日本経済新聞 社説 2007年08月23日(木曜日)付
多角的アジア外交へ日印関係広げよ
安倍晋三首相がアジア3カ国を歴訪中である。22日にはインドのシン首相と会談、「戦略的グローバル・パートナーシップ」と銘打った両国関係を深めることで合意した。多角的で均衡の取れたアジア外交を進めるため、価値観を共有する大国インドとの関係拡大を日本外交の柱の一つに据えることは重要だ。
インドは民主主義の大国であり非同盟諸国の中心国でもある。経済的にも存在感を増し、経済規模は既にアジアで第3位だ。
だが2005年4月に小泉純一郎首相が訪問するまで日印首脳の往来は少なく、経済的にも日本との貿易、投資関係が活発だったとは言い難い。インドに進出している日本企業は増えてきたとはいえ、500社弱にとどまる。
安倍首相とシン首相は日印関係について「最も可能性を秘めた二国間関係」だとの認識で一致した。その可能性を開花させるべく、安全保障、地球温暖化対策などの分野で連携を強めると合意したことは大きな成果だ。
安倍首相には日本経団連の御手洗冨士夫会長を団長に200人あまりの企業首脳が同行している。インドとは今年1月に経済連携協定の締結交渉も始まった。日本企業は中国市場への過度の依存によるリスクを回避する必要があるとの認識を強めており、日印の経済関係拡大の余地は大いにある。
ただし日本はインドが米国との間で結んだ原子力協定を支持するわけにはいかない。同協定は米国がインドに原発技術を提供するための取り決めだが、インドはパキスタンなどとともに核拡散防止条約(NPT)に加盟せず一方的に核兵器保有を宣言している。米印協定はNPT体制をないがしろにしかねない。
安倍首相は歴訪の第一の訪問先ジャカルタで東南アジア諸国連合(ASEAN)の大国インドネシアとの経済連携協定に署名した。さらに演説で、ASEANが民主主義や人権尊重を重視した憲章づくりを進めていることを高く評価し、経済連携協定のネットワークなどを通じ地域統合を支援していくと述べた。インドの次には親日国でASEANの中核国であるマレーシアを訪問する。
首相のアジア3カ国歴訪は参院選での自民党の大敗をうけて帰国直後に内閣改造、自民党役員人事を決定しなければならないというあわただしい時期と重なった。だがASEANとインドを重視する路線が日本のアジア外交の基本の一つであることを打ち出せた。









