我が家の愛読紙(何時もボロクソに言っているが)琉球新報朝刊一面の下段のコラム欄の下辺りに書籍の広告が良く載る。
1コマ当たりのスペースが縦長なので書籍のタイトルも縦に表示してある。
昨日の広告にあった、「ビーチパーリィ」(勿論縦表示)という本のタイトルを見ておや?と思った人もいただろう。
一瞬「ビー・チパーリィ」と読んでしまったがサブタイトルの「やんばるのキャンプ・海水浴・潮干狩りの穴場」を見てレジャー案内書だと分った。(フィッシング沖縄社刊)
「ビーチパーリィ」は勿論「ビーチパーティー」の事。
沖縄が日本復帰する前、米人が教えた海岸のレジャーで発音もそのまま受け継いだ。 同じような例でアイスワラ(アイスウォーター)等がある。
ところでウチナンチュなら「ビーチパーティー」といえば鉄板と木炭を海岸に持ち込んでビーフ、野菜等を鉄板で焼く「バーベキューパーティ」を連想する。
テレビを見ていて、これはウチナンチュだけの思い込みで他県の人は「ビーチパーティー」と「バーベキューパーティー」とは必ずしも一致しないことを知らされた。
◇
二年前,タモリの「笑っていいとも」に沖縄出身のお笑いコンビ「ガレージセール」が次のようなゲームをしていた。
ゲストが5人ほど並んで座り、ある言葉を出題される。
それに言葉をつなげて良くある言葉を作るという嗜好。
お題は「ビーチ」で、これのつく言葉をゲスト次々言った。
コンビの1人(川田)が「ビーチ・パーティー」と言った時、居合わせたゲスト全員からブーイングが出た。
「エー? そんな言葉は無~い!」
彼らは皆揃って「ビーチ・パーティー」という言葉を知らなかった。
他のゲストの答えは確か、「ビーチサンダル」とか「ビーチパラソル」のような言葉だったと記憶する。
なるほどウチナンチュにとっては当たり前の「ビーチパーティー」も、ヤマトンチュにとっては、
「何でわざわざ、ビーチでパーティーするの?」
ということになる。
海浜でわざわざ宴会というイメージか。
ガレッジセールの二人が懸命にバーベキュー等を例に出して説明しても誰も「ビーチ・パーティ」のイメージは理解できないようだった。
ウチナーンチュのイメージでは砂浜でバーベキューをしながら飲んだり食ったりでどんちゃん騒ぎというイメージだろう。
バーベキューとは普通鉄串に刺したピーマン、玉ねぎ、ソーセージであり、間に牛肉が挟まっているもの。
このバーべキューパーティのイメージが湧かないらしい。
しかもこのパーティは必ずしもビーチとは結び付かない。
戦後、牛肉を自由に食べだしたのはそんなに昔のことではない。
国内畜産業を守る高関税の為、牛肉は贅沢品であり庶民には高値の華だった。
ステーキやハンバーグを食べる機会は年に数回もなかった。
復帰前の沖縄では輸入肉が安くで手に入った。
有名な「ジャッキー」を初めとする安い大衆ステーキハウスが当時の観光客の目玉だった。
冷凍にしたステーキ肉は知る人ぞ知る沖縄土産であった。
ウチナーンチュは気軽にゴムぞうりを引っ掛けたニーセー達が昼食にステーキを食べ,時にはAランチを奮発した。
当然のようにビーチに行く時はバーベキューが付き物だった。
バーベキューとは云っても鉄板焼きの分厚いビーフステーキだ。
ビーチパーティではそれを一人で何枚も食べた。
◇
東京の新橋はオジサン達の悲しい溜まり場である。
かつてステーキやすき焼きには手の出ないオジサン達が牛肉の香りを求めて新橋名物「牛丼」に群がった。
アメリカのステーキ肉から削り取った脂身と余分な部分の「端肉」を利用した牛ドンはオジサマ族の圧倒的支持を得た。
牛丼は廃物利用のシロモノである。
値段の安いのが売り物だ。
しかし日本人独特の凝り性で味にも工夫がされた。
玉ねぎと醤油、砂糖の独特のブレンドはやがて若者の嗜好を捕らえた。
やがて居酒屋と同じく牛ドン屋も若者達がオジサン族の憩いの場所を奪い取っていった。
復帰前、一時沖縄でも牛丼屋が数軒開業したことがある。
当時の価格ではステーキと牛丼の価格はほとんど変わらなかった。
1年も経たずに牛丼屋は全滅した。
ステーキハウスと端肉の牛丼屋の価格が同じでは勝負は最初から見えていた。
テレビ番組で「ビーチパーティー」がブーイングされるのを見て、
「ビーチパーティー」は、アメリカが残した沖縄独特の習慣だと悟った。
そう、「ビーチパーリィ」はウチナービケーン。
蛇足1:「ニーセー」 ⇒ 二歳⇒ 青二歳⇒ 青年
蛇足2:Aランチ⇒A、B、Cの各ランチセットの中で最上級のランチ(とんかつ、ハンバーグ、チキンフライにステーキまで付いている場合も有った)
蛇足3:ウチナービケーン⇒ 沖縄ばかり ⇒沖縄独特
蛇足4:ビーチパーティーを楽しむ http://www.tai-ga.co.jp/johositu/kanko/source/umi/beachjyoho1.html