Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ

2015-04-25 | 映画(は行)

■「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ/Fifty Shades Of Grey」(2014年・アメリカ)

監督=サム・テイラー・ジョンソン
主演=ジェイミー・ドーナン ダコタ・ジョンソン ジェニファー・イーリー ルーク・グライムス

 ハーレクインロマンスのような吸血鬼映画「トワイライト」好きな主婦が、ネットに書き下ろした小説を映画化したという本作。女性目線の官能映画ということで巷では話題になってたし、昨年から映画館では予告編がずーっと上映されていたし、それに最近のアメリカ映画ではセックスシーンが売り物の作品はほぼ皆無だったし・・・といろいろ理由をつけて要するにエロいのがちょっと観たかったんでしたっ!。

 最近のハリウッドはいろんな規制がますます厳しくなって以前よりも過激な描写が難しくなっている。そんな中でこれだけセックスシーンを売りにした映画が製作されるのは珍しい。確かに頑張ってるとは思えた。でもねぇ・・・こんなもん?女性でも観られるオシャレなエロ映画ということであれば、僕ら世代にはミッキー・ロークとキム・ベイシンガー主演の「ナインハーフ」の印象が強い。比較してはいかんと思うのだけど、同じような場面でも「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」にはあんまりそそられないのだ。

 例えば2つの映画に共通して出てくる氷を使った愛撫の場面。「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」は"そんなことやってます"という行為を映しているだけにしか思えなかったのだ。肌に触れる冷たさ、ハッとしてのけぞる彼女。それを短いカットをつなぎ合わせて編集していて、ヒロインであるアナの緊張感は伝わる。だけどその行為自体のエロさはどうだろう。「ナインハーフ」のエイドリアン・ライン監督はカメラワークが徹底的にフェチな人だ。ミッキー・ロークが手にする氷、したたる滴、キム・ベイシンガーの肌をはう指先、あごがのけぞり、唇が小さく悲鳴をあげる・・・それらがすべてクローズアップ。僕ら観客はその行為をのぞき見しているような淫らな気持ちをかきたてられる。二人の周りの小道具までも、気持ちをかき立てる要素になっていくのだ。それは「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」に決定的に欠けているもの。秘密の部屋に置かれた様々な道具にしてもそれらを克明に見せないものだから、"なんか変な趣味持ってる人の部屋です"という様子しか伝わらない。孔雀の羽根やら様々なお道具をロジェ・バディムの映画みたいになめるようなカメラワークで撮ってたら、もっともっと観客はドキドキしたのではなかろうか。え?僕がそんなのばっかり見慣れてるから?(笑)

 この映画最大の売りでもあるセックスシーンは、ただ行為を映しているだけにしか思えない。比べるのはどうかとも思うのだけれど、アン・リー監督の「ラスト、コーション」は、セックスシーンがストーリー上でとても重要な意味をもつ映画だった。登場人物の葛藤やその行為にふける意味。それゆえの行為の激しさ。淫らな気持ちよりも、心を揺さぶられたものだ。この「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」だって、変わった性癖を持つに至ったグレイ君の心理描写や、それを受け入れるか葛藤するアナちゃんをもっと深く描いていたら、きっと違う印象になっていたはずだ。

 結局この映画は、"倒錯した性癖をもつ若い男性が、好きになった女性を思いっきりいたぶりたいのだが拒絶されちゃいました"というお話。バイト先調べて突然彼女の前に現れたくせに、「僕には近づくな。もう会わない方がいい。」と訳のわからない拒絶。ヘリコプターだのグライダーだのに彼女を乗せて、自分とでしか見られない風景を見せたり、経験をさせたり。最後まで納得がいかないのはこの若きCEOグレイ君の行動だ。でも同じように彼女をグライダーに乗せるいけ好かない金持ちであっても、「華麗なる賭け」のスティーブ・マックイーンやそのリメイク「トーマス・クラウン・アフェアー」のピアース・ブロスナンのように格好良く思えないのは何故だろう。一方でヒロインのアナちゃんが彼色に染まっていく様子は実に楽しそうに描かれている。つまりこの映画は、"冴えないヒロインの元に突然王子様が現れましたとさ"、というハーレクインロマンスそのもの。女子目線の王子様願望がテーマの「トワイライト」エロチック版なのだ。それはそれでもいい。だってそういう需要の元で売れた小説だし、製作された映画なのだから。




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