狼魔人日記

沖縄在住の沖縄県民の視点で綴る政治、経済、歴史、文化、随想、提言、創作等。 何でも思いついた事を記録する。

●「軍命」は究極の言い訳! 将校を追い返した分校長

2008-06-16 07:23:01 | ★集団自決

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■住民も加害者だった■

沖縄タイムスを中心にした「軍命あり派」の主張が控訴審第一回の直前になって、当然路線変更をした。

「日本軍は加害者、住民は被害者」というこれまでの主張が一転して「住民の加害性の分析」が必要だと言い出したのだ。(宮城晴美氏⇒沖縄タイムス 2008年5月25日)

日本軍が加害者で、住民は全面的に被害者である、という神話が崩壊した瞬間である。

もう一つ当日記が疑問を呈してきたものの一つに

「日本軍と住民の力関係」がある。

戦時中である当時の社会情勢からいって軍が住民に対して、あるゆる面で圧倒的に優位な力関係にあっただろう、という事には当日記も異論は無い。

近く控訴審が開かれる「集団自決裁判」では軍の命令、或いは強制の有無が大きな争点だという事はいうまでもない。

だが、百歩譲って、仮に軍の命令があったとしても、それだけの理由で、愛する家族や親しい知人の命を奪うほど、圧倒的且拒否できないほどの優位性が日本軍にあったか、というと疑問が生じてくる。

 

■将校と分校長■

渡嘉敷島に隣接し、行政区域としては渡嘉敷村に属する前島の分校長比嘉義清氏と「鬼の赤松」が派遣した将校とのやり取りにが記録されている。

ここにも「自決を命令する」ほどの圧倒的な軍命の優位性を見る事は出来ない。

★前島⇒http://www.knt-oka.co.jp/sanpo/maejima.htm

『沖縄戦を考える』の著者大城将保(嶋 津与志)氏は同書の中で、日本軍がいた所では「集団自決」があった、という実例として次の例を挙げる。

だが、これは皮肉にも軍命がそれほど住民に対し圧倒的、且不可避的に優位ではなかったことの証明となっている。

前島にも赤松隊の将校がやってきて一個小隊の部隊を駐屯させるべく陣地づくりをはじめようとしたことがあった。 これに対し、島の指導者である分校長の比嘉義清氏が頑強に反対してとうとう部隊の駐屯を中止させた。 そのおかげで前島では渡嘉敷のような悲劇は起こらずに済んだ。≫(『沖縄戦を考える』(228-229頁)

自分の可愛い子供や愛する親兄弟を殺さねばならほど圧倒的で不可避的だったとされる軍の命令。

それを下したとされる「鬼の赤松」の命を受けているのなら、前島に駐屯すべく陣地作りに励む軍の行動に住民は逆らうことは出来ないと考えるのが自然だろう。

だが、上記引用文の通り、分校長の反対を受け、すごすご退散する渡嘉敷部隊の将校。

そこには愛する親族を殺さねばならぬほどの厳格な「軍の命令」など存在しなかったことが分かる。

何より親兄弟や他人の命を「軍命により」奪ったと主張し続ける金城重明氏は、「軍命」で親兄弟を殺傷した後、赤松部隊の陣地で薬の手当てなどをしてもらい数日間過ごしている。

「集団自決」が軍の命令だとしたら、生き延びた金城氏は「鬼の赤松」に、「軍命違反」として処刑されていたはずだ。

破綻してしまった「軍命派」の屁理屈を必死で支持した深見裁判長の論理判断力を改めて疑ってしまう。

これまで、住民に対する「軍の命令」は避けることの出来ない絶対的なものとされ、例え親兄弟といえども殺傷せねばならぬほど不可避なものと喧伝されてきた。

だが、ここに見る前島の比嘉義清分校長の例では駐屯地の構築という、軍としての最重要任務さえ住民によって拒否されているではないか。

 

■日本軍のいない濠の「集団自決」■

大城将保(嶋 津与志)氏が軍のいないところでは「集団自決」は起こらなかった例として、前島の「将校vs分校長」のエピソードを自著で紹介した。

だがこの例は図らずも、軍隊が住民に対して圧倒的な(自決を強制できるような)強制力は必ずしも持っていなかったことの証明になった。

■むしろ、軍隊はいた方が良かった■

「軍命あり派」の論者は、軍のいないところには「集団自決」はなかったと主張するが、軍隊のいない住民だけの濠で「集団自決」が起きた例に読谷村の「チビチリガマ」がある。

読谷村の年寄りに戦時中の話を聞くと、話がチビチリガマに及んでくると決まって口が重くなってくる。

親戚・縁者がチビチリガマの「集団自決」に拘わっていると、話すのが辛いという。

そしてこんな話も聞いた。

「チビチリガマの『集団自決』の生き残りにとって、むしろ軍隊はいてくれた方が良かった」。

軍がいなくては「軍の命令で止むを得なかった」という究極の言い訳を使えないからだという。

そして、援護法の話になると、こんな話も聞いた。

「戦前から目が悪かった子供も(軍による損傷として)援護金をもらっている」

■「軍命令」はあった方が八方丸く納まった■

この「軍命=究極の言い訳説」に対して、

家永裁判の証人になった『裁かれた沖縄戦』の編者安仁屋政昭は次のように註記している。

《「どうして、あの人が生きていて、自分の家族が死んでいったのだ」という疑問に対して生き残った人たちは島の戦争の状況を語ったのである。「自決命令が出た」という説明をしたからといって、復員兵たちは、少しも慰められはしなかった。むしろ、怒りを覚えたのである。「自決命令が出たのだというのであれば、少し慰められたのだ」という認識は曽野綾子氏の勝手な想像である。島の人たちは自己弁護のためにありもしない「自決命令」をデッチあげたと言わんばかりである。》

安仁屋氏はムキになって曽野氏に反論しているが、状況を冷静に判断すれば、安仁屋氏の反論よりも

曽野氏の「自決命令が出たのだというのであれば、少し慰められたのだ」という説の方が人間の心理として素直に理解できる。

「集団自決」の体験者たちが復員兵たちに家族の「集団自決」について語ることの辛さをこ考慮すれば、避けることの出来ない「軍の命令」が必要だった。

そう、我が子や肉親を手にかけてしまった生存者の「究極の言い訳」には、梅澤、赤松両隊長には気の毒だが、「軍の命令」が必要不可欠だったのだ。

「何故、あの人が生きていて、自分の家族が死んだのか」と戦後再会した親族に問い詰められたとき、生き残った人たちはにどのような弁解の言葉を見出しえたか。

親族に難詰された時、自決命令がなければ、「集団自決」の説明が付かない。

自決命令の有無を問題にするのなら、軍が自決命令を出したと責任を負わせて説明するのが最も説得力があったことは否めない。

 

 

銃を構える日本兵を、あごで指図する「参謀長」と異名を取る民間人・山城教頭の例は前に述べた。

煩をいとわずもう一度再現してみるとこうなる。

座間味島の語り部・宮城恒彦氏の著書『潮だまりの魚たち』の中に「教頭先生は参謀長」と題する次のようなくだりがある。

≪飲み水を求めて日本軍の参謀本部になっていた友人の家の水場に、証言者がそれとは知らず水を汲みに行ったときの様子を次のように記している。ー引用者≫

「誰だ!何しに来た」

突然、陰から怒鳴られました。 びっくりして、立ちすくんでいるトメの前に、1人の日本兵が銃剣を突きつけるようにして歩み寄って来ました。

「何の用で来たか」

「水を汲みに来ました」

「参謀長の許可がなければ駄目だ

「子供たちが飢えて、壕の中で水を待っているのです」

「駄目だ」

(略)

二人のやり取りの声を聞いてか、家の奥の方から軍服で身を固めた男の人が出てきました。

「何事だ!」

兵隊に声をかけながら近寄ってきました

「先生!」

トメはその人に飛びついていきました。 村の学校の教頭先生だったのです。

「なんだ、トメか、どうした」

「水を汲みにきたのです」

「必要な分はいくらでも持って行きなさい」

(略) 

入り口に銃を右手に支えて立っていた日本兵は、さっきとはうって変わって、トメが門を出る時、声をかけてくれました。 

「最後まで頑張ってください。 必ず友軍が助けにきますから

(『潮だまりの魚たち』宮城恒彦著)
  
■軍人より軍人らしい民間人■

軍服で身を固め、「参謀長」と日本兵にも呼ばれる民間人。

それまで村人に強圧的だった日本兵も、この人物の鶴の一声で人が変わったように態度を軟化させる。

そして、軍人以上に軍人らしく軍服で身をかためた民間人の正体は、教頭先生だった。

これまで考えられていた「軍国主義的・軍人VS怯える民間人」といった構図が崩れ去るような場面である。

「参謀長」と呼ばれた教頭先生は、銃剣を構えた日本兵より「権力」を持っていたのだ。

「参謀長」と呼ばれた民間人★座間味で何があったのか

日本兵が拒否した飲料水の採取も民間人の教頭が許可している。

「軍の命令で愛する親兄弟を殺した。そして軍命は避けようがなかった」・・・

という軍命説はここでも破綻している。

■曽野綾子氏を評価していた大城将保氏■

あるときは沖縄戦史研究家、またあるときは沖縄戦をテーマを主題にする作家(嶋 津予志)という二束の草鞋を履く大城将保氏は、現在では「軍命あり派」に属している。

だが曽野綾子著『ある神話の背景』が出版された当時は、曽野氏の労作に対して、今では考えられないような評価を与えていた。

この大城将保氏という、沖縄戦史研究家、

二つの顔を使い分けるので非常に分かり難い。

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