Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ビジョン・クエスト 青春の賭け

2013-02-11 | 映画(は行)

■「ビジョン・クエスト青春の賭け/Vision Quest」(1985年・アメリカ)

監督=ハロルド・ベッカー
主演=マシュー・モディーン リンダ・フィオレンティーノ マイケル・シューフリング ロニー・コックス

80年代洋楽ファンには忘れられない映画「ビジョン・クエスト青春の賭け」。劇中使用されたマドンナのCrazy For Youと、主題歌であるジャーニーのOnly The Youngの2曲がヒットチャートを席巻していた。僕ら世代に洋楽の魅力を叩き込んだ小林克也センセイは、まだ邦題も決まっていない"Vison Quest"という映画サントラの曲だとテレビの向こうでおっしゃっている。当時、マドンナもジャーニーも大好きだった僕(このあたりが既に音楽的嗜好として節操がない)としては、サントラは外せない。だがその2曲こそ夢中になって聴いたけれど、サントラCDを手にするのはかなり後のこと。それは何故か・・・というと映画が実はあんまり面白くないんだ、という世間の噂があったからだ。映画はヒットチャートの騒ぎが一段落した夏にひっそりと公開された。結局僕は公開当時も観なかったし、ビデオリリースされてからも観ないまま。80年代映画主題歌の専門サイトまでやってたくせに観ていないのはちょっと・・・といい加減に思い、公開から30年近く経ってやっと観るに至った。すんません、言い訳がまた長い(汗)。

結論。こりゃ、サントラのヒットがなかったら日本未公開だったのでは?と思えた。時代はお気楽な青春映画がどうしても目立つ80年代。レスリング部に所属する18歳の主人公ラウデンは、今の体重を2段階落として、州最強と言われる無敗の選手と戦うことを決意する。彼を待っているのは過酷な過酷な減量。食事もろくにせず、失神したり、鉄分不足で鼻血出したり。親の居ぬ間にコールガールを家に呼ぶ高校生をトム・クルーズが演じてたり(「卒業白書」)、学校をズル休みして大騒ぎする高校生をマシュー・ブロドリックが演じてたり(「フェリスはある朝突然に」)する時代に、なんとストイックなこと。主人公を演ずるマシュー・モディーンもだんだん映画が進むにつれて顔もほっそり見えてくるし、顔色悪くなっていく。血色のいい男の子たちが活躍した”ブラッド・パック時代”(懐かしい響き)に、なんともかわいそうな役柄。

そして、父親が車のトラブルで困っている美しい女性カーラを家に住まわせたことから18歳のラウデン君の恋が始まる。レスリング一筋に真面目にやってきたラウデン君、3歳年上のカーラに夢中になっていく。ところが女性への興味を一気にかき立てられたことから、彼の苦悶が始まってしまう。バイト先で医学書を広げて女性の体について調べたり、それまで筋肉の不思議について学校新聞に寄稿していた彼が(この段階で既に変な人)、女性の神秘について記事を書き、それを載せた新聞部女子とゴミ拾いの罰を受けちゃったり。カーラと国語の先生との関係を疑って嫉妬に狂ったり、やっと二人きりになれても話題が性から離れない。見方によっては意中の人に対して「したいんです」と繰り返してるような行動なのね、これ。「グローイングアップ」やら「ポーキーズ」やら性春映画がやたら多かった時代に、これまたなんともストイックに耐えるばかりのかわいそうな主人公。「あーあそんなこと言っちゃって!」と観ているこっちがハラハラする。そんな彼をきゃわいいと思ったのか、根負けしたのか。ラウデンの祖父の家を訪れたとき、カーラはラウデンに口づけ。ところが大事な試合を前にカーラは彼の家から姿を消す・・・その真意は?試合の行方は?・・・後は自分の目で確かめていただこう。

マシュー・モディーンは「フルメタル・ジャケット」でもその演技のうまさが光る人だけに、他のブラッド・パック男優たちと比べると華がない。ヒロインのリンダ・フィオレンティーノ(とても21歳には見えない)はこれがデビュー作(「MIB」で名前が知られるようになるのはずっと後のことだ)。サバサバしてカッコいい女性役だが、当時のアイドル視された若手女優たちと比べるとやっぱり華やかさがない。同じように苦しい練習(修行)を経て、映画の終わりで試合に勝つ展開であれば、ラルフ・マッチオの空手映画「ベストキッド」も同じ。だけど練習も恋もほんわか成就しちゃった「ベストキッド」と違って、「ビジョンクエスト」はその道のりで起こるいろんな悩みや葛藤を生真面目に描いた映画なのかもしれない。そう思うと、なんとなく地味でやや変な印象のこの映画は、あのお気楽な青春映画の時代にものを言わんとした映画だったのかもしれない。それにしても、Only The Youngが流れる瞬間の高揚感は最高!。洋楽ファンなら、それを味わうだけでこの映画は輝いて見えることだろう。




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