沖縄市のコミュニティーFMから反基地運動をおとしめ、人種差別的と受け止められる発言が流されている。事実に基づかないものであり、看過できない。

 「オキラジ」で、毎週月曜日に放送されている「沖縄防衛情報局」である。

 約1時間の番組で、政治活動家ら3人が出演する。

 番組の基調をなすのは毎回、冒頭に読み上げられる次のような言葉である。

 「反戦平和運動はそのほとんどが偽物であり革命運動をカムフラージュするもの」。その目的は「沖縄県に中国や北朝鮮のような左翼独裁共産主義体制を打ち立てることにある」

 何を根拠にこのような主張をするのだろうか。

 スイスの国連欧州本部で6月に開かれた沖縄の基地反対運動を巡るシンポジウムに出席した弁護士や新聞記者を名指しして、「ほとんど工作員そのもの」(7月17日放送)と発言している。工作員とは具体的に何を意味しているのだろうか。

 排外主義的な発言も多い。「どうして朝鮮人や中国人は平気でうそをつくのか、ルールを平気で破るのか」(7月31日放送)と人種差別的な発言をし、「彼らは、(日本が)朝鮮半島を植民地にしたといいがかりをつけているが、全くのうそっぱち」(同日放送)と歴史的事実を曲げる。「シュワブゲート前の妨害活動。その中には朝鮮人がいっぱいいる」(9月18日放送)と言うが、本当に現場で確認したのだろうか。

 沖縄の内部から「沖縄ヘイト」というべき言説が公共の電波を使って流される。憂慮すべき事態だ。

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 放送法4条は「報道は事実をまげないですること」をうたっている。

 同法9条では事実でないことを放送したと訴えがあった場合には、放送局は調査した上で、真実でないと判明したときは訂正または取り消しの放送をしなければならないと規定している。

 訴えがなくても放送局が真実でない内容とわかったときにも同様の措置をとらなければならない。

 事実に基づく報道は、放送局と放送人にとっての責務である。と同時に、最も大切にしなければならない倫理だ。

 それは地上波であっても、コミュニティー放送であっても、変わりはない。

 オキラジを運営する沖縄ラジオは取材に対し「番組内容については出演者に聞いてほしい」と回答している。

 免許を受けた放送局としての自覚に欠け、社会的な責務を放棄しているというしかない。

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 根拠も示さず、言いたい放題の主張を放送し、それについて説明責任を果たさない。

 これではデマと変わりがないというべきであり、公共の電波を使用する放送局と放送人にとってあるまじき行為である。

 沖縄ラジオには、自律的に、放送局に設置が義務付けられている第三者による番組審議機関に放送内容の検証を諮問し、その結果を公表することを求めたい。