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猫は勘定にいれません
不全世界の創造手/小川一水
不全世界の創造手(アーキテクト) (朝日ノベルズ)
小川一水 こいでたく

最近やたら作品を見かける小川一水さんの新作です。こいでたくさんのイラストとか、懐かしすぎる…。タイトルからはなんと無しにスーパーナチュラルなパワーが飛び交う異世界ものかと連想してしまいそうですが、実際は真逆。小川さんの本領である、「第六大陸」「復活の地」などに通じる骨太のハードSF作品と言って良いでしょう!
小さいながらも独自の技術で価値の高い製品を作る「戸田特鋼」社長の息子・祐機は、父やその従業員たちの姿を見て育ち、モノを造ることに対する尊敬の念を抱くようになった。しかし、その会社は、高収益に目をつけた巨大資本に買収されてしまう。モノを造るのは、結局金を生むためでしかないのか? 幼心に抱えた悔しさと疑問は、彼を天才エンジニアに成長させる。高校生になった祐機は、自ら開発した自己増殖機械に資金を出してくれるスポンサーを募集することにした。それが、彼と、投資の天才少女・ジスレーヌとの出会いだった…。
祐機が開発した自己増殖機械とは何か。それは、最低限のコアとなる部品さえ与えてやれば、太陽発電でエネルギーをまかない、そこいらにある泥や何かを原料にして、勝手に自分と同じ機械をコピーして行くというロボットのこと。とりあえず本体1台と必要な分のコアだけ持ち込めれば、倍々ゲームで1ヵ月後には何十万、何百万という数に膨れ上がるというシロモノです。この機械の得意分野は治水や農業などの生産インフラ構築にあり、つまり、従来であれば膨大な資金と労働力を必要とした作業を、数十分の一程度の資金と、数人のオペレーターでまかなってしまえるのです。
さて、ここからがこの物語のキモになります。これまで資金が足りなかったり労働力が確保できず頓挫していたことも可能にする、夢の新技術でみんなハッピー、というわけにはいきません。祐機は、インフラ整備のために各地の途上国、紛争国を転々としますが、そこで出会うのは感謝や賞賛だけではありません。仕事を機械に奪われたと憤る民衆。既得権益を失うことを恐れる企業。悪意や憎悪、時には暴力をぶつけられ、祐機は悩みます。モノを造るっていうことは、人を幸福に出来るはずじゃなかったのだろうか? 自分は何のためにモノを造っているのだろうか?
もちろん、こんなテーマには明確な答えが出せるはずもありません。が、小川さんは、祐機を通して、一つの答えと、彼が目指す未来の姿を見せてくれています。それは、今日よりもちょっとだけマシな明日。そのために、創造手たちはモノを造りつづける。
決して軽いテーマではなく、踏み込むのに躊躇しそうなテーマにも関わらず、堂々と取り組んでいる作品でありました。もちろん重いだけじゃなく、祐機とジスの不器用な恋模様とか、ナンパだけど実は頼りになる親友・大夜との友情とか、楽しく読めるネタも満載。ていうか、小川さんって、こんなに貫禄ありましたっけ? もう若手のホープなんかじゃない、大御所のような風格を感じました。
小川一水 こいでたく

最近やたら作品を見かける小川一水さんの新作です。こいでたくさんのイラストとか、懐かしすぎる…。タイトルからはなんと無しにスーパーナチュラルなパワーが飛び交う異世界ものかと連想してしまいそうですが、実際は真逆。小川さんの本領である、「第六大陸」「復活の地」などに通じる骨太のハードSF作品と言って良いでしょう!
小さいながらも独自の技術で価値の高い製品を作る「戸田特鋼」社長の息子・祐機は、父やその従業員たちの姿を見て育ち、モノを造ることに対する尊敬の念を抱くようになった。しかし、その会社は、高収益に目をつけた巨大資本に買収されてしまう。モノを造るのは、結局金を生むためでしかないのか? 幼心に抱えた悔しさと疑問は、彼を天才エンジニアに成長させる。高校生になった祐機は、自ら開発した自己増殖機械に資金を出してくれるスポンサーを募集することにした。それが、彼と、投資の天才少女・ジスレーヌとの出会いだった…。
祐機が開発した自己増殖機械とは何か。それは、最低限のコアとなる部品さえ与えてやれば、太陽発電でエネルギーをまかない、そこいらにある泥や何かを原料にして、勝手に自分と同じ機械をコピーして行くというロボットのこと。とりあえず本体1台と必要な分のコアだけ持ち込めれば、倍々ゲームで1ヵ月後には何十万、何百万という数に膨れ上がるというシロモノです。この機械の得意分野は治水や農業などの生産インフラ構築にあり、つまり、従来であれば膨大な資金と労働力を必要とした作業を、数十分の一程度の資金と、数人のオペレーターでまかなってしまえるのです。
さて、ここからがこの物語のキモになります。これまで資金が足りなかったり労働力が確保できず頓挫していたことも可能にする、夢の新技術でみんなハッピー、というわけにはいきません。祐機は、インフラ整備のために各地の途上国、紛争国を転々としますが、そこで出会うのは感謝や賞賛だけではありません。仕事を機械に奪われたと憤る民衆。既得権益を失うことを恐れる企業。悪意や憎悪、時には暴力をぶつけられ、祐機は悩みます。モノを造るっていうことは、人を幸福に出来るはずじゃなかったのだろうか? 自分は何のためにモノを造っているのだろうか?
もちろん、こんなテーマには明確な答えが出せるはずもありません。が、小川さんは、祐機を通して、一つの答えと、彼が目指す未来の姿を見せてくれています。それは、今日よりもちょっとだけマシな明日。そのために、創造手たちはモノを造りつづける。
決して軽いテーマではなく、踏み込むのに躊躇しそうなテーマにも関わらず、堂々と取り組んでいる作品でありました。もちろん重いだけじゃなく、祐機とジスの不器用な恋模様とか、ナンパだけど実は頼りになる親友・大夜との友情とか、楽しく読めるネタも満載。ていうか、小川さんって、こんなに貫禄ありましたっけ? もう若手のホープなんかじゃない、大御所のような風格を感じました。
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