Poem&Poem

詩作品

裸の王様

2012年04月01日 13時18分48秒 | My poem


冬のある日
「裸の王様」になりました
場所は 東急大井町線 上野毛駅前
時間は午後二時二十五分

赤いサテンのブルマー
赤いベルベットのマント
金の冠
腰には金の長い剣
家来は黒い犬一匹
重ねて申し上げますが
わたしは依頼された「裸の王様」
我知らずの「裸の王様」とは違います

しかし駅前広場の人々は
このわたしを見て
唖然として
通り過ぎて行きます
子供が「あ!裸の王様だ!」と言います
わたしは
「わたしは自分が裸だと知っている王様です。」
と子供に言い聞かせます

わたしに「裸の王様」を依頼した者たちは
わたしのまわりを走り回って
シャッターを切り
「寒くないですかぁー」などと言います

寒いです
長年の腰痛が悪化しそうです
ようやく終わって
上り電車に乗りました
乗客の視線が集まります
「裸の王様」の振りをするか
自覚している「裸の王様」の振りをしようか
少し迷いました

帰宅すると
長靴を履いた猫がいます
りんごをおいしそうに食べている白雪姫がいます
樵の子供がいます
わたしは
セーターを着てズボンを履いて
靴下を履いて食卓につきました
向かい側に座っているのは
チルチルとミチル
パンの欠片を食べています
わたしの今日の夕食は
王子の目玉焼きとかぼちゃのパイです

眠る前にスワン・ドロップを一粒
眠りの湖に沈むために。

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