瀬崎祐の本棚

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詩集「午後の航行、その後の。」  高啓  (2015/12)  書肆山田

2016-01-04 13:34:30 | 詩集
 第5詩集。77頁に14編を収める。
 前詩集の時にも似たことを書いたが、作品はどこまでも重いパンチを繰り出してくる。ひとつひとつが気持ちの奥底にまで響いてくる。そこには華麗な部分はなく、というよりも、そんな甘いものをすべてそぎ取ったところで作品が成立している。
 「それからの夜」では、女と暮らす夜の状況が拡げられる。ビールを飲みながら食事をしてテレビを観ている。女の繰り言を聞き、女が浴室に消えると仏壇に手を合わせる。

   五十肩でも帯状疱疹でも夜ごと沼田うちまわったけれど
   これこそがおまえの宿痾だとでも言いたげに
   砂漠みたいに荒れた風が吹いたり
   濡れた手がぴちゃぴちゃと顔を叩いたりして
   老いることなきそれからの夜がくる

 話者にはそれこそ夜の暗さ、寒さを必死に耐えているような切実さがあるのだが、それをこれだけの強い作品として差し出してくるところに感嘆する。
 「雪坂下の女」。細い私道の奥の女の家を訪れると、「雪坂下の女はいつもお帰りなさいと微笑んでドアを開け」てくれるのだ。酒を飲み、帰りの時間がくるとふたりで雪の坂をのぼるのだ。

   路面は今夜も凍りついている
   転ぶなよ 転ぶなよ
   おれは匂いのしない女の匂いを想い出そうとしながら
   この夜もだれかに語りかけている

この作品を読んでいて、ふっとつげ義春の漫画を思い浮かべた。そこにあるのは無頼のような男像なのだが、内実は非常に繊細で傷つきやすい。男としての拠り所、妄執、諦観、強さ、そんなものがない交ぜになって読む者に迫ってくる。
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