イランに入国したその夜は、大変な強風。砂嵐。
翌朝半信半疑だったが、私が一泊したイラン西北部の街、ウルミヤのレストランの駐車場に約束どうりに昨夜国境で会ったアミールが向かえに来てくれた。
昨夜も国境からこの街まで50キロを車で先導してここまで来て、イランに関する様々な情報をくれ、案内し、最後にはこのレストランのオーナーに話しつけて、私がここの駐車場で一泊させてもらえるようにしてくれた。今朝も18分遅れてすまなかった。と言ったのを聞いて大変に驚いた。来ない確立のほうが高いと思っていたのに、、、来たとしてもまぁ、一時間は遅れるやろう。と考えていたのに、、、日本以外の国で20分くらいなら遅れても謝る人などまずいない。彼がまるで日本人みたいなので、驚いた。
彼の祖父の家に私を招いてくれて、そこで朝食をよばれる。立派なお宅。普通用?と貴賓用?の二つの大きな応接間があり、貴賓用には様々な飾り物がある。台所は20畳以上はある大きなもので、その一面はずうっと端から端までカウンター。食器洗い機まであるのにまた驚く。ヨーロッパでは当然だが、イランでお目にかかるとは思わなかった。台所、二つの応接間の各テーブルには生花が生けてある。あまりにも鮮やかな色なので、はじめは造花だと思っていた。
ここはイランか?と思ってしまう。
アミールも、もう91歳というお祖父さんも英語を話す。聞くと彼の娘は、移民でUSAに行きシカゴに住んでいて、今はマレーシア?(だったと思う)のUS大使館で働いているとか。アミールもお祖父さんも何度もUSAに行っているらしい。
次にアミールの両親の家に招かれ、先ほど食べたばかりなのにもう昼食。彼の兄弟も集まり皆で私の旅行の写真アルバムを見る。
次に彼の友人宅へ。男三人女三人。皆25~30歳くらい。ここで驚いたのは、アミールを除く六人がクリスチャンということ。エ~~イランにイラン人でクリスチャンがいるのか?イランの人は皆モスレムだと思っていた。人口7千万人以上というイランで5百万人のクリスチャンがいるという。7%にもなる。
どこで祈るのか?と尋ねると、教会。というあたりまえの答え。へぇ~イランに教会があるのか?ぜひ見てみたい。と言うと、その友人の普通のセダンの車に私を含めて7人が前に3人、後ろに4人のぎゅうぎゅう詰めで出発。
アミールは私を友人のところへと残して親戚のところへと挨拶廻りに出て行った。
その六人の友人に英語の話せる者はいない。しかし、そんなこと今までの経験から問題にはならない。
イランでは本日4月2日までの13日間が正月休み。昨夜私はアミールにもう明日この街を出発する。と言うが、明日は休日最終日で、旅行に出かけた人々がいっせいに帰ってくるので、道はどこも混み、先を争って帰ろうとするので、運転は危険だから出発はあさってにしたほうが良い。と言われて本日一日この街に居ることにした。
七人を乗せた車は、ウルミヤの市街地を抜ける。
その運転のメタメタなことに驚くを通り越して身が固まる。助手席にいて、何度も何度も肝を冷やす。助手席にブレーキがあるわけないのに、何度も右足に力を込める。
街の中心地は混み合っていて渋滞。そこに他車との隙間が5センチあれば車が割り込んで来る。彼もまた同じく割り込む。3センチでもやって来る。何度も当たった。と思った。その渋滞の中を人が道を横切る。大通りでも同じ。飛ぶように走る車のほんのわずかの合間で横断する。切れ間がなくとも同じ。車が来ていてもかまわずに横断する。車もまたそんなこと関係なしに走り去る。人と車との間15センチ。他車を見ていて、あ~当たった。と何度も顔を覆い、何度も何度も肝を冷やす。
バイクは大通りでもかまわず逆走し、渋滞の車を縫うように走る。イランではヘルメットの着用が義務ではないらしく皆ヘルメットなし。テヘランでは毎日毎日20人くらいが交通事故で亡くなるらしい。そのほとんどがバイクとか。
国道の道もまたしかり。どう考えても対向車が来るまでに追い越しが終了しない距離なのに、かまわず追い越しかける。何度も道幅いっぱいに車3台がぎりぎり並ぶ。
追い越される時も車のすぐ脇をすごいスピード差で通って行く。なんでやねん?道幅もっとあるやろ!
しかもどこでもかまわずUターンする。国道で対向車がすっ飛んで来ていても、街中で大渋滞の中でも、おかまいなし。危険きわまりない。
よってどの車も急ブレーキを踏むが、ブレーキランプのまったく点かない車がよくよくある。だいたい20~40年くらい前の車ばかり。(一番新しいのは、5年くらい前のモデルのメルセデス。それはパトカー。)だから、前者との車間距離が少ないと追突しそうになる。しかし、車間距離をとると他車が必ず割り込んで来る。前者が急ブレーキを踏むとこちらも仕方なく踏むが、これまた後続車が隙間もあけずにピッタリとくっついて走っているから急ブレーキを踏むと追突される危険あるので、急ブレーキは出来ない。どうすりゃいいの?
世界79カ国をカリーナと共に走り、運転は確実で、砂漠もジャングルもアイスバーンも泥ヌタ道も走ってきて、怖いところはない。と思っていた。しかし、しかし、イランは怖い。
街中を走るのはおっくうになる。
いかに他車に当てられないように、いかに他車に人に当てないように走るか?である。
すっごい集中して走らねばならない。怖い怖い。ペルーやグアテマラ、ケニアなどもひどかったが、それらとは比べ物にならないくらいのひどさ。
イタリア人の無茶苦茶な運転にいつも頭にきて怒鳴っていたが、ここでは無茶苦茶を通りこしてメタメタ。皆が皆、歩行者もまたメタメタなので、怒っていてもしかたない。
用心運転あるのみ。
ひどすぎて形容する言葉がみつからない。
聞くところによると次の国パキスタンはここよりもひどいとか。。。。怖い怖い。
出発を一日延ばして正解だった。
やはり?教会は街はずれの丘の上にあった。
我々が思い浮かべるような教会の形ではなく、普通の建物。十字架がなければ教会とは判らない。
外出する時には必ずスカーフをしなければならない彼女が、教会の中で手を組みキリストに祈る姿を見て、これまた、ここはイランか?と思う。
その夜は、アミールか、彼の両親か、祖父母かの購入したてで、家具も何もないマンションで一人で寝る。
どうも宗教的、もしくは、習慣、それとも警察のお達し?か何かで私が一家のところで泊まることは問題があるようだ。
翌日また彼がマンションに向かえに来てくれ、やっと開いた銀行へ行き、まずは両替。
銀行にATMの機械はあるが、使えるのはイランのカードのみ。車にガソリンも無かったしイラン通貨はまったく持っていなかったので、どのみち昨日出発は出来なかった。考えると、金もまったくないのに食事にも困らずに一日過ごせてラッキーだった。
知らなかったが、この国の最大札は20000Rial=約240円のお札。
銀行は$150をすべて1万リアル札でくれたので、札が133枚もきた。帯封付の札や。ビックリ。こんなん財布に入らん。どないしよ?アフリカか、旧ソビエトのどこかだったか?でも同じ経験をした。
まったく単純で馬鹿みたいな話だが、たとえ小額の札といえども札束を持つと金持ちになった気になり、気が大きくなりパッパパッパと使ってしまう。
その日の昼食では、いつもはハンバーガーに持ち歩いている水だけなのに、思い切ってコーラもどき(ZamZamとかEramとかいう偽コーラ。しかしこれがうまい。ちなみにちゃんとコカコーラもある。)を付け、ポテトチップスまで買ってしもた。(スケールの小さな話ですみません。)
次に車のオイル交換がしたい。と言って彼にその店へと連れて行ってもらう。
彼が私に、値段は自分が聞くので、君は何も言うな。君が尋ねると高い外国人料金になるから。
と言うので、その通りにする。
イランはすんごい物価安い。
ガソリン1リッター10円、軽油は2円。
しかし、どうも質は悪い。イランに入りカリーナがえらくノッキングするようになった。きっとオクタン価は80~90くらいではないか?と思う。
聞くと、インターネットは1時間8.5円。ハンバーガー5円。安い。ええ国や。
なのにアミールが尋ねたオイル交換代は、整備点検代も含め1万リアル札が10枚と言う。10万?安くはないゾ。むしろ高い。しかし、彼のことを完全に信用していた私は彼に言われるままに金を彼に渡す。その後、もうすべて支払った。私は仕事があるので、とあわただしく去って行った。
どう考えても、10万は高いぞ。と思いオイル交換した兄ちゃんに、このオイルは1ボトル4リッターでいくらか?と尋ねると、8700と言う。
オイル交換は?
オイル3.5リッター使ったので、7600と言う。
何!95円くらいか?何と油の出る国はやっぱり安いなぁ~。とビックリする。
そして、あ~やられたか~。と思う。
アミールに10万(1230円くらい)渡したのに、実際は8000(95円)くらい。9万リアルやられた。
まぁしかし、1100円くらいのこと。まぁええか?しかし、しかし、わからない。
何故にあれほどまでに世話を焼いて、親切にしてくれたあのアミールが、決して金に困っているわけでもない、新車(イラン製)も携帯電話(これは、ヨーロッパはもちろん。トルコでも、イランでも、ボスニアでもほとんどの人が持っている。日本でまだ持ってないのは私くらい?)も持っている彼が、なぜ$10くらいの金をだまし取ったのか?金を巻き上げるなら、今までにもチャンスはあったはず。両替で札束を見て気が変わったのか?
他の銀行で私のクレジットカードが使えるか?尋ねて来るので、カードを貸せ。で渡すとサッサと何処かへ行ってしまった時には、あ~~マズイ!とハラハラしているとちゃんと帰ってきて、このカードはイランでは使えない。と返した。
しかし、しかし、わからない。何故に彼がわずか$10のために、、、、あまりにも人を信用しすぎたか?
その日、タブリスの街まで移動した。
もう午後8時半。とにかくハンバーガー屋に入り夕飯。
そこへと若い兄ちゃん二人が寄って来て、何やら英語で話しかけてくる。適当に相手をしているとそのうちの一人がサラダを取り、ジュースを買い、私に差し出し、どうぞ。と言う。
睡眠薬でもいれたか?私のハンバーガー代まで支払っていた。
その上、私は車を持っているので、この街を案内してあげる。よかったら家へと泊まっていきなさい。と。
よくある怪しい話そのままの筋書き。どう考えても怪しい。
こちらから話かけたのは信用できるが、あちらから私が外国人と見て英語で話かけてくる。なんてのは、よからぬ考えがあってのこと?
よって私は、俺のことはすべて自分で出来るから助けは必要ない。
と冷たくあしらう。もちろんサラダもジュースも手をつけず、ハンバーガー代金も返そうとするが、受け取らない。
店を出る。まだついてくる。
もういいから。と言うと、それなら何か困った時には電話して。
と電話番号を書いて渡してくる。
そんなものいらんわ。と心でつぶやくが、受け取りけつのポケットへと入れる。
翌朝寒かった。最低気温0度。
雨が降る。と車内で寝ながら思っていたら、雪だった。積もっとる。吐く息真っ白。4月というのに、、、、(この3日後、少し山の中で車内泊した時の最低気温はマイナス6度だった。4月というのに信じられん。イランはもっと暑い国のイメージだったのに。)
昨夜のことを考える。
アミールのオイル詐欺事件のこともあり奴らを冷たくあしらったが、もしも、純粋に親切だったのなら、彼らに大変悪いことをした。と思った。
少々人を信じすぎるとこがあったのは確かだが、「人を見ると、盗人と思え」で旅しててもつまらない。何の意味もない。得る物がない。
信じるところから始まる。
たとえそれで痛いめに遭ったとしても、良い薬になった。
としよう。罠かもしれない?承知のうえで昨夜の彼に電話する。
公衆電話を見ていると、100リアルコインで5分くらい話している。安いなぁ。持っているのは500リアルコイン。携帯電話にでも大丈夫やろ。と試すが、何やらペルシャ語でアナウンスが流れ、通話出来ない。わけわからん。すると近くにいた兄ちゃん困っている私に気づき、言葉なんぞ通じないが助けてくれる。
携帯電話へはテレホンカードがいる。
というようなことを言っている。そこで、カードを探す。一緒に探してくれ、キオスクみたいなところで見つける。2万リアルのカード。
たった一回電話するだけなのに高いなぁ。100リアルで5分も電話できるのに、、、別にどうしてもしたい電話でもなし、もうええわ。
とやめようとすると、彼が支払おうとする。NO,NO,NOとことわり、
1万のカードなら買う。
と1万リアル札を出すと、その彼がもう1万出して何やら機械でチャージしたテレホンカードを買ってしまった。
いいのに、、、まぁ、電話後彼にカードを渡せば良いか?
と考え電話もしてもらう。昨夜の彼サイドと例のバーガー屋で待ち合わせする。
電話後手助けしてくれた彼は、キオスクへまた私を連れて行きテレカをキオスクに返す。すると通話した2000リアルを差し引いた18000が返金された。彼に1万返して円満解決。
良いシステムや。
バーガー屋で待つこと10分か15分。食べているうちにサイドは現れた。
なんでそんなに早いねん?怪しい?
ここでバーガー代支払ってサイドに話しを聞いてやっと、謎が解けた。
この後彼の家に招かれ家族と会う。これは信用出来るパターン。
しかし、ヨーロッパなどでは家族ぐるみで騙す手口もあるので完全には信用出来ない。(私は西アフリカのモーリタニアで家族ぐるみで騙されて金を取られたことがある。) しかし、結果から言うと彼のは、まったく純粋な親切であった。
電話して良かった。
彼といろいろ話しをして、彼が英語の専門学校に行っている20歳の学生で、外国人と英語で話しがしたかった。とのこと。
そして、オイル詐欺事件も解決した。
イランの通貨はリアル。$1=8870Rials。
しかし、イランの人々は習慣的に通貨単位にToman、トゥーマンを使っていた。
そんなことまったく知らなかった。誰もトゥーマンとは言わない。
いくらか?尋ねると数字を書いてくるだけ。だから解らなかった。おまけに本日バーガー代払うまで、自分で支払ったことがなかったので解らなかった。そのうえガソリン代のみは支払ったが、これはポンプのメーターがちゃんとリアル単位になっていて、1リッター800リアル(10円)と安いし、お札にもちゃんとリアルと書いてある。その他の物もイランは安いものなのだ。と解釈してしまった。
トゥーマンとは、リアル通貨を一桁切り捨てた単位。つまり1トゥーマン=10リアル。
よって、ハンバーガーは5円ではなくて、50円。インターネットは8.5円ではなく、85円。
オイル交換は7600と書いていたが、それはトゥーマン単位でリアルでは76000となる。整備点検代(ウインドゥウオッシャー液補充とエアクリーナー清掃くらいなこと。こんなこと自分でやっているが、アミールが気を使い、するように言ってくれた。)を含めてオイル屋は1万トゥーマンと彼に言ったのだろう。
知らないこととはいえ、アミールに悪いことした。
しかし、解ってみると、イランそんなには安くないぞ。
オイル交換などヨーロッパの安いところと同じくらい。なんでオイルは高いの?油出すだけで、ガソリンと軽油以外の製油は海外でしているのか?
サイドと彼の昨夜の友人と三人でタブリスの街を回る。彼の車で彼の運転で街を回れてよかった。カリーナで私が運転していたら、何度も車をぶつけられていたのではないか?と思うほどのメッタメッタな運転はこの街も同じ。
夜サイドの友人レザーの家に招かれ、彼の父と話しをする。
彼はイラン-イラク戦争の時、イラクで毒ガス爆弾(確か、マスタードだったか?)で負傷した。しかし、症状が軽かったのか、爆心地より遠かったのか?たいしたことはなかったようだが、今でも寝ていて呼吸困難になることがたびたびあるとか。
私を日本に連れて行ってくれ。日本の病院で治療が受けたい。
と言うので、
日本は医療費がすごく高いよ。と言うと、
心配ない。治療費は国が支払う。とのこと。へぇ~。
以前にもオランダに治療に行ったことがあるそうな。
いろんなこと、また知った。
ヨーロッパの人が普通(私は冷たい。と思うけど。)なら、ギリシャ人は親切(スペイン、イギリス、フランスの人も親切。)で、トルコ人はとても親切。
すると、イラン人は親切すぎる?
車の運転さえまともならば、居心地の良い国です。
4月13日
イラン北部、カスピ海に近い街-ラシットより、山崎達矢
翌朝半信半疑だったが、私が一泊したイラン西北部の街、ウルミヤのレストランの駐車場に約束どうりに昨夜国境で会ったアミールが向かえに来てくれた。
昨夜も国境からこの街まで50キロを車で先導してここまで来て、イランに関する様々な情報をくれ、案内し、最後にはこのレストランのオーナーに話しつけて、私がここの駐車場で一泊させてもらえるようにしてくれた。今朝も18分遅れてすまなかった。と言ったのを聞いて大変に驚いた。来ない確立のほうが高いと思っていたのに、、、来たとしてもまぁ、一時間は遅れるやろう。と考えていたのに、、、日本以外の国で20分くらいなら遅れても謝る人などまずいない。彼がまるで日本人みたいなので、驚いた。
彼の祖父の家に私を招いてくれて、そこで朝食をよばれる。立派なお宅。普通用?と貴賓用?の二つの大きな応接間があり、貴賓用には様々な飾り物がある。台所は20畳以上はある大きなもので、その一面はずうっと端から端までカウンター。食器洗い機まであるのにまた驚く。ヨーロッパでは当然だが、イランでお目にかかるとは思わなかった。台所、二つの応接間の各テーブルには生花が生けてある。あまりにも鮮やかな色なので、はじめは造花だと思っていた。
ここはイランか?と思ってしまう。
アミールも、もう91歳というお祖父さんも英語を話す。聞くと彼の娘は、移民でUSAに行きシカゴに住んでいて、今はマレーシア?(だったと思う)のUS大使館で働いているとか。アミールもお祖父さんも何度もUSAに行っているらしい。
次にアミールの両親の家に招かれ、先ほど食べたばかりなのにもう昼食。彼の兄弟も集まり皆で私の旅行の写真アルバムを見る。
次に彼の友人宅へ。男三人女三人。皆25~30歳くらい。ここで驚いたのは、アミールを除く六人がクリスチャンということ。エ~~イランにイラン人でクリスチャンがいるのか?イランの人は皆モスレムだと思っていた。人口7千万人以上というイランで5百万人のクリスチャンがいるという。7%にもなる。
どこで祈るのか?と尋ねると、教会。というあたりまえの答え。へぇ~イランに教会があるのか?ぜひ見てみたい。と言うと、その友人の普通のセダンの車に私を含めて7人が前に3人、後ろに4人のぎゅうぎゅう詰めで出発。
アミールは私を友人のところへと残して親戚のところへと挨拶廻りに出て行った。
その六人の友人に英語の話せる者はいない。しかし、そんなこと今までの経験から問題にはならない。
イランでは本日4月2日までの13日間が正月休み。昨夜私はアミールにもう明日この街を出発する。と言うが、明日は休日最終日で、旅行に出かけた人々がいっせいに帰ってくるので、道はどこも混み、先を争って帰ろうとするので、運転は危険だから出発はあさってにしたほうが良い。と言われて本日一日この街に居ることにした。
七人を乗せた車は、ウルミヤの市街地を抜ける。
その運転のメタメタなことに驚くを通り越して身が固まる。助手席にいて、何度も何度も肝を冷やす。助手席にブレーキがあるわけないのに、何度も右足に力を込める。
街の中心地は混み合っていて渋滞。そこに他車との隙間が5センチあれば車が割り込んで来る。彼もまた同じく割り込む。3センチでもやって来る。何度も当たった。と思った。その渋滞の中を人が道を横切る。大通りでも同じ。飛ぶように走る車のほんのわずかの合間で横断する。切れ間がなくとも同じ。車が来ていてもかまわずに横断する。車もまたそんなこと関係なしに走り去る。人と車との間15センチ。他車を見ていて、あ~当たった。と何度も顔を覆い、何度も何度も肝を冷やす。
バイクは大通りでもかまわず逆走し、渋滞の車を縫うように走る。イランではヘルメットの着用が義務ではないらしく皆ヘルメットなし。テヘランでは毎日毎日20人くらいが交通事故で亡くなるらしい。そのほとんどがバイクとか。
国道の道もまたしかり。どう考えても対向車が来るまでに追い越しが終了しない距離なのに、かまわず追い越しかける。何度も道幅いっぱいに車3台がぎりぎり並ぶ。
追い越される時も車のすぐ脇をすごいスピード差で通って行く。なんでやねん?道幅もっとあるやろ!
しかもどこでもかまわずUターンする。国道で対向車がすっ飛んで来ていても、街中で大渋滞の中でも、おかまいなし。危険きわまりない。
よってどの車も急ブレーキを踏むが、ブレーキランプのまったく点かない車がよくよくある。だいたい20~40年くらい前の車ばかり。(一番新しいのは、5年くらい前のモデルのメルセデス。それはパトカー。)だから、前者との車間距離が少ないと追突しそうになる。しかし、車間距離をとると他車が必ず割り込んで来る。前者が急ブレーキを踏むとこちらも仕方なく踏むが、これまた後続車が隙間もあけずにピッタリとくっついて走っているから急ブレーキを踏むと追突される危険あるので、急ブレーキは出来ない。どうすりゃいいの?
世界79カ国をカリーナと共に走り、運転は確実で、砂漠もジャングルもアイスバーンも泥ヌタ道も走ってきて、怖いところはない。と思っていた。しかし、しかし、イランは怖い。
街中を走るのはおっくうになる。
いかに他車に当てられないように、いかに他車に人に当てないように走るか?である。
すっごい集中して走らねばならない。怖い怖い。ペルーやグアテマラ、ケニアなどもひどかったが、それらとは比べ物にならないくらいのひどさ。
イタリア人の無茶苦茶な運転にいつも頭にきて怒鳴っていたが、ここでは無茶苦茶を通りこしてメタメタ。皆が皆、歩行者もまたメタメタなので、怒っていてもしかたない。
用心運転あるのみ。
ひどすぎて形容する言葉がみつからない。
聞くところによると次の国パキスタンはここよりもひどいとか。。。。怖い怖い。
出発を一日延ばして正解だった。
やはり?教会は街はずれの丘の上にあった。
我々が思い浮かべるような教会の形ではなく、普通の建物。十字架がなければ教会とは判らない。
外出する時には必ずスカーフをしなければならない彼女が、教会の中で手を組みキリストに祈る姿を見て、これまた、ここはイランか?と思う。
その夜は、アミールか、彼の両親か、祖父母かの購入したてで、家具も何もないマンションで一人で寝る。
どうも宗教的、もしくは、習慣、それとも警察のお達し?か何かで私が一家のところで泊まることは問題があるようだ。
翌日また彼がマンションに向かえに来てくれ、やっと開いた銀行へ行き、まずは両替。
銀行にATMの機械はあるが、使えるのはイランのカードのみ。車にガソリンも無かったしイラン通貨はまったく持っていなかったので、どのみち昨日出発は出来なかった。考えると、金もまったくないのに食事にも困らずに一日過ごせてラッキーだった。
知らなかったが、この国の最大札は20000Rial=約240円のお札。
銀行は$150をすべて1万リアル札でくれたので、札が133枚もきた。帯封付の札や。ビックリ。こんなん財布に入らん。どないしよ?アフリカか、旧ソビエトのどこかだったか?でも同じ経験をした。
まったく単純で馬鹿みたいな話だが、たとえ小額の札といえども札束を持つと金持ちになった気になり、気が大きくなりパッパパッパと使ってしまう。
その日の昼食では、いつもはハンバーガーに持ち歩いている水だけなのに、思い切ってコーラもどき(ZamZamとかEramとかいう偽コーラ。しかしこれがうまい。ちなみにちゃんとコカコーラもある。)を付け、ポテトチップスまで買ってしもた。(スケールの小さな話ですみません。)
次に車のオイル交換がしたい。と言って彼にその店へと連れて行ってもらう。
彼が私に、値段は自分が聞くので、君は何も言うな。君が尋ねると高い外国人料金になるから。
と言うので、その通りにする。
イランはすんごい物価安い。
ガソリン1リッター10円、軽油は2円。
しかし、どうも質は悪い。イランに入りカリーナがえらくノッキングするようになった。きっとオクタン価は80~90くらいではないか?と思う。
聞くと、インターネットは1時間8.5円。ハンバーガー5円。安い。ええ国や。
なのにアミールが尋ねたオイル交換代は、整備点検代も含め1万リアル札が10枚と言う。10万?安くはないゾ。むしろ高い。しかし、彼のことを完全に信用していた私は彼に言われるままに金を彼に渡す。その後、もうすべて支払った。私は仕事があるので、とあわただしく去って行った。
どう考えても、10万は高いぞ。と思いオイル交換した兄ちゃんに、このオイルは1ボトル4リッターでいくらか?と尋ねると、8700と言う。
オイル交換は?
オイル3.5リッター使ったので、7600と言う。
何!95円くらいか?何と油の出る国はやっぱり安いなぁ~。とビックリする。
そして、あ~やられたか~。と思う。
アミールに10万(1230円くらい)渡したのに、実際は8000(95円)くらい。9万リアルやられた。
まぁしかし、1100円くらいのこと。まぁええか?しかし、しかし、わからない。
何故にあれほどまでに世話を焼いて、親切にしてくれたあのアミールが、決して金に困っているわけでもない、新車(イラン製)も携帯電話(これは、ヨーロッパはもちろん。トルコでも、イランでも、ボスニアでもほとんどの人が持っている。日本でまだ持ってないのは私くらい?)も持っている彼が、なぜ$10くらいの金をだまし取ったのか?金を巻き上げるなら、今までにもチャンスはあったはず。両替で札束を見て気が変わったのか?
他の銀行で私のクレジットカードが使えるか?尋ねて来るので、カードを貸せ。で渡すとサッサと何処かへ行ってしまった時には、あ~~マズイ!とハラハラしているとちゃんと帰ってきて、このカードはイランでは使えない。と返した。
しかし、しかし、わからない。何故に彼がわずか$10のために、、、、あまりにも人を信用しすぎたか?
その日、タブリスの街まで移動した。
もう午後8時半。とにかくハンバーガー屋に入り夕飯。
そこへと若い兄ちゃん二人が寄って来て、何やら英語で話しかけてくる。適当に相手をしているとそのうちの一人がサラダを取り、ジュースを買い、私に差し出し、どうぞ。と言う。
睡眠薬でもいれたか?私のハンバーガー代まで支払っていた。
その上、私は車を持っているので、この街を案内してあげる。よかったら家へと泊まっていきなさい。と。
よくある怪しい話そのままの筋書き。どう考えても怪しい。
こちらから話かけたのは信用できるが、あちらから私が外国人と見て英語で話かけてくる。なんてのは、よからぬ考えがあってのこと?
よって私は、俺のことはすべて自分で出来るから助けは必要ない。
と冷たくあしらう。もちろんサラダもジュースも手をつけず、ハンバーガー代金も返そうとするが、受け取らない。
店を出る。まだついてくる。
もういいから。と言うと、それなら何か困った時には電話して。
と電話番号を書いて渡してくる。
そんなものいらんわ。と心でつぶやくが、受け取りけつのポケットへと入れる。
翌朝寒かった。最低気温0度。
雨が降る。と車内で寝ながら思っていたら、雪だった。積もっとる。吐く息真っ白。4月というのに、、、、(この3日後、少し山の中で車内泊した時の最低気温はマイナス6度だった。4月というのに信じられん。イランはもっと暑い国のイメージだったのに。)
昨夜のことを考える。
アミールのオイル詐欺事件のこともあり奴らを冷たくあしらったが、もしも、純粋に親切だったのなら、彼らに大変悪いことをした。と思った。
少々人を信じすぎるとこがあったのは確かだが、「人を見ると、盗人と思え」で旅しててもつまらない。何の意味もない。得る物がない。
信じるところから始まる。
たとえそれで痛いめに遭ったとしても、良い薬になった。
としよう。罠かもしれない?承知のうえで昨夜の彼に電話する。
公衆電話を見ていると、100リアルコインで5分くらい話している。安いなぁ。持っているのは500リアルコイン。携帯電話にでも大丈夫やろ。と試すが、何やらペルシャ語でアナウンスが流れ、通話出来ない。わけわからん。すると近くにいた兄ちゃん困っている私に気づき、言葉なんぞ通じないが助けてくれる。
携帯電話へはテレホンカードがいる。
というようなことを言っている。そこで、カードを探す。一緒に探してくれ、キオスクみたいなところで見つける。2万リアルのカード。
たった一回電話するだけなのに高いなぁ。100リアルで5分も電話できるのに、、、別にどうしてもしたい電話でもなし、もうええわ。
とやめようとすると、彼が支払おうとする。NO,NO,NOとことわり、
1万のカードなら買う。
と1万リアル札を出すと、その彼がもう1万出して何やら機械でチャージしたテレホンカードを買ってしまった。
いいのに、、、まぁ、電話後彼にカードを渡せば良いか?
と考え電話もしてもらう。昨夜の彼サイドと例のバーガー屋で待ち合わせする。
電話後手助けしてくれた彼は、キオスクへまた私を連れて行きテレカをキオスクに返す。すると通話した2000リアルを差し引いた18000が返金された。彼に1万返して円満解決。
良いシステムや。
バーガー屋で待つこと10分か15分。食べているうちにサイドは現れた。
なんでそんなに早いねん?怪しい?
ここでバーガー代支払ってサイドに話しを聞いてやっと、謎が解けた。
この後彼の家に招かれ家族と会う。これは信用出来るパターン。
しかし、ヨーロッパなどでは家族ぐるみで騙す手口もあるので完全には信用出来ない。(私は西アフリカのモーリタニアで家族ぐるみで騙されて金を取られたことがある。) しかし、結果から言うと彼のは、まったく純粋な親切であった。
電話して良かった。
彼といろいろ話しをして、彼が英語の専門学校に行っている20歳の学生で、外国人と英語で話しがしたかった。とのこと。
そして、オイル詐欺事件も解決した。
イランの通貨はリアル。$1=8870Rials。
しかし、イランの人々は習慣的に通貨単位にToman、トゥーマンを使っていた。
そんなことまったく知らなかった。誰もトゥーマンとは言わない。
いくらか?尋ねると数字を書いてくるだけ。だから解らなかった。おまけに本日バーガー代払うまで、自分で支払ったことがなかったので解らなかった。そのうえガソリン代のみは支払ったが、これはポンプのメーターがちゃんとリアル単位になっていて、1リッター800リアル(10円)と安いし、お札にもちゃんとリアルと書いてある。その他の物もイランは安いものなのだ。と解釈してしまった。
トゥーマンとは、リアル通貨を一桁切り捨てた単位。つまり1トゥーマン=10リアル。
よって、ハンバーガーは5円ではなくて、50円。インターネットは8.5円ではなく、85円。
オイル交換は7600と書いていたが、それはトゥーマン単位でリアルでは76000となる。整備点検代(ウインドゥウオッシャー液補充とエアクリーナー清掃くらいなこと。こんなこと自分でやっているが、アミールが気を使い、するように言ってくれた。)を含めてオイル屋は1万トゥーマンと彼に言ったのだろう。
知らないこととはいえ、アミールに悪いことした。
しかし、解ってみると、イランそんなには安くないぞ。
オイル交換などヨーロッパの安いところと同じくらい。なんでオイルは高いの?油出すだけで、ガソリンと軽油以外の製油は海外でしているのか?
サイドと彼の昨夜の友人と三人でタブリスの街を回る。彼の車で彼の運転で街を回れてよかった。カリーナで私が運転していたら、何度も車をぶつけられていたのではないか?と思うほどのメッタメッタな運転はこの街も同じ。
夜サイドの友人レザーの家に招かれ、彼の父と話しをする。
彼はイラン-イラク戦争の時、イラクで毒ガス爆弾(確か、マスタードだったか?)で負傷した。しかし、症状が軽かったのか、爆心地より遠かったのか?たいしたことはなかったようだが、今でも寝ていて呼吸困難になることがたびたびあるとか。
私を日本に連れて行ってくれ。日本の病院で治療が受けたい。
と言うので、
日本は医療費がすごく高いよ。と言うと、
心配ない。治療費は国が支払う。とのこと。へぇ~。
以前にもオランダに治療に行ったことがあるそうな。
いろんなこと、また知った。
ヨーロッパの人が普通(私は冷たい。と思うけど。)なら、ギリシャ人は親切(スペイン、イギリス、フランスの人も親切。)で、トルコ人はとても親切。
すると、イラン人は親切すぎる?
車の運転さえまともならば、居心地の良い国です。
4月13日
イラン北部、カスピ海に近い街-ラシットより、山崎達矢