K馬日記

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マシュー・ハイネマン『カルテル・ランド』

2016年10月13日 | 映画
「〇〇の秋」という言い回しがありますが、仕事柄「展示会の秋」なただけーまです。今週は東京ビッグサイトと幕張メッセをハシゴしてます。

マシュー・ハイネマン監督の『カルテル・ランド』を鑑賞したので今更ですが投稿します。



<Story>
メキシコ・ミチョアカン州。麻薬カルテル“テンプル騎士団”による抗争や犯罪が横行するこの地では、一般市民を巻き込んだ殺戮が繰り返されていた。政府は腐敗しきり、警察も当てにならない。そんな過酷な状況に耐え兼ねた医師のドクター・ホセ・ミレレスは、ついに銃を手に市民たちと自警団を結成する。(オフィシャルサイトより)


「悲惨さ」をテーマにした作品は数多くあれど、嘗て現実の社会問題を扱った作品でこれほどまでに恐ろしい映画があったでしょうか。
製作に『ハート・ロッカー』のキャスリン・ビグローが入っていることもあって、自身が脅かされかねない真の恐怖(テラー)が深く伝わってくる作品です。権力と悪の肥大化が相関関係にあることが見事に描かれていました。

麻薬カルテルが支配するミチョアカン州。勇敢な町医者ミレレスが自警団を組織して立ち上がり、支配層のカルテルを駆逐していく物語…であれば、痛快な英雄譚として気持ち良く鑑賞ができるでしょう。しかし、最終的にはカルテルを駆逐した自警団は悪に乗っ取られ(悪の心が目覚め)、新たなカルテルとして再び街を支配してしまいます。
所謂、漫画などで胸アツ展開とされる「闇堕ち」が実際に起きている社会なのです。


自警団を組織した町医者のミレレス

同地では、出生に恵まれない民衆が手取り早く稼げるのが麻薬カルテル。真っ当な稼ぎ方をすることのできる社会であれば、彼らも闇堕ちせずには済んだのかもしれません。そう思うと、人の心に巣食う悪を描写しているようでありながら、同時に悪の心の露出を誘発するこの社会構造をも批難しているようです。


麻薬カルテルとの抗争で犠牲になった民衆たち

闇堕ちした自警団はその背後に政府という強力な後ろ盾を得て、更にその力を強めていきます。結局、自警団を組織した真の義心を持つ町医者のミレレスが、仲間に裏切られて政府に収容されるという結末を辿ります。

そして衝撃的なのがラストシーン。冒頭で麻薬を製造しているシーンとほぼ同様のシーンが流されます。冒頭は自警団が駆逐する前の麻薬カルテルが麻薬を製造しているシーン、ラストは悪に堕ちた自警団が麻薬を製造しているシーンなのです。最後に真の意味を以て提示される「麻薬製造」の凄まじさと言ったら筆舌に尽くせません。


深夜に麻薬製造を行うカルテルの集団

「正義は揺らいでも、悪は揺らがない」このキャッチコピーは何も大げさなものではなく、この映画が現実として捉えているのです。ラストカット、監獄から監視カメラを見つめるミレレスの視線(実写シーン)、それこそが私たちの義心に訴えかけているようです。
『カルテル・ランド』は素晴らしい題名。悪は何度でも蘇り、決して潰えない。
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