荻上直子監督「彼らが本気で編むときは、」を見る。
11歳の小学生トモが、
母親の失踪をきっかけに、叔父と住むことになるのだけど、
その叔父のパートナーがトランスジェンダー、
つまり体は男で、心は女という人だったという物語。
映画はあくまで淡々と進む。
トモがトランスジェンダーの人と住んでいることで、
学校でいじめに遭ったり、
同級生の男の子が同性愛だったりして、
いくつかのLGBT的なドラマはあるのだけど、
基本的には普通のホームドラマで、
カメラは登場人物にさほど寄ることなく、
かといって遠くから見つめる感じでもない、
絶妙の距離感で、この疑似家族を見つめていく。
辛いことも悲しいことも、
そして楽しいことも、すべて等価に扱おうという
作り手の意志が感じられるというか。
タイトルの「編む」は、
文字通り、疑似家族の3人が編み物をするのだけど、
新しい家族が編み上げられていく様子とシンクロして、
見たあとの清々しさは、なかなか感じられるものではない。
荻上監督の映画は「かもめ食堂」ぐらいしか見てないのだけど、
優しい映画を撮る人だなあと、旧作も機会を作って見たいところ。