温故知新~温新知故?

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(書評)『雑草はなぜそこに生えているのか』 稲垣栄洋〈著〉読了

2018-02-20 18:56:16 | 

朝日新聞の書評を見て、図書館の蔵書を検索して、日曜日に読了しました。
書評・最新書評 : 雑草はなぜそこに生えているのか [著]稲垣栄洋 - 佐伯一麦 (作家) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
■イメージ覆す合理的な生存戦略
 バス停の標識の際に咲いているネコノメソウ、庭の草むしりをした後でも、枯れずに復活して増えるツルマンネングサ……。雑草という草はなく、どの植物にも名前があって、それぞれの場所とやり方を選んで生を営んでいる姿に惹(ひ)かれてきた。新版が話題の『広辞苑』の編纂(へんさん)者として知られる新村出が、ドクダミを「無比な名花ともいへる」と随筆に記しているのに、大いに共感してもきた。
 そんな雑草好きを自認してきたつもりが、本書を読んで、雑草の実態を何も知らなかった、と痛感させられた。例えば、抜いても抜いても生えてきて蔓延(はびこ)る雑草は、生命力が強いとしか思えないが、本当は弱い植物なのだという。激しい生存競争が行われている自然界において、光や水や栄養分を奪い合う競争に弱い雑草は、森のように強い植物がある場所には生えずに、土の少ない道ばたや、人間に耕され草取りされる畑のような場所に生える。
 雑草を完全になくす方法は、〈雑草をとらないこと〉だというのには、虚を衝(つ)かれた。もっとも、雑草は生えなくなっても、そこは大型の植物や木々が生い茂る藪(やぶ)や鬱蒼(うっそう)とした森となってしまうのだが。
雑草に対する固定観念が至るところで覆されるなかでも、雑草がほんとうは〈踏まれたら、立ち上がらない〉というのには心底唸(うな)らされた。これまでの“雑草魂”のイメージは何だったのか、と思わされつつも、根性論よりもずっとしたたかで、合理的な雑草の生き残り戦略に、我々も現代を生き延びるヒントが見いだせるかもしれない。
 雑草の雑の字は、本来悪い意味ではなく、さまざまな草木を染色に使うと、色々な色の布が出来たことに由来している。文章に厳しかった永井龍男は、自分の書くエッセイや短文をあえて「雑文」と自称していた。若い人向けに書かれた本書から、評者は雑文としての書評を書く心構えも受け取った。
    ◇
 いながき・ひでひろ 68年生まれ。静岡大教授(雑草生態学)。著書に『身近な雑草の愉快な生きかた』など。

内容は期待通り非常に面白かった。
目次は以下の通り。
第1章 雑草とは何か?
第2章 雑草は強くない
第3章 播いても芽が出ない(雑草の発芽戦略)
第4章 雑草は変化する(雑草の変異)
第5章 雑草の花の秘密(雑草の生殖生理)
第6章 タネの旅立ち(雑草の繁殖戦略)
第7章 雑草を防除する方法
第8章 理想的な雑草?
第9章 本当の雑草魂
アマゾンの以下の方の書評と第9章を除いてほぼ同じ感想である。
まず雑草とか、野菜の艇語をしている。根性ダイコンは雑草なのかという問いをきっかけに語っている。雑の意味について言及し、アメリカの雑草学会の定義「人類の活動と幸福・繁栄に対して、これに逆らったりこれを妨害したりするすべての植物」を紹介している。また野菜の定義についても言及している。日本の農林水産省では、「食用に使われる植物の中で、1年以内に、枯死する1年生の草本性植物」だそうだ。わかったようなわからない、正しいといえば正しい。定義なんてこんなものですね、正確に定義しようとすればするほど本質とは離れていく感じ。よって、木に実らないのでメロンは野菜だそうだ。
その後雑草とはどのようなものかについて語られている。つまり、他の植物があると弱い(競争に弱い、他の植物がない環境に生える)ので育たない、環境変化に強い、生殖の確率を上げている。
また、除草剤についてもわかりやすく述べてる。除草剤は基本的には植物ホルモンの作用システム、植物の光合成システム、アミノ酸や脂肪酸の合成システムなど植物特有の生理作用に影響して、雑草を枯らすのだそうだ。よって、基本的には動物には影響を与えない。なぜなら、動物は食べて外からアミノ酸や脂肪酸など脳栄養素を得るから。植物は自分の中でアミノ酸や脂肪酸を作り出す。除草剤はその生成システムに作用するから。
また、第8章では雑草学者ベーカーの理想的な雑草の12の条件について述べている。
1.種子に休眠性を持ち、発芽に必要な環境要求が多要因で複雑である。
2.発芽が不斉一で埋土種子の寿命が長い。
3.栄養成長が早く、速やかに開花に到ることができる。
4.生育可能な限り、長期に渡って種子生産する。
5.自家和合性であるが、絶対的な自植生やアポミクティックでない。
6.他家受粉の場合、風媒かあるいは虫媒であっても昆虫を特定しない。
7.好適条件下においては種子を多産する。
8.不良環境下でもいくらかの種子を生産することができる。
9.近距離、遠距離への巧妙な種子散布機構を持つ。
10.多年生である場合、切断された栄養器官からの強勢な繁殖力と再生力を持つ。
11.多年生である場合、人間の撹乱より深い土中に休眠芽をもつ。
12.種間競争を有利にするための特有の仕組みを持つ。
これらの細かい説明は今日もを持ったら、本書を読んで欲しい。
どうですか、雑草侮りがたいし、興味深いですね。読了後、その辺を歩いてもクルマを運転しても、道端の雑草に自然と眼がいくようになった。
本書に出てくる雑草、スズメノカタビラ、ヒメムカシヨモギ、ホトケノザ、ブタクサ、サクラソウ、スズメノテッポウ、オオバコ、タンポポ、セイタカアワダチソウ、アキノエノコログサ、タカサゴユリ、エンバク、ノアサガオ、ノシバ、ギョウギシバなど、など。
雑草はなぜそこに生えているのか (ちくまプリマー新書) | 稲垣 栄洋 |本 | 通販 | Amazon
星のうち5.0雑草とはどのような植物なのかだけでなく、雑草を始めとした生物の生き方を通して、「人として、どう生きるべきか」も説いている
2018年1月19日
形式: 新書|Amazonで購入
私は筆者の著書を何冊も読んでいるが、その中に雑草について触れた一文があり、あの刈っても刈っても次から次へと生えてきて、どんどん成長していく生命力が強いとしか思っていなかった雑草を、本当は弱い植物と評しているのを見て、驚かされたことがある。本書は、そんな雑草だけを取り上げて一冊にまとめている本だということで、庭や道ばたでいつも見かけ、日頃はただうっとうしいとしか思っていない雑草とは本当はどのような植物なのかに興味が湧いてきて、本書を読んでみる気になった。 
筆者は、雑草が弱い植物であるという理由を第二章で、雑草は他の植物との競争に弱く、他の植物が生えない場所、具体的には、道ばたや畑のような人間が管理をしている特殊な場所を選んで生えるからとしている。「言われてみればたしかに」なのだが、筆者はその一方で、雑草は、踏まれたり、耕されたり、草取りされたりする予測不能な環境の攪乱には強く、むしろ、そうされることで生存の場が確保されており、雑草を完全に根絶やしにすることは難しいともしており、第三章から第六章で紹介されている雑草の巧妙かつ複雑な発芽戦略、遺伝的多様性・環境的可塑性、生殖戦略、繁殖戦略や、第八章で紹介されている雑草の12の特徴を読んでみると、筆者もしばしばそんな雑草を「すごい」とか「たくましい」と表現しているように、私には、雑草は本当は弱いのか、強いのか、よくわからなくなってくるというよりも、やっぱり、雑草は、本当は強い植物と考えるべきではないかという気さえしてくる。 

それはさておき、実は、私が本書を読んでいて一番感銘を受けたのが、この後の第九章の『本当の雑草魂』と、『おわりにーある雑草学者のみちくさ歩き』だった。筆者は第九章では、ここまで紹介してきた雑草を始めとした生物の生き方を通した非常に含蓄に富んだたとえ話で、『おわりに』では、筆者が進んできたという、「みちくさ」だらけ、悩みながら、失敗だらけの曲がりくねった道を振り返って、それぞれ、「人として、どう生きるべきか」を説いているのだ。筆者は、「本書は、若い人に向けた本である」と書いており、これらは若い人に向けた言葉ではあるのだが、若くはない人にとっても教訓となるような、非常に深い言葉の数々だった。

第9章は、ちょっと余計な気がしたけど、著者は下のような講演会をしているようですね。
『逆境に打ち克つ雑草の成功戦略』丨プレジデントアカデミープレミアムセミナー(東京開催) | 日本全国20,000人の社長が支持する経営改革プログラム|PRESIDENT ACADEMY
今回のセミナーレポートでは、
『雑草の成功戦略』の著者である稲垣栄洋氏の
セミナー内容をご紹介いたします。
 皆さんは、以下のフレーズを聞いたことがあるのではないでしょうか?
 「自然界は、弱肉強食である。」
 ここで、1つ疑問が残ります。
植物界も動物界も「弱肉強食」であれば、
なぜシマウマは絶滅しないのでしょうか?
 それは、絶妙なバランスで自然界は成り立っており、
「弱き者」も、様々な戦略でポジションを確立しているからです。
 雑草は、「最強の植物」と言われています。
雑草の戦略から何かビジネスに活かせる学びを得られないでしょうか?