新旧の沖縄戦研究を網羅した県史「各論編6 沖縄戦」の刊行記念シンポジウム「『沖縄戦』を語る」(主催・県教育委員会)が28日、県立博物館・美術館で開かれた。執筆に関わった研究者が登壇し、「沖縄戦研究の集大成」と評価の高い新県史の活用方法や、研究課題について意見を交わした。

沖縄戦研究の展望などについて報告するパネリストら=28日、那覇市の県立美術館・博物館

 沖縄戦の県史発刊は1974年発行の「沖縄戦記録2」以来、43年ぶり。旧県史は沖縄戦を体験した住民や、戦地・地域で中核を担った責任者の証言を掲載し、それまで軍事作戦中心の研究から「住民視点」に転換する契機になった。

 新県史は、戦争体験者が減少する中、日米の基礎資料や各市町村史の証言記録を収集。「障がい者」「戦争トラウマ」「ハンセン病」など近年の研究成果も取り上げ、5部17章72節という多方面で沖縄戦を記録した。

 基調講演で、県史沖縄戦専門部会の部会長を務めた吉浜忍沖国大教授は「体験者が減る中、沖縄戦関連本は現在も発行を続ける。沖縄の社会問題の根幹には沖縄戦があり、現在進行形の課題だ」と指摘した。

 部会委員の林博史関東学院大教授は「若手や本土出身研究者が労作を生みだした。体験者の聞き取りは最後のチャンス。組織的に集め、証言を共有する仕組みづくりが必要」と訴えた。

 パネルディスカッションでは中堅・若手の研究者4人が登壇し、「秘密戦」「日本軍慰安所」「戦時撃沈船舶」など、近年明らかになった分野を発表した。

 来場者を交えた総括討論では、新県史の活用について議論を交わし、パネリストらは「平和教育の教材づくりに役立てて」「新県史を参考に、各市町村の戦史を更新してほしい」などと要望した。

 新県史はB5判で全824ページ。1500部を発刊し一般向けは完売した。