ポルトガルのえんとつブログ

画家の夫と1990年からポルトガルに住み続け、見たり聞いたり感じたことや旅などのエッセイです。

ポルトガルのうなぎ

2016-09-30 | 風物

 

セトゥーバルのメルカドではウナギ専門店が2軒あり、箱の中にはウナギがひしめいている。それは胴回り2センチほど、長さ20センチほどの小さいウナギだ。元気が良すぎて箱の中から脱走するのもいる。でもウナギ屋の姉さんは目ざとく見つけて、さっと捕まえたのを輪ゴムのように曲げて、切腹させる。あっという間の早業だ。隣の箱には太いウナギが数尾動いている。これは日本のうなぎよりかなり太い。胴回り6センチほどある。

小さなウナギはまるごと空揚げにして、ワインのつまみに美味しい。でも意外と骨が硬いので、ばりばりと骨ごと食べるわけにはいかない。

 

昔、北の町ヴィゼウに泊まったときのこと。小さなバルに入って、ビーニョを飲むことにした。ショーケースの中に小魚の空揚げが目についた。それは10センチほどの大きさで、数匹をクシに刺してあった。何の魚かと尋ねると、エンギーア(ウナギ)だという。これがポルトガルのウナギ料理との初めての出会いだった。さっそくからりと揚がったウナギを食べ始めたのだが、二匹目を食べ始めたとたんに、「ガガー、ガガー」と耳をつんざく大音響と地響きがした。最初は雷でも落ちたのか!と思ったが、そうではなかった。壁が揺れている。壁の向うで工事が始まったのだ。もう夜なのに、工事の続きをやり始めたのだ。電気ドリルの音と地響きはなかなか鳴り止まず、私たちはウナギの空揚げで一杯、どころではなくなった。それは旅の強烈な思い出となった。

 

アヴェイロは湿地帯の広がる町だ。そこには塩田が広がり、塩を運ぶ専用の小船で有名だ。カラフルな絵が描かれた小船が水路に繋がれた様子は、ヴェニスのゴンドラを思わせる。水路の脇にはメルカドがあり、その周りには水路を見下ろすように、数軒のレストランがある。その中の一軒に入り、ウナギの空揚げを注文したら、付け合せに豆入りの御飯が鍋にドンと出てきた。日本から来た友人が豆御飯に感激して、鍋に頭を突っ込むように食べていた。彼にとってはウナギの空揚げよりも豆御飯らしかった。

 

ある日、ポルトガル人の友人が、ウナギを食べに行こうという。

セトゥーバルの対岸、トロイア半島にあるカランケージョという村にウナギの美味しい店があるらしい。

フェリーに乗って、トロイアに着き、クルマで走る。着いたところは閑散とした村で、道を歩いている人影も見当たらない。

そこが店かどうかもわからないほど人の出入りのない扉を開けて、中に入ると、古びたTVが大統領の演説を流し、その下のテーブル席には6人ほどの客が食事をしていた。

私たち4人もテーブルに着き、ウナギ鍋を注文した。先に運ばれてきたサラダやチーズなどを食べているうちに、寸胴鍋がどんと目の前に置かれた。鍋のなかには米の形をしたマカロニといっしょに炊いたウナギのぶつ切りが湯気を立てている。ウナギは胴回り4センチほどで、ぷりぷりとした感触。なかなか美味しい。でもときどきふっと泥のにおいがして、たくさんは食べられなかった。いっしょに食べていたパオラも、ウナギは苦手と言いながら、残った鍋をかき混ぜる。鍋の底にはウナギの頭がぷかぷかと浮き上がって、かなりシュールな風景だった。

それ以来ウナギに興味を失った。

 

ウナギはやっぱり日本式の蒲焼きに限ると思って、日本に帰国した時の楽しみにしていた。

ところがこのごろ、ウナギの蒲焼きが店頭から姿を消したり、値段がかなり高騰して、手が出なくなった。困ったもんだ!

でもセトゥーバルのメルカドにはぴんぴん生きた元気の良いウナギが売っている。作ったことは一度もないが、このウナギで蒲焼きを作ってみよう。

このごろはネットで検索すれば、なんでも出てくる。「蒲焼きの作り方」もいくつも出てきた。しかもプロの職人が手順を見せてくれる。便利な世の中だ。

メルカドのウナギ専門店のおばさんは、手馴れた手つきで太いウナギをつかみ、あっという間に腹を割き、ポルトガルの鍋用に5センチぐらいのぶつ切りにしようとした。あわてて声をかけて、「20センチほどに切ってちょうだい」と言うと、「何で~」と、合点がいかない顔つき。

帰宅してぶつ切りの切り身を三枚におろす作業。でもウナギの皮は硬く、身も締まっている。なかなか手ごわい。日本から持ってきた出刃包丁でビトシが奮闘している間に、私はウナギのタレを作った。これもネットに出ている。

白焼きにしたウナギに何度もタレをつけて、思ったよりも簡単にウナギの蒲焼きが出来上がった。美味しかったが、ちょっと弾力がありすぎ。次に挑戦するときは、焼く前に蒸したらふわっとするかもしれない。鰻の蒲焼きに挑戦

 

モイタの露店市に出かけた。いつもの食堂が出ていない。しかもその店だけではなく、並んで営業していた3軒とも姿を消している。川向こうの食堂の並びに引っ越したのだろうと思って行ってみると、そこにも見当たらず、しかもそこにあった食堂もたった2軒しか営業していない。だから店は満席。これでは少々待っても、いつになるやら分らないから、やめた。

さて昼ごはんはどこに行こうか?ふと思い出した。先日、クルマで走っていると、道沿いに大きな看板がかかったレストランがあった。「カーザ・ダス・エンギーヤ」、ウナギの家である。すぐ近くだし、行ってみよう。

 

 

カーザ・ダス・エンギーヤ

 

店の前には道路を隔てて、屋根のある大きな駐車場がある。そこはもう満車だ。店の横の陽のあたる空き地に車を停めて入り口に向うと、人々が続々と詰め掛けてくる。ドアを開けると、人でごった返している。その中の一人が、戸惑っている私たちに、「奥に順番をとる紙があるからそこに名前を書いたらいいよ」と教えてくれた。でも中に入ろうにも人がぎっしりで動けない。残念ながらここも諦めるしかない。日曜日はカトリックでは「安息日」。毎日家事で忙しい主婦も安息日なので、家族揃ってレストランに出かける。だからどこの店も昼過ぎになると満席になる。のんびりと1時ごろに行くと、そうとう待たされることになるのだ。

 

先日は日曜日に行ったので、今度は平日の水曜日に出かけた。やはり平日は比較的空いている。待つことなくすんなりと店内に入って、注文をした。客席は奥行きがかなりあり、そうとうたくさんの人数が入るはずなのに、先日はそれでも入り口で待っている人々で溢れかえっていた。

 

 

ウナギの白焼き

 

 

 

ウナギの空上げ

 

 

空上げについてきたハーヴ入りトマト味ライス

 

この店はウナギの白焼きが人気があるらしい。ウナギに塩をして炭火焼きしてある。日本ではウナギといえば甘いたれのかかった蒲焼きが美味しいが、塩だけの炭火焼もあっさりしてなかなか美味しい。しかも身が柔らかいし、泥臭さはぜんぜんない。周りの人たちもほとんどウナギを食べている。

 

 

闘牛のポスターが貼られている。

 

モイタは闘牛が盛んで、8月の夏祭りには町中に木の柵を巡らし、牛を放って若い男たちが対決する。町をあげて熱狂的な闘牛好きなのだ。この店の壁には闘牛のポスターがべったりと貼られ、次々に入ってくる常連さんたちは見るからに闘牛の熱狂的ファンらしいが、ここではステーキではなく、ウナギの白焼きをおいしそうに食べているのだ。

©2016 MUZ

 

 

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