぶなっかしくて見てられない。

案の定、道に迷うわ、人さらいに遭う(妄想?)わ・・・。

 

 

大人になったすずさんも、かわいい。

考え込んで、指を交差するしぐさがかわいい。

のんびりおっとりしていて、あぶなっかしくて見てられない。

それでも芯は強いようで、嫁ぎ先でもなんとかこなしていく。

でも、やっぱり、表には出さないようだったけれど、だいぶ参ってたんだなあ・・・。

苦しむすずさんの姿をみて、ダンナ何やってんだよ!と、

口数少なく、愛情表現のヘタな周作にイライラした。

 

 

広島が舞台ということで、終始ふつうに聞こえてくる広島弁が懐かしい。

男の広島弁はケンカっぽい口調なんだけど、

女性の広島弁は、やんわりしていていい。

とくに、すずさんは、その性格も相まって本当に心地いい広島弁だった。

なんでも声質で、すずさんの声はこのひと以外に考えられない!と、のんが声優に抜擢された。

"のん"って・・・。

まーた声優ってヘンテコな芸名付けやがんな。

そう思って、キャストの写真を見たら・・・能年玲奈!?

芸能活動停止していたけれど、"のん"に改名して、本作で復帰した?

 

 

江波とか草津とか、広島市内の地名が懐かしい。

広島から呉へと向かう汽車。

むかいなだ,かいたいち,やの,さか,・・・くれ。

駅名がどんどん出てくるのだが、どれもこれも全部懐かしい・・・。

さすがに、くれポートピアはなかったか。

23のとき、海田市駅の近くで働いていたなあ。

呉から先だけど、広駅と仁方駅はよく利用したもんだ。

 

戦争・・・。

なんだか最近、やたら縁がある。

興味を持って、それらに触れているわけじゃないんだけど、

どういうわけか、ここ最近、意図せず戦争に関するものに触れているような気がする。

 

憲法9条の解釈が変えられたり、改正案まで騒がれて久しい。

沖縄の基地問題,領土問題,日韓合意反故の慰安婦像問題,南スーダンPKO,etc・・・。

トランプ大統領の核戦力強化拡大発言には呆れるばかり。

さらには非核三原則を掲げ、憲法9条を持つ日本に対して核武装を容認するなど、

他の一方的,言いがかりな発言もひっくるめて、本当にこいつ好かん。

あの わめいているときの、タコみたいに広げた口が好かん。

 

・・・話が逸れた。

ともかく、戦争に関して深く考えさせられる作品だった。

玉音放送のシーンでは涙が込み上げてきた。

その直後に高々と掲げられる太極旗。

原爆投下で片腕を失い、ガラスの破片が無数に突き刺さり、

焼けただれた肌で、幼子の手を引き、そのまま息絶える母親。

その亡骸にしがみつき、たかるハエを必死に追い払う幼い子。

そんな描写が、あのタッチで描かれていて、よけいにショッキングだった。

はだしのゲンなんかよりも強烈に映ってしまった。

 

 

産業奨励館、原爆ドームの在りし日の姿も映し出される。

原爆ドームも、広島に居た頃、自分はふだんの光景として見ていた。

中学のとき、修学旅行で初めて見たときは衝撃を受けたものだった。

平和祈念公園内にある原爆資料館で、原爆犠牲者の写真や遺品を見て、

その直後の昼食のカレーが喉を通らなかったを覚えている。

 

無数の原爆犠牲者が舟に乗せられて運び込まれた似島(にのしま)。

今から10数年前、広島市南区にあるこの島で、複数の遺骨が発見された。

当時、葬儀社に勤めていた自分。

市の要請で、霊柩車で似島まで向かい、それを引き取り火葬場まで運び、

その後、それを平和祈念公園へと運んだ。

平和祈念公園の地下に、無数の遺骨が保管されている空間がある。

ふだんは立ち入ることができない場所だ。

薄暗くカビ臭いここに、埃をかぶった大量の骨壷がびっしりと詰められていた。

そこへ、新たに発見された遺骨も納骨された。

貴重な体験をして、戦争に対する思いが変化したことを覚えている。

 

 

自分は原爆三世でもある。

母方の祖父が長崎で被爆した。

当時小学生で原爆が投下されたとき授業中だったという。

長崎の平和公園にも何度か行った。

初めて行ったのは、小学校一年の夏休み。

右手を天に左手を水平にした平和祈念像に圧倒された。

家に帰って、目に焼きついたそれを必死に画用紙に描いたのを覚えている。

 

 

この作品を、「戦争がメインテーマではない」「反戦映画ではない」

いろいろと論争されているようだけど、原作者や映画製作者の意図がどうであれ、

これは紛うことなき戦争を画いた作品であり、

反戦のメッセージがなくとも、戦争を肯定することはない。

制作者の意図や真意、かくされたメッセージなど詮索しても仕方がない。

観た者それぞれが、自分なりに受け取って解釈すればいい。

 

 

日本人だったら観ておくべき作品。

火垂の墓よりは見やすいはず。

絵もほのぼのタッチで、なによりも主人公のすずさんがかわいい。

子どもにもぜひ観せたい作品なんだけど、

新婚初夜の問答とかあり、それを子どもに訊かれたら うまく答えられないし、

やたらイチャイチャするんで、ちょっと抵抗あるかな。

それに、やっぱり小学生にはハードかもしれん。

 

この作品を観て、近く呉へ行こうと思った。

大和ミュージアムにまた行くぞ。

海軍カレーと肉じゃが食べるぞ。

あと、広まで足を伸ばして、商店街にあったラーメン店の、ぶち旨いチャーハンを食べたあ!

昔、よう食べよったのう、あのチャーハン。

角切りの分厚いチャーシューがごろごろ入ってて旨かった。

ラーメン店じゃったのに、ラーメンの印象が残ってなあ。

まだあるかいのう?

 

 



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