瀬崎祐の本棚

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詩集「スパイラル」  葉山美玖  (2017/04)  モノクローム・プロジェクト

2017-04-05 21:14:33 | 詩集
 70頁、序詩を入れて21編を収める。第1詩集か。
 価格を抑えての詩集出版をめざして一色真理が立ち上げたモノクローム・プロジェクトによるもので、ブックレット詩集と銘打っている。ソフトカバーで、装幀にはカラー写真を使用、帯はない。

 この詩集の作品では、生々しい現実が肉体に絡みついて、そこから抜けだしていく虚構の世界がある。いや、虚構の世界がある、というよりも、虚構の世界にしてしまおうとする意志がある。それによって現実との平衡を自分の中で保っているようなのだ。

「成人儀式」には、母方の叔母が登場する。叔母は私をここではないどこかへ連れて行ってくれるような存在なのだろう。理不尽な行為が怖ろしくもあるのだが、それによって私は確かに救われてもいるのだろう。

   (略)紫色のアイシャドウをもっと濃く目元に塗りなさいと、
   いきなり言った。それから焼き場から飲み屋にいざなって、
   鯨のたけりが食べられないのかと嘲るように晒った。私が耐
   えられなくなって泣き出すと、やさしく頭をハグしてくれた。

 「鍋」では、大事な人がいなくなる前夜にひとりで豆乳鍋をつついている。一人になってしまう私は大丈夫なのだろうかと、気持ちがぐるぐると回っているようだ。私は「母とおとうとを/泣きながら挽き肉機にかける夢をみ」たりもするほどなのだ。そして最終部分、

   まだ見ぬこいびとだかしんゆうだかマリアさまだか
   それとも無表情な父親に
   黙ってにっこりとわたしは差し出すだろう
   ポン酢をどうぞ

 ここには、差し出しているのはわたしを食べてもらうための調味料なのではないかと思えてくるような、辛いものがある。
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1 コメント

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Unknown (葉山美玖)
2017-04-13 17:23:23
初めまして、瀬崎様。

詩集の内容、筆者(自分ですが、)の心情に寄り添った、丁寧なご感想を、誠にありがたく思います。

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