この人生、基本的に低空飛行なので、
ちょっとぐらいの不幸では、動じないのだけど、
中央線に乗っていて、忘れ物をしてしまったのには参った。
けっこうお気に入りのトートバッグを
電車の網棚に乗せたまま降りてしまったのだ。
バッグの中身は、これまたお気に入りの弁当箱と
あと、本が一冊。
その本は、いっちょう勉強しようと思って買った
3千円超えの心理学の本で、読み始めたばかりだったのに。
JRの忘れ物センターに何度か電話して、
検索してもらっているけど、全然出てこない。
どうなっとるんじゃ、あん?
と悪態をつくけれど、出てこないものは仕方ない。
人間、あきらめが肝心だと言うし、
やるせないなあと。まるで成瀬巳喜男の映画に出てくる
高峰秀子みたいな気分になってきた。
デコちゃんになったと思ったら、これまでの人生で
いろんなことをあきらめてきたなあと走馬燈が。
成瀬監督の傑作「乱れる」のデコちゃんです。
義弟の加山雄三との禁断の恋に揺れる未亡人が、
最後の最後に見せるやるせなさと絶望、
そして、そんな自分をどこか笑ってしまうような乾いたところ。
忘れ物をした自分は、まさにこんな感じで呆けてしまったのです。