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東日本大震災による原子力発電所の外部電源喪失概要

2016-12-16 18:12:46 | エネルギー
水力発電が日本を救う
東洋経済新報社


 2006年衆議院議員吉井英勝の質問主意書に対し、当時首相だった安倍晋三は、鉄塔倒壊、外部電源供給停止の可能性があることは承知した上で、「外部電源から電力の供給を受けられなくなった場合でも、非常用所内電源からの電力により、停止した原子炉の冷却が可能である」「非常用ディーゼル発電機は複数ある」と回答しているが、外部電源を失った東海第二原発はベントに至っており、福島第一原発は4基も過酷事故に突入した。外部電源の喪失がその後の事故対応状況を左右している事が分かる。

 福島第一原発は新福島変電所から6つの回線(大熊線1L~4L、夜の森線1L~2L)と、東北電力からの東電原子力線1回線の合計7回線で外部の電源を受電していた。大熊線3Lは工事中、東電原子力線は常時受電していなかった。夜の森2回線は原発敷地内に建つ外部電源送電鉄塔「夜の森線の第二十七号」の隣接地の盛土が崩壊したことにより倒壊した。大熊線1L、2Lは受電遮断器の損傷、4Lは鉄塔と電線間の接触によって受電停止に至り、全ての外部電源を喪失した。この事が原発過酷事故の元凶となった。受電鉄塔は津波の及ばぬ場所にあったが地震で倒壊した。また、絶縁体である碍子の損傷も報告されている。碍子は耐震性や塩害に弱く経年劣化する。原発にとって命綱であるはずの受電鉄塔は30年以上前に「耐震性が低い」と指摘されていたいたが、交換されないまま使われ続け、倒壊し電源喪失に繋がった。受電鉄塔自体の耐震性は現在も改善されていない。

 福島第二原発は通常外部から2系統4回線で受電していた。被災当日、岩井戸線1号は定期検査のため送電を止めていた。地震で7km離れた場所にある新福島変電所の遮断路が損傷し、富岡線2Lが停止、さらに地震後の点検で富岡線1Lの損傷が確認されて停止。岩井戸線2Lが変電所の不具合で停止した。所内電源は富岡線1Lによって継続し、12日には岩井戸線2Lが復旧、13日には岩井戸線1L仮復旧させ、3回線の受電構成となった。非常用電源1・2号機は津波で3台ずつ全て、3号機は1台、4号機では2台の非常用電源を喪失した。外部電源1回線と非常用電源3台が維持された。東電側証言では残留熱除去系B系を復旧させてベントには至っていないとしている。非常用ディーゼル発電機が第一原発では、津波などに弱いタービル建屋内に置かれていたのに対して、第二ではより頑丈な原子炉建屋内に設置されていた。発電機の設置場所も命運を分けたと言える。

 東海村村長村上達也証言によれば、「東海第二原発は昨年3月の大震災で、東海村は震度6強で、5.4mの津波を受けました。原発の電源は断たれ、非常用電源3台のうち、1台が津波で停止、原子炉内が高圧になり危険でしたので(原子炉内の高圧ガスを抜く)ベントを170回行いました。幸い海辺に6.1m防護壁を1日半前に完成していました。70cmの差で津波を防ぐことができて2台の非常用電源が動き出しました。防護壁の完成がなかったら福島原発同様に爆発したでしょう。危機一髪でした。」となっている。停止した非常発電機に繋がる残留熱除去系ポンプが停止して、崩壊熱を除去するために二系統で行われていた原子炉の冷却が一系統のみとなった。炉内圧力が上昇し減温減圧の為にベントした。使用済み燃料プール冷却も停止となった。原子炉内水位は核燃料上部から600-150mmを変動する状態となった。発震後62時間後である14日10時に外部電源が回復して危機を脱した。3月12日茨城県常陸太田市真弓のモニタリングポストでは200μSv/hを計測している。常陸太田市への福島第一原発からの直接的な気団の最も早い来襲は、3月14日午後11時ころ以降であるから、常陸太田市MPは東海第二原発のベントを計測した可能性が高い。東海第二原発の外部電源喪失は東電の変電所の碍子が経年劣化しており、地震で壊れたのが原因である。

 女川原発に届く送電線は5回線あったが、内2回線は地震動で損傷、1回線は碍子が損傷、もう1回線は広域停電により失われた。原発への送電は30時間にわたって1回線だけになった。残った1回線も盤石ではなく、震災翌日に遮断され燃料プールの冷却が停止した。3月11日午後2時57分1号機タービン建屋地下1階で高圧電源盤が発火。非常用電源に引き継がれたが午後4時過ぎ津波で浸水し、原子炉冷却用の2系統ある熱交換器の1系統が半ば水没して機能しなくなった。1回線残った外部電源が無ければ福島第一原発同様の炉心溶融過酷事故に至った可能性は高い。

 定期点検中の東通原発でも外部電源が絶たれ、3台あるディーゼル発電機のうち2台は点検中で使えず、残る1台が自動的に立ち上がった。だが発電機が燃料漏れで停止するが、直前に外部電源による通電が再開された。東北電力では万が一に備え電源車を至急配備した。

 青森県六ヶ所再処理工場も外部電源AとBの2系統共に失い、非常用ディーゼル発電機2機で冷却水循環ポンプ等に給電した。

 また、余震と見られる2011年4月7日宮城県沖地震で女川原発送電線4系統のうち3系統が遮断された。生き残った1回線は東日本大震災時とは別回線である。同日、青森県六ヶ所再処理と東通原発では外部電源が途絶えた。東通原発は3台あった非常用電源の2台が点検中で、残りの1台非常用ディーゼル発動機を稼働させて冷却した。

 地震動で送電線が揺れ、地震動で受電鉄塔が押される方向と逆方向に送電線が鉄塔を引っ張ると、碍子の破損や受電鉄塔の倒壊が起きる。現状では碍子に代わりうる絶縁体は存在せず、地震動による碍子損壊や高圧送電用の受電鉄塔倒壊は構造的に避けがたい。

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