Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

告白

2010-07-14 | 映画(か行)

■「告白」(2010年・日本)

監督=中島哲也
主演=松たか子 木村佳乃 岡田将生 西井幸人 藤原薫

●2010年日本アカデミー賞 作品賞・監督賞・脚本賞・編集賞

 ベストセラーとなった湊かなえの小説を「下妻物語」の中島哲也監督が監督した話題作。R-15の指定を受けているのに大ヒットを記録している。好きなタイプの話ではないが観てみよう・・・と映画館へ足を運んだ。確かに世間が騒ぐのもよくわかる。話は重たいし暗いし結末もはっきりしないのに、中島監督の演出の巧さがあってエンターテイメントになっちゃってることだ。こんなダークな映画が大ヒットしていることにも驚きだし、海外でも評判がいい・・というニュースも。うーむ。今の日本映画ってアイドル視される人が出演して爽やかに仕上げる映画が近頃多いだけに、この映画は注目されるだけのことはある。

 まずストーリーテリングの見事さには、グイグイ引き込まれてしまう。映画は松たか子扮する教師が衝撃の告白をするところから始まる単刀直入な切り出し。次々にえっ?と思える事実を並べ立てるから、ここまで最初に語っておいていいのか?とも思った。ミステリーとしては、もう最初の段階ですべての事実関係は明らかになってしまう。問題はここから先。復讐ヒロインである主人公はその後ほとんど登場せず物語が進行していく。・・・いかにして復讐が達成されるかが見どころか。ここを純粋に楽しめる人ならばこの映画はエンターテイメントとして魅力的だと言えるだろうな。また、ストーリーテリングといえば、犯人である少年Aと少年Bの視点、そしてBの母親の視点も加えられて、不幸な出来事の顛末とその裏にある心情が明らかになっていくところも見事。同じ出来事を違う側面から語るから、古い映画ファンは「羅生門」のようだと感じる方もあるかもしれない。また登場人物のモノローグが延々続く演出に、若い世代は「エヴァンゲリオン」みたいと感じるかもしれない。まぁ何にしても語り口が巧いのは誰しもが認めるところだろう。だからこそ陰惨な物語なのに面白く感じてしまえるんだろう。考えてみれば「嫌われ松子~」だって不幸な物語をエンターテイメントにしていた訳で、中島監督が得意とするところなのかもしれない。

 でもね・・・ここから先は個人の好みの問題だと思うのだ。「今ドキの中学生ってこんな暗い世界に生きているのか?」と久々に映画を観て思った。そして「人生ってもっと楽しいことはいっぱいあるんだ。どうしてこんなことばかりに深みにはまるんだろう?」と悲しく思ったし、僕はそれを思わず口に出てしまった・・・あれ?この台詞前に一度口にしたことがある。同じように映画館の出口で・・・。そう、岩井俊二監督の「リリィシュシュのすべて」を見終わって映画館を出たときだ。僕には「告白」は「リリィシュシュ~」をポップにした映画のように感じられた。「告白」は「リリィシュシュ~」みたいに苦痛な2時間(僕にはそうでした)ではなかったが、救いはないし、全編血まみれだし正直好きじゃない。それに子を持つ親の立場で見れば、復讐に燃える松たか子も、壊れていく我が子をどうにかせねばと悩む木村佳乃も身につまされて、観ていて苦しい。考え過ぎかもしれないが、この映画観て模倣犯が出やせんか・・・とまで思うとますます嫌~な気分になる。これを書いている今でさえ、映画を思い出して居心地の悪さを感じている。よくできている・・・でも好きか嫌いかで言うなら「嫌い!」。僕にとっての中島監督のベストはやっぱり「下妻物語」だな。

映画「告白」劇場予告



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