The Book/乙一

The Book―jojo’s bizarre adventure 4th another day
乙一 荒木 飛呂彦
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「2007年、空前のJOJOブーム。マンガを知らない人でもJOJOの名を知るようになる」

数年前なら、誰がこんな話を信用したでしょうか。預言者でも超能力者でもマーケッターでもなんでも良いのですが、ある程度過去の時点で現在のJOJOブームを予測していた人がいたら、その人は本物の能力者か時間旅行者認定しても良いくらいのありえない事態が発生しています。ケンコバさん初めとするJOJO芸人さんの力で、「ゴゴゴゴゴ」などの名擬音、「だが断る」などの名セリフも全国区。知る人ぞ知る名作マンガが、いまや超有名作品に。つくづく、世の中には何が起きるかわからない。だから面白い。

そんな時期にタイムリーに出版された本作「THE BOOK」は乙一さんによるJOJOノベライズという奇跡のコラボ作品です。とは言っても、けっしてこのブームを当て込んで書かれた物ではなく、5年前から書いては捨て、書いては捨てを繰り返していた小説がようやく完成を見たというのが実情。タイミングが良かったというべきか。乙一ファンにとっては、彼の貴重な執筆作業はオリジナル新作に充てて欲しかったという本音もチラ見せしつつも、ここは好きなマンガと好きな作家の幸福な出会いを喜びたい気持ちです。

「THE BOOK」の舞台は杜王町。すなわちJOJO4部のノベライズということになります。主人公・東方仗助はもちろんのこと、虹村億泰、広瀬康一、山岸由花子、岸辺露伴といったスタンド使いたちが、街に潜む未知なる敵と戦う物語です。

読んでみて、まず乙一節は健在だな、と思えたことが嬉しかったです。敵スタンド使いの生い立ちや性格、そしてそのスタンド能力が、いかにも乙一作品の登場人物っぽいというか。思えば、「死にぞこないの青」「しあわせは子猫のかたち」「ウソカノ」広い意味では「暗いところで待ちあわせ」など、「姿が見えなかったり実体がなかったりするけど、側にいて自分を助けてくれる存在」というのは、乙一作品にたびたび描かれた題材なのでした。

一方、もちろんJOJOっぽさも十分に考慮して表現されていて、目に付くところでは仗助や億泰の独特の台詞まわしなんかにはニヤリとさせられますし、仗助にとっての髪型、億泰にとっての兄貴といった「怒りのトリガー」の設定も生かされています。康一と由花子の不思議な関係、露伴の奇妙な行動原理など、原作の世界を愛していることが伝わってくる再現ぶりです。もちろん、クライマックスのスタンドバトルは、JOJO独特のトンチの効いたトリックの応酬です。(億泰がやたらにカッコイイのが嬉しい)

ともかく、あなたが乙一ファンであるか、もしくはJOJOファンであるならば、本作を読む価値は十分にあると思います。両方のファンであれば、是が非でも読むべきでしょう。天才は天才を知る。これほどの確かな実力を持つ作家によるJOJO二次創作など、なかなかに読めるものではありませんから。
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
ジョジョのメジャーさ。 (海燕)
2007-12-06 03:36:42
>知る人ぞ知る名作マンガが、いまや超有名作品に。

 さすがに「知る人ぞ知る」はちょっと過小評価な気が。最大600万部以上を記録した雑誌に20年近く連載されていたわけで、読んだことがある人間の数はどう少なく見積もっても500万人以上、たぶん実際にはその数倍になると思います。「名前くらいなら知っている」ひとはもっと多いでしょう。たしかにテレビアニメになったりした作品に比べれば知名度は低いでしょうが、逆にいえばテレビで露出していない作品としては日本でも一、二を争うほど有名なのではないかと思ったり。たしかに印象としては「熱狂的信者カルトな傑作」って
 
 
 
補足 (海燕)
2007-12-06 03:37:36
 すいません、途中で送ってしまいました。「「熱狂的信者をもつカルトな傑作」って感じですけどね。」と続きます。
 
 
 
なるほど! (たけ)
2007-12-06 07:46:43
>海燕さん

そこの表現はちょっと迷ったんですよね~。ワンピやNARUTOとは違うタイプの人気作であることを表現しようと思ったんですが、うまく思いつかなかったんで、えいやで書いてしまいました。
>「熱狂的信者をもつカルトな傑作」
そうそう、それが言いたかったんです!(笑)
 
 
 
Unknown (SPW)
2013-01-31 21:42:35
体中に血のついた猫はどうやって家から出たと言うのか。家は密室だったんじゃあなかったのか?
と思ったがスピードワゴンはクールに去るぜ
 
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