瀬崎祐の本棚

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詩集「父の配慮」  小笠原眞  (2017/04)  フランス堂

2017-04-25 21:03:41 | 詩集
 第6詩集。正方形の判型で146頁に27編を収める。
 平易な語り口で父のこと、我が身のことなどを描いている。地元の医師会誌に長く詩を書いていたとのこと。そのために”詩を書かない読み手”にも受けとってもらえるものとなっている。これは貴重なことである。
 「犬猿の仲」は、生まれ年の干支にからめての家族の話。自分は申、父は寅、母は酉などと続き、それぞれの性格を軽妙に記す。そして妻は「何と何と戌年なのだ」という。

   若い頃は猿も悪事がばれて
   時々噛まれもしたのだが
   最近は老獪になったせいか
   吠えられることさえ少なくなってきた
   いわゆる犬猿の仲であっても
   お互い静かな老後を夢見ているのだ

 ここには読む者を惑わせるような詩行はまったくない。読む者は書かれた事柄をそのまま信じて読めばよい。つまりは、読む者は作品そのものを信じて読むことができるのだ。これはなかなかに大変なことだと思う。
 「父の配慮」は最期が迫ってきた父を詩っている。亡くなる十日前から父のところには男女二人が訪れるようになったのだ。もちろん父にだけ見える人たちで、

   亡くなる四日前には
   一日中その人たちと激論を交わしていた
   亡くなる日時を相談していたのかもしれない
   誰にも迷惑をかけないよき日が決まると
   父はとても安らかに静かになった

 作者は、そんな父の気遣い、配慮を感じて、「少し申し訳ない気持ちにな」ったりしているのだ。
 生きてきたことの苦しいことも書かれている。しかし、読後感はやわらかく、どこか気持ちがくつろぐ。作者は医師であるが、読む者の気持ちを癒してくれる、そんな意味では詩における名医である。
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