Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファン、アナキン・tak・スカイウォーカーが、日々気になる音楽・映画・家族の出来事を記す雑記帳

トニー滝谷

2014-07-26 | 映画(た行)

■「トニー滝谷」(2004年・日本)

監督=市川準
主演=イッセー尾形 宮沢りえ 西島秀俊(ナレーション)

●2004年ロカルノ国際映画祭 審査員特別賞・国際批評家連盟賞・ヤング審査員賞

 原作と映画化を比較してしまうことは、映画ファンの立場としてよくあることだ。コミックでも小説でも、原作に思い入れがあればある程、やれキャスティングがイメージ違うとか、原作の改変が納得できないとか言いがち。人気作ならばなおさらのこと。村上春樹の小説も映像化するのが困難だとよく言われる(羊男が出てくる時点でコントになる危険がある為か?)。デビュー作の映画化はファンの間では酷評されているし、あの大ヒット作の映画化は、僕は残念な気持でエンドクレジットが始まると早々に帰り支度を始めたっけ。村上春樹作品を語る上で外せないキーワードは「喪失」だ。突然何かを失った主人公が、必死で探したり、欠落した部分を埋めようと懸命になる姿が描かれる。行間に漂う何とも言い難いセンチメンタルな雰囲気は、読者の心に静かに訴えかけてくる。あのおセンチなムードに浸りたくなって読み返すことだってある。

 市川準監督が撮ったこの「トニー滝谷」を今回初めて観た。ちょっと短い75分の上映時間はまさしく村上春樹小説のムードだった。付け加えられた、すれ違いのラストシーン(蛇足だと言う人も多いようだけど)を除いて、ストーリーはほぼ小説のままである。しかし、この映画が原作好きの僕の気持ちを裏切らなかった理由はそれだけではない。村上作品の「喪失」感が見事に映像になっているからなのだ。

部屋いっぱいにあった亡き妻の洋服。それを前にして女性が泣き出してしまう場面は、強い印象を残してくれる。主人公が妻を失った空虚な気持ちを受け止めきれなくて、妻と同じような体型の女性をアシスタントに雇おうとする場面。妻がいなくなったことを受け止めるために遺した服を着て欲しいと言うが、それは主人公が失ったものを埋めようとしている行動に他ならない。そしてその服を処分した後の空っぽの部屋。父が形見で遺した古いレコードと、それを処分した後の空っぽの部屋。印象的な短い場面の多用、ナレーションを突然キャストがしゃべる唐突な演出、大事な宝物のように扱われる短い台詞たち、ナレーションに俳優を据えたことにも言葉を大切にしている気持ちが伝わってくる。CM出身の市川監督だからこその演出だと思えた。「気持ちよさそうに服を着こなしている人って、初めてだよ。」とポツリとつぶやく場面、そこからしばらく続く宮沢りえの美しい横顔と笑顔を主人公と一緒に僕らは見つめる。彼女を失ってから淡い色彩が多くなる後半。何度もこの雰囲気に浸りたい人はいるだろうな、と思った。それは村上春樹のこの短編小説を繰り返し読んでしまうみたいに。

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