ジハード(4)(5)(6)/定金伸治

ジハード〈4〉神なき瞳に宿る焔 (集英社文庫)
定金 伸治
集英社

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ジハード〈5〉集結の聖都 (集英社文庫)
定金 伸治
集英社

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ジハード〈6〉主よ一握りの憐れみを
定金 伸治
集英社

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キリスト教徒でありながら十字軍のありかたに疑問を感じ、イスラムの王サラディンの元に下った青年アル=アーディル・ヴァレリー。清廉苛烈な少女剣士・王妹エルシード、キプロス島時代からの友人でよき理解者の騎士ラスカリス、天性の諜報者・神速のルイセといった友を得、圧倒的な戦力で迫る"獅子心王"リチャードや彼に将才を認められた若き天才ウィルフレッドとの戦いに挑むが…。

「ジハード」後半3冊分。さすがにこれだけ一気にいくと読み応えがあります。面白かった。3巻まではいろいろとありつつもわりと軽さが勝っていたように思いますが、重要人物との別れが相次ぐ4巻からがらりと雰囲気がかわり、そしてかつての敵を味方につけてのリチャードとの最終決戦が描かれる5巻で最高潮の盛り上がりを見せ、6巻は余韻と言うか1冊まるごと戦後処理の風情で、しんみりとした空気を漂わせて終わる。3巻までの時点では予想もつかないところに着地しましたが、最後までヴァレリーは彼のままであったし、他の登場人物もみな自分の生を生きる強さを持つものばかりでした。

その分アクの強い人が多くてあまり好きなキャラというのはいなかったんですが…というか、好きなキャラはことごとく退場してしまったのが残念ではありました。ラスカリス、ルイセ、そしてイーサー。みな普通の人間らしさがあって共感できたのになあ。最後まで残ったのはちょっと頭のネジが外れたヤツばかりで、特にエルシードなんて迷惑極まりない人間ですからね。殺伐とした世界のオアシスだったシェラザードも最後はすっかりと人間が歪んでしまったし。そういう意味では、ストーリーが暗い方向に進んでいっても淡々と読めたので良かったかもしれないですが。だからこそ、超人から普通の人間になって生き、そして死んだアレオノールがことのほか魅力的にも映りました。

ところで、全編にわたって個人的に一番好きなのはアル=アブダル殿下です。実は有能なのに、偉大すぎる父親への反発からわざと暗愚を装っているという青年。彼がヴァレリーのために暗愚の仮面を脱ぎ捨てて奮戦するとことは最高に燃えましたし、6巻で波紋を振りまいた行動も彼らしさ満載でニヤニヤしてしまいました。と思ったら、解説の乙一さんも同じことを書いていたので思わずニヤリ。しかし、乙一さんの連載解説は実際のところ駄作でしたね。あとがきの名手乙一さんも、他人の本の解説は畑違いだったか、あるいはさすがに長すぎたか。

とにかく、ライトノベルから一般向けに改稿したというこの感じがちょうど良く、読みやすく、全くストレスを感じずに最後まで読み通すことができました。近年ますます貴重になりつつある乙一さんの文章も読めたし、とても価値のある読書をさせていただきました。
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