マガジン「15の夜」のイントロマンガを斬っておく

今週号の週刊少年マガジンに「15の夜」というマンガが載っていました。「問題提起コミック第1弾!」と称し(もうこの時点でゲーッという感じだ)、社会問題を取り上げるシリーズらしいです。第1シリーズのテーマはネグレクト。

その冒頭に、イントロダクションとして6ページのショートコミックがあります。マガジン編集部の面々がかつてのMMRを思わせるノリで、少年をめぐる犯罪の現状を憂えるという内容です。その内容が(ある意味予想通りではあるが)かなりいただけないものだったので、触れておこうと思います。

・アンケート
まず、マガジン編集部の面々が、44号で調査した未成年犯罪に関する読者アンケートの結果を見て驚愕する場面から始まります。アンケートの内容は以下のようなものです。

未成年の方にお聞きします。「未成年の犯罪が増加している、凶悪化している」と報道されていますが、あなたもそう感じていますか?
1.実感がある…60.7%
2.実感がない…20.2%
3.どちらともいえない…18.8%
4.無回答…0.3%

これを受けて、新米編集者リュウスケ氏が、「読者の周りでも未成年者の犯罪が増えているんですね…」とおののきます。

しかし、まずこの質問自体にあやふやさがあります。「実感」という言葉は、即身の回りで犯罪が起きていることを意味するものではありません。テレビや新聞で少年犯罪報道を見ることも「実感」の内に入るでしょう。また、「もう30年未成年やってます」とか「未成年は3回目です」などという人でもなければ、未成年者をやれるのは一生に一度、限られた期間だけなわけで、「以前と比べて増えてるかどうか」などわかるはずもないと思うのですがどうでしょうか。加えて、問題文にある「報道されていますが」という文言が、回答者が「はい」を答えるように誘導しているともいえます。「新聞に載っているようなことを実感していないのは恥ずかしいこと」と捉えられる可能性があるからです。

・読者のハガキ

続いて、編集タキガワ氏が読者からのはがきを読んで「思ってた以上だ…」と汗をにじませます。

薬、家出、障害、盗難は周りで普通にあります。 高校生男子
友達が監禁された。 高校生男子
友人は学校のトイレで新名を吸っている。 中学生男子

極端なものもありますが、いつの時代にもありそうなものが多いと思うのは僕だけでしょうか。もちろんどれも許されない犯罪ですが、それをもって未成年の犯罪が増えているとはいえないのは自明でしょう。

・先進国の犯罪発生率
続いて編集チバ氏がノートPCを操作しながら、「日本は先進国の中でも犯罪発生率が一番増えているんですよ」と発言します。

この発言はけしてウソではないですが微妙です。平成15年版の犯罪白書から、第4章「諸外国の犯罪動向との対比」という項目を見てみましょう。

第1節 主要な犯罪(平成15年版犯罪白書)

上記ページの表から②発生率(人口10万人あたりの認知件数)の項を1997年と2001年で比較すると、

日本 1,506→2,149(+43%)
米国 4,927→4,161(-16%)
英国 8,676→10,608(+22%)
ドイツ 8,031→7,736(-4%)
フランス 5,972→6,880(+15%)

となっており、確かに、「日本は先進国の中でも犯罪発生率が一番増えている」といえます。が、いまだこれらの国の中で最も犯罪発生率が少ない国であることも確かです。編集チバ氏の発言は(意図的に?)「日本は最も犯罪が多い国」とミスリードするものになっています。
なお、別項を見ると、日本の場合窃盗の犯罪発生率が1997年から2001年に519ポイント増加していることがわかります。

第3節 窃盗(平成15年版犯罪白書)

つまり、犯罪発生率を押し上げているのはほとんどが窃盗だということになります。さらに、窃盗は非常に「余罪」が多い犯罪であり、一人の窃盗犯を捕まえれば、過去の余罪がかなりの確率で出てきます。しかし、現代の警察は非常に多忙であり、その全ての余罪を立件することができません。従って、実際には犯罪者を捕らえているものの、検挙率は下がる、認知件数は上がるという状況が発生していることを付け加えておきます。

・近年の少年犯罪発生件数
同じコマの中で、編集チバ氏は「―そして少年による凶悪犯罪も近年増加傾向にありますね」とのたまい、一枚のグラフ「少年による凶悪犯の検挙人数」を示します。問題は、このグラフが平成4年~13年のグラフだということです。もはや常識だと思いますが、昭和60年代から平成のはじめは、戦後最も少年凶悪犯罪の少ない時代でした。その頃と比べることで現代の少年凶悪犯罪を相対的に多く見せているのです。まだこんなことやってるのかよとしか言えません。

(クリックで拡大)

このグラフの右下の赤い部分だけを切り取っているわけです。何で平成13年までという中途半端なところで止めてあるのか判りませんが、平成16年度に少年凶悪犯罪が減ったのが気に入らなかったのでしょうか。

・ナワヤの疑問
ここで、MMRのレギュラーでもあった編集ナワヤ氏が「でもさあ」「なんで未成年がかかわる犯罪・事件が増えてるんだ?」という疑問を投げかけます。まあ少なくとも、おそらく40代くらいであろうナワヤ氏、あなたの少年時代の方が少年犯罪が多かったのは確実なのでご安心ください。

わずか2ページ分の内容に対して突っ込みまくってしまいました。マガジンの啓蒙主義は鼻につくときも多いですが、それ自体はまあいいとしましょう。しかし、詐術や統計のトリックで少年たちにいい加減な情報を刷り込むのはやめていただきたいと、切に願うものであります。

追記(11/13):グラフの作成には、少年犯罪データベースさんの少年犯罪統計データ よりデータをお借りしました。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
御参考までに (もとまさや)
2005-11-11 15:50:07
はじめまして。

一見ですが、ここのページを思いつきましたので御参考までに。

http://kangaeru.s59.xrea.com/

http://kangaeru.s59.xrea.com/G-Satujin.htm

http://kangaeru.s59.xrea.com/G-Rape.htm

物語は上手な嘘をつく、というのが基本だと思います。
 
 
 
コメントありがとうございます (たけ)
2005-11-13 23:21:25
もとまさやさん、返事が遅くなってすいません。



そちらのサイトは僕も参考にしています。というかぶっちゃけ今回のグラフを作るのにデータをお借りしてました…わーすいません、参考にした旨、追記しておきますね。
 
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