★YUKAの気ままな有閑日記★

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【本】猫を抱いて象と泳ぐ

2010-06-14 09:07:57 | 本【小説・日本】

       『猫を抱いて象と泳ぐ』       小川洋子       文藝春秋
【comment】
去年、某TV番組に本の評論家さんたちが出演し、本作を大絶賛していたので、是非読んでみたい―と思っていた。

私は、小川さんの本を『博士の愛した数式』と『薬指の標本』くらいしか読んだことはないが、それでも小川さんが独特の世界観をお持ちの作家さんだとは感じている。

この『猫を抱いて象と泳ぐ』も、やはり小川さんならではの世界観があり、そして、全編で壮大な一編の詩でもあるかのように感じた―

  -story-
後に、リトル・アリョーヒンと呼ばれることになる唇に産毛が生えた物静かな少年は、ある日、廃車になったバスでマスターと出会い、チェスを教わることになる。
その後、リトル・アリョーヒンは、運命に導かれて、自動チェス人形の中に身を潜めながらチェスを指すようになるが―


さて、こういう独特の世界観のお話は、それこそ読む者の感性に合うか合わないかで大きく好き・嫌いが分かれてしまうと思う。
私は、正直に言うと、、、“合わない”方に属してしまうかもしれない。

読み始めは、物凄く引きこまれたのだ。
主人公の少年の過酷で寡黙な運命と、彼独自の想像力の世界に荘厳なものすら感じ、時折胸を押さえ、物思いに耽りながら読んだ。
とにかく言葉の一つ一つが美しく、哀しく、とても不思議な味わいがあり、この世界に浸っていることが心地良かった。
口が閉じられた状態で生まれた少年,デパートの屋上の象,壁に挟まれたミイラ,おばあさんの布巾,プールで溺死した男,廃車になったバスに住む、太り過ぎた心優しきマスター,猫のポーン,盤上と盤下で繰り広げられるチェスの調べ、、、
ここで登場する人物や小さなエピソードの数々は、意味をなさないようでいて、全て心にしっくりときて、、、優しいお酒に酔うような感覚でいい時間を過ごせた。

だが、、、途中から、具体的に言えば、リトル・アリョーヒンをチェスの世界に導いてくれたマスターが死んでしまってから以降、少しずつこの世界に浸っているのが苦痛になってしまった。
意味のなさないようなエピソードに全て意味があり、いや、主人公の人生にとって意味があり、一つ一つ繋がっていく様に、「ああ、、、そういうことか、、、」と思いながらも、何故か
寂しくなっていってしまったのだ。

そして、優しいのに残酷で、温かなのにひんやりとして、密やかなのに意固地で、美しいのに仄暗い、、、そういう感覚に囚われて、だんだんと遠巻きに物語を眺めている自分がいた。

思うに、きっと私はリトル・アリョーヒンに幸せになって貰いたかったんだと思う。
幸せの物差しは個人個人によって違うものだから、彼自身は、己の人生を決して不幸とは思っていなかったのだろうが、凡庸な私は、偉大なマスターにも、11歳で成長を止めた小さなリトル・アリョーヒンにも、肩に鳩を乗せたミイラにも、、、手で触れるような温かな幸せを感じて貰いたい思いでいっぱいになってしまった。
彼が口を閉じて生まれてきたこと、唇に脛の皮膚を移植して毛が生えてしまったこと、小さな体を使って人形でチェスをすること、、、それには皆幸せになるための理由があった―って展開の方が好みだったのだ(笑)

だが、私の望むような幸せは、きっとこの本の持つ詩集のような美しさを消してしまうのだろう。
そして、控えめなリトル・アリョーヒンの生き様こそ琴線に触れる方が数多くいらっしゃるのだろう。
                                       (3点) 

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2 Comments

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そーーーなのよ!! (latifa)
2010-06-15 09:02:39
由香さん、こんにちは!
う~~~同じ!
しかも、由香さんは、私がどうしてこの小説が前半好きだったのに、後半はなんだかなぁ・・って思った理由を、端的に示してくれていて、読みながら、そうか!そうだったんだよな。ってシンプルに解ることが出来たわ。

>何故か寂しくなっていってしまったのだ。
>きっと私はリトル・アリョーヒンに幸せになって貰いたかったんだと思う。

これだわよー。
前半を読みながら、きっと後半良い事があるに違いないって信じて疑わなかったのに、なんだか淋しい方向に・・・。
なんだかね、この本の事を今考えると、何故かベンジャミンバトンの事を思い出すんだよな~。
latifaさんへ^-^* (由香)
2010-06-16 12:18:44
こんにちは~♪

やっぱりlatifaさんも同じように感じられたのね~
毎度毎度感想が被りますね、私たち(笑)嬉しいな♪

前半はスゴク好きだったのよ。なかなかないでしょ?こんな世界観の物語って。
だけど、、、どんどん寂しい感じになっていって、、、
登場人物の皆々様に幸せになってもらいたかったなぁ~
えっと・・・庶民的な幸せってヤツに遭遇して欲しかったのよ(笑)
あの最期はあまりにも哀しいもの・・・

ああ・・・ベンジャミンかぁ~なんか分かる。
ベンジャミンは映画館で観た時は満点にしちゃったんだけど、DVDで再見したら、やっぱり寂しい気持ちがしたのよね・・・
何度も観直す映画じゃないかもって思ったりして~

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