瀬崎祐の本棚

http://blog.goo.ne.jp/tak4088

詩集「そして彼女はいった-風が邪魔した。」 横山黒鍵 (2017/07) モノクローム・プロジェクト

2017-08-05 21:57:14 | 詩集
 第1詩集か。134頁に19編を載せる。
 「岐路」。飛蝗が跳ぶような道で戸惑っているのか、決断をしようとしているのか。

   遠くを見たいものです。ただしい風景の沈む泡泡のなかで、
   同じ質量に閉じこめられた窓際のコップに
   わからないまま揃えられた前髪は戦ぎ
   浮かんでは消え、浮かんでは消え
   草を編んだ苦い汁が手から溢れて、そうしたら黄色い帽子を被ってあなたは
   そこの角を曲がり
   見えなくなってしまうでしょう

 少し長い引用になったが、このように夥しい言葉が差し出されてくる。そのひとつひとつの言葉が担うものはとても軽い。一つところに拘ることのないその軽やかさが、作者の武器といってもいいだろう。
 これをはじめとした作品を読みながら、私(瀬崎)の中では言葉がラップのように唱えられていた。ラップはリズムを持った時間と共に展開される。作者は自分の生を受け止めるためには、その時間を過ごすための言葉が必要だったのだろう。それがかなり抒情的でもあるところが面白い。

 3編は”詩型融合”との断り書きがついていて、短歌+自由詩、あるいは俳句+短歌+自由詩となっている。その一つ「俄か蛇」。俄か雨で蛇の目傘をさすところをベースに置いて作品世界が展開されていく。冒頭に置かれた歌は「ぱらぱらと/俄か雨、ふる/音つたい/胸までの距離を/さぐる 蛇の目」。夢の中で見た蛇は父を招き寄せる、母を招き寄せる。

   ほら銀河の模様を縫い込んだアオザイだよ、母がいつか誂えてくれる、胸に蛇
   が這いのぼりその鱗が私の肌を温める、ちくちくと刺される、いたいよいたい
   よと泣いても母は縫い物をやめない、

 そして蛇の卵の中には妹が入っているのだと思えてくる。私は卵を飲み込み、「ぱらぱらと/俄か蛇、ふる/音つたい/夢までの距離を/さぐる 雨の目」の歌で終わっていく。詩の中に溶けこんでいる短歌の部分はゴチック体で表記され、リズムを支えながら物語を展開させている。見事な蛇譚になっている。
ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 詩集「華茎水盤」  吉田嘉... | トップ | 詩集「ふろしき讃歌」  星... »

コメントを投稿

詩集」カテゴリの最新記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。