瀬崎祐の本棚

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雨期 67号 (2016/04) 埼玉

2016-09-10 13:46:52 | 「あ行」で始まる詩誌
 「汽笛」古内美也子。
 ある場所で聞こえてくる汽笛の音、それはそこで自分のうちに甦る何かが鳴らしているのではないだろうか。「こころに/きつく巻かれていた/ぜんまいが」緩むのだろう。それは赦しを乞うていることなのか、それとも慰められていることなのか。何かにふたたび自分が切り裂かれるようだ。最終部分は、

   涼しい夏が死に絶え
   橙色の悲鳴は
   どこにも辿りつかない

 「マルドロールの夜」谷合吉重。
 新宿三丁目の夜で踊る男と女が、万華鏡のように描かれている。

   だから踊ろう
   季節が過ぎたら
   新たな道順を見つけなければならないから
   きみはきみでありながら
   きみに違反されているのだから

 意味はよく判らないのだが、くるくると情景は廻り、それにつれてこの世界が夜空に舞い上がっていくようだ。(余談になるが、「だから踊ろう」と言われると、私はあがた森魚の「淸怨夜曲」を思い浮かべてしまう。)

 須永紀子が「詩の未来を考える」と題した評論で倉田比羽子「世界の優しい無関心」を取りあげている。その論考で、「現実の像を自身の内部に移しかえるという心的な作業をする詩人たち」の作品を読むときには、「まず詩人の立ち上げた世界を了解」する必要があって、「詩人の内部世界と、そこで展開されること」の両者を理解しなければならないとしている。なるほど、と思う。
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