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猫は勘定にいれません
黒竜潭異聞/田中芳樹
黒竜潭異聞 (祥伝社文庫)
田中 芳樹

田中芳樹さん得意の中国もの短編集。
中国史に名を残す、しかし日本では知られていない英雄、奸雄の知られざる物語にスポットを当てて小説に仕立てた、中国史発掘シリーズという感じです。30ページ前後の短い作品が全11本。時代も場所も全く異なるストーリーであり、時系列に並べれば一番古いものと新しいものでは1000年以上の差があるのですが、不思議と統一感があります。逆に言うとそれだけ中国史では乱世が長きにわたって続いていたということなんでしょうか。ま、日本も似たようなものか。
トップを飾る「苑城の少女」は、弱冠13歳の少女が、包囲された城から援軍を求める使者となって、寡兵を率いて敵陣の中を突っ走るという話。いかにも美少女好きの田中さんのツボに入りそうなネタであって、筆も走りまくってます。彼女のその後はわからない、というのがまた良いですね。下手に何年に死にました、なんて書いてあるよりずっといい。
史実の出来事と怪異な伝説が入り乱れているのも古い歴史書の面白さです。「黒道兇日の女」と「騎豹女侠」は、それぞれ非道な行いをしている権力者と対立する男のところに、仙人の元で修行したという豹使いの女性が現れて、権力者を討つ手伝いをしてくれるという話。中国ぐらい広かったら、こういう人の一人や二人はいてもおかしくないような気もします。
「寒泉亭の殺人」は学生時代に田中さんが書いたというミステリ仕立ての短編。水の密室という道具立てがなかなか。田中さんも、泡坂妻夫や連城三紀彦を生んだ幻影城出身ですからね。ミステリにも親和性はあるはず。この作品は大した出来でもないですが、またこういうのも書いて欲しいです。
表題作「黒竜潭異聞」は、皇帝の座にあと一歩まで近づいた宦官の物語。これも怪しい仙人みたいのが出てきたりもするのですが、宦官という存在は仙人以上に、現代に生きる我々からすると理解の外にある存在のような気がします。富と引き換えに男を捨てられるもんでしょうか…。というか、男を捨てていたらお金の使い道に困っちゃうんじゃないかと思うんですが、僕の発想が下衆すぎるのかな。
そのほかバラエティに富んだ全11篇。そりゃもちろん面白いですよ。特筆すべきことはなにもないですが、当たり前に楽しめました。現状では田中作品は残念ながらかなり希少価値があるので、単発物を集めた短編集という形でも本が出るのはありがたいですね。それこそ、本心では「アルスラーンを早よかけ」と言いたいですが。
田中 芳樹

田中芳樹さん得意の中国もの短編集。
中国史に名を残す、しかし日本では知られていない英雄、奸雄の知られざる物語にスポットを当てて小説に仕立てた、中国史発掘シリーズという感じです。30ページ前後の短い作品が全11本。時代も場所も全く異なるストーリーであり、時系列に並べれば一番古いものと新しいものでは1000年以上の差があるのですが、不思議と統一感があります。逆に言うとそれだけ中国史では乱世が長きにわたって続いていたということなんでしょうか。ま、日本も似たようなものか。
トップを飾る「苑城の少女」は、弱冠13歳の少女が、包囲された城から援軍を求める使者となって、寡兵を率いて敵陣の中を突っ走るという話。いかにも美少女好きの田中さんのツボに入りそうなネタであって、筆も走りまくってます。彼女のその後はわからない、というのがまた良いですね。下手に何年に死にました、なんて書いてあるよりずっといい。
史実の出来事と怪異な伝説が入り乱れているのも古い歴史書の面白さです。「黒道兇日の女」と「騎豹女侠」は、それぞれ非道な行いをしている権力者と対立する男のところに、仙人の元で修行したという豹使いの女性が現れて、権力者を討つ手伝いをしてくれるという話。中国ぐらい広かったら、こういう人の一人や二人はいてもおかしくないような気もします。
「寒泉亭の殺人」は学生時代に田中さんが書いたというミステリ仕立ての短編。水の密室という道具立てがなかなか。田中さんも、泡坂妻夫や連城三紀彦を生んだ幻影城出身ですからね。ミステリにも親和性はあるはず。この作品は大した出来でもないですが、またこういうのも書いて欲しいです。
表題作「黒竜潭異聞」は、皇帝の座にあと一歩まで近づいた宦官の物語。これも怪しい仙人みたいのが出てきたりもするのですが、宦官という存在は仙人以上に、現代に生きる我々からすると理解の外にある存在のような気がします。富と引き換えに男を捨てられるもんでしょうか…。というか、男を捨てていたらお金の使い道に困っちゃうんじゃないかと思うんですが、僕の発想が下衆すぎるのかな。
そのほかバラエティに富んだ全11篇。そりゃもちろん面白いですよ。特筆すべきことはなにもないですが、当たり前に楽しめました。現状では田中作品は残念ながらかなり希少価値があるので、単発物を集めた短編集という形でも本が出るのはありがたいですね。それこそ、本心では「アルスラーンを早よかけ」と言いたいですが。
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