Takの山行記録

私が登った山やアウトドア活動の記録です

夕張岳(1,667m)~羆(ひぐま)物語

2016-08-08 21:41:44 | 日記

8月6日午前10:30、母熊は去年の冬生まれた雄の子熊を追っていた。腕白盛りの1歳児は、母熊の目を掠めて歩き回る。夕張岳の山頂下、1,400m湿原から上の笹原は熊たちの棲家だ。熊が峰では土を掘り起こして虫を探し、広大な笹原を行き来して這い松の実や木の根を探す。熊が峰までは子熊も母熊と一緒だったが、気が付けば、その姿が見えない。湿原に向かって降りていくと子熊は湿原を縦断する登山用木道の上で遊んでいる。これは危ない。今日は特に登山をする人間が多い。と、子熊が人間の集団に見つかったらしい。まだ、人の恐ろしさを知らないあの子は人間を恐れない。しまった、と母熊は木道に向かって急ぐ。幸い、人間の集団は子熊の姿を見て引き返したらしい。このすきに早く子供を人間の近づく登山道から離さないと。ようやく子熊が無邪気に座っている木道にたどり着いた母熊は、すぐにはなれるよう、子熊を促す。しかし子熊はなかなか言うことを聞かない。その時、再び鋭いホイッスルの音とともに、人間が近づいてきた。このままでは子熊が危ない、と判断した母熊は、恐ろしい人間から子熊を防御する決意を固めた。深い笹原をホイッスルに向かって進む母熊。左カーブを曲がったところで人間の集団とはち合わせた。相手は4人、狭い笹原の中の木道を一列縦隊で進んできた。先頭のサングラス男がホイッスルを吹いている。距離は10mほどか。母熊の出現に人間は驚き、さらに鋭くホイッスルで威嚇する。背後には、まだ子熊が母熊の後ろ姿を見ている。もう、後には引けない、と母熊は意を決して人間に向かって一歩、二歩と進んでいく。

この日は、爽やか登山の会第2回例会だ。Toshi隊長に、Teddyさん、Taikoさんとともに、夕張山地の名峰、日本百名山にして、花の百名山、夕張岳に登る。今度こそ、晴天の北海道だ!一週間前から毎日欠かさず天気予報を眺め、この日の晴天を確信した。朝4時半、寝過した私を札幌で拾ってもらい、一路夕張へ。Toshi隊長のふるさとでもある夕張は、Toshi隊長の所属するミニ山の会でも頻繁に登場する地域だ。また、夕張にあるマウントレースイスキー場は、あのAmigo師匠お気に入りの登山フィールドであり、裏手の金山湖は、ミニ登山の会の新年会の地でもある。というわけで、Takとしても、何とか一度は登ってみたい山域だったのだ。写真は晴天のシューパロダム湖での記念撮影。

7時林道終点の登山口出発。冷水コースを一路進む。快晴の陽の光を受け、木々の緑がまぶしい。写真は馬ノ背から見た滝の沢岳と、望岳台からの前岳。久しぶりに天気の心配のない山行に心も弾む。

樹林帯を抜けるとガマ池、瓢箪池を過ぎて、1,400m湿原に入る。釣鐘岩と熊が峰の奥に、夕張岳山頂が威風堂々と迫ってくる。なんとも爽快な山歩きだ。

夕張岳は花の百名山でもある。7月から9月はこの湿原を中心に、それこそ百花繚乱。もっともっと素敵な花があったのだが、次の事情から良い写真が取れずまことに残念だった。そして、

湿原を抜け、山頂を目視しながら、笹原に入ろうとした時、先のほうから若者たちのグループが青い顔をして降りてきた。「熊がいます。小熊が!」「目が合っちゃいました!」口々に今しがたその先の笹原でクマと遭遇したことを興奮気味に話し始めた。「どうしましょう?」といわれれば、我らが隊長に、「どうしましょう?」。そして、行きましょう~!一列縦隊で背の高い笹原の中を通る木道を進む。先頭の隊長は、熊を避けるためにホイッスルを吹きながら進む。と、隊長が歩みを止めると同時に、ホイッスルの音がレベルを上げた。そして後のTaikoさんが、「くま~!」と喘ぐので、前を見れば「げっ!くま!」距離は10mほどか、狭い笹に覆われた木道を覆うような熊の顔が、ゆっくりこちらに近づいてくるではないか!「熊は普通、逃げるのではないのか?!」と思った瞬間、後ろを向いた隊長、「逃げろ!」と走り出す。Takも、「まず襲われるのは隊長だな!」と思いつつ、走る。一番後ろのKennyさん、全く事情分からず走る。

その後、4名は得も言われぬ体験を胸に、山頂はあきらめ下山の途についた。熊は、手前から鈴やホイッスルで警告すれば逃げる、というのは、子熊がいては通じないことが改めて確認された。マニュアルでは絶対だめ、と言われる、背中を見せて逃げる、を実践してしまったが、運よく襲われることもなく逃げられたのは、まさに幸運だった。その後、ネットで「夕張岳と羆」を検索してみた。すると、あるわあるわ、同じように1,400m湿原から上の笹原での遭遇記録が。やはりこの一帯は羆の生活圏であり、その中を事もあろうに登山道が通っている環境なのだ。我々が遭遇したのと同じように、至近距離で遭遇、迫ってこられたが無事、というケースが多かったのは、あの羆が実は人間慣れしているのかもしれない。これからも、羆の領域を、人間の登山者が数多く通ると思うが、何とか共存共栄して、事故の無い夕張岳を維持してほしい。そして、夕張市のキャラ、メロン熊が、これからも愛され続けるように、夕張の自然と、メロンを大切に考えたい。さて、来週は、本州のツキノワグマの里へ向かう。熊鈴を新調しなければ・・・

 

 

 

 


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4 コメント

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なるほどなあ・・・ (Amigo)
2016-08-09 23:04:08
Toshiが『夕張岳』をアップしないから、おかしいと思っていたのよ。
子連れのヒグマはまずい。
私もヒグマとの遭遇は数々あるが、子連れの気配だとかなり緊張する。
「逃げろ!」で走り出して、母グマが追ってこなかったのは子熊がいたせいだな。
運が良かったな。
Takはせっかく北海道に来て、北海道らしく素晴しい体験が出来たな。
面白すぎます。 (Toshi)
2016-08-10 17:37:36
Takさん先日はお疲れ様でした。
何を隠そう私が先頭のサングラス男です。

いやぁ~
Takさん渾身の読み物「羆物語」面白いですね。
子供の頃、大いなる王(ワン)というロシヤの作家が描いた小説に
感動した記憶が蘇ってきました。
王は百獣の王のことですが、ライオンにあらず虎でした。
虎の親子から観た人間世界の洞察が素晴らしく、悲しかった。
北海道における陸上の王であり、生態ピラミッドの頂点に君臨する
羆から観た人間の愚かさを描いたこの力作もまた同様に洞察深く、
方や人間側から描いた実話の方は、先頭のサングラス男が実は隊長で
あって、一人置き去りになったとして食い殺されても、他の3人を
守らなくてはならない役割であることがよく分かる記述になって
います。
最後はドリフの全員集合的な表現で、読むものを深刻にさせない配慮
が読み取れ、隊長の故郷夕張の紹介も忘れない…
なんと素晴らしい。
毎回、このような内容でアップいただくと読者がわんさか流入して、
商売替えを余儀なくされることでしょう。
Takさんをそれだけ本気にさせた「羆遭遇」は本当によい体験になり
ました。
一生の宝物です
びっくり (Tak)
2016-08-10 22:02:50
Amigoさん、本当にびっくりしました。その時は、あまり実感無く、あとからじわじわ、色々な思いが湧き起こりました。良い経験しました。明日から、ツキノワグマの領域に行ってきます。
シートン動物記 (Tak)
2016-08-10 22:05:39
Toshiさん、オオカミ王ロボを久しぶりに思い出しました。Toshiさんの、領域を荒らしてはならない、から物語ました。

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