個人誌「蝸牛」を熱心に発行している作者の第13詩集。90頁に24編を収める。
「コロコロと」は楽しい作品。ちびれた消しゴムや、大きな握り飯、土のくっついた芋、真新しいボールなどがころがる。それらがころがった頃の日々の情景が、絵巻物のように広がる。
コロコロと
鉄の車輪がころがった
村の空は汽車の煙で見えなくなった
男も女も煤だらけになって
トンネルの向こうの
遠い町の方へ行ってしまった
このようにこの詩集では、作者が少年期を送った昭和の時代が描かれている。そして、ただ昔を懐かしむだけではなく、その裏返しとしての現代についての批評のようなものが隠されているようだ。それが一層のノスタルジアを感じさせるものとなっている。
詩集のカバーには作者が愛用したという風呂敷の写真がある。詩集タイトルにもなっている作品「ふろしき讃歌」。ふろしきは弁当を包み、お使いの重箱を包んだ。それどころか、嫁入り道具を包み、ヤミ米も包んでいたのだ。「ふろしきは/夕焼けを包んで」、
山の裾の
家々の灯がともって
子どもたちがカラスに連れられて帰って来た
ぐるりとお膳が並び
家族は丸くなって箸を運んだ
村はふろしきの中で暮れていった
こうしてかっては生活のいろいろなものを包んでいた風呂敷は、作者の人生も包みこんでいたのだろう。そのふろしきをほどいて、包みこまれていたものを取りだしてきている。
「コロコロと」は楽しい作品。ちびれた消しゴムや、大きな握り飯、土のくっついた芋、真新しいボールなどがころがる。それらがころがった頃の日々の情景が、絵巻物のように広がる。
コロコロと
鉄の車輪がころがった
村の空は汽車の煙で見えなくなった
男も女も煤だらけになって
トンネルの向こうの
遠い町の方へ行ってしまった
このようにこの詩集では、作者が少年期を送った昭和の時代が描かれている。そして、ただ昔を懐かしむだけではなく、その裏返しとしての現代についての批評のようなものが隠されているようだ。それが一層のノスタルジアを感じさせるものとなっている。
詩集のカバーには作者が愛用したという風呂敷の写真がある。詩集タイトルにもなっている作品「ふろしき讃歌」。ふろしきは弁当を包み、お使いの重箱を包んだ。それどころか、嫁入り道具を包み、ヤミ米も包んでいたのだ。「ふろしきは/夕焼けを包んで」、
山の裾の
家々の灯がともって
子どもたちがカラスに連れられて帰って来た
ぐるりとお膳が並び
家族は丸くなって箸を運んだ
村はふろしきの中で暮れていった
こうしてかっては生活のいろいろなものを包んでいた風呂敷は、作者の人生も包みこんでいたのだろう。そのふろしきをほどいて、包みこまれていたものを取りだしてきている。