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【ピラミッド 5000年の嘘(2010)】

2012年08月09日 | 映画


【ネタバレあり】

オカルト好きとしては見逃せないタイトル。TSUTAYAに3本入荷後、待つこと2週間と意外に人気。

本作は「ギザの大ピラミッドで常識とされる定説を、科学的分析により覆し、新たな驚くべき仮説を提唱するドキュメンタリー」との触れ込み。私的にはドキュメンタリーでもフィクションでもオカルト的に面白ければOKなのですが、残念ながら今回はあまりいただけない出来でした。

全体の三分の二は定説の検証なのですが、まずもってこの部分が「面白い」という観点からしてかなり不足です。

「ピラミッドは8面体であった!」というのような新しい事実を提示してくれており興味深くはあったのですが、ソレ意外はほとんどが既出のものです。「当時の道具ではあの精度の建造物を作るのはムリ」とか「石を運ぶのがムリ」とか、考古学者の意見と建築家や精密加工業者などの専門家の意見を交互に流してムリさ加減を強調していきます。ライナー・シュタデルマンなど考古学研究の大家が出演しているので「おぉぅ」と思ったりもしたのですが、彼らのインタビューは悪意をもって歪んだ形で利用され、専門家達の “ただの一方向からの意見” と対立させることで、ほらムリでしょうとドヤ顔で並べていきます。全くの欠席裁判のようで考古学者の方々が可哀想に見えてしまいました。その上、考古学界の陰謀論も持ちだしてハナっから検証する気などありませんという風体です。確かにそんな精密なもん作るのムリかもとは思わざるを得ないですが、「科学的に検証する」ってのが売りにしてはその姿勢が疑われます。

あとは黄金律と円周率が隠されているっていうよく聞くヤツを延々とおハナシしてたりします。理系のボクでも飽きます。しかもその情報源は伏せられているという体たらく。相手は名指しで攻撃しといて、こっちは謎のブレーンからの情報って、科学的って謳ってるんだから情報の出所もちゃんとしないと。大槻教授を連れてきたなら韮沢さんも連れてこないと、って違うか。

最後にたどり着く仮説はピラミッドの謎としてはお初なご意見なのかもしれません。しかしマヤ暦の終わる2012年に合わせてきたようなオチで「やっぱりそのへんに落ちるのね」と思ってしまうものでした。また他の遺跡との関係など駆け足すぎて科学的な検証はまったくなしです。まあここは「大胆な仮説」ですので面白ければOKなのですが、オカルトの定番のポ○ルシフト、地○気の反転などもごちゃごちゃと混ぜこぜたのはオカルト的にも練り切れていないオチで、お茶を濁した感じがしました。

オカルトが面白いためには「どうしようもなく怪しいけど内容が面白い」「きちんと検証してみて本当か!?と思わせるに足る」のどちらかでないと面白いものとして成り立ちません。そのどちらの観点から見ても中途半端なものだったかなと少々残念でした。監督自身は本当にドキュメンタリーだと思っているのかもしれませんので、であればボクとはオカルト魂が違う作品でした。


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