新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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opinion@zav.att.ne.jp(関西福祉大学 勝田吉彰研究室)

日印オープンスカイ報道。これはデカいターニングポイントかも

2017-09-16 22:36:37 | 渡航医学関連

当直明けの昨日、「北の飛翔体」Jアラートで一日が始まりましたが、おなじぐらい気になった報道がこれ。「インドからの飛翔体」(航空機)が今後爆発的に増えて「感染症の流入ルート」も大幅に整備されてしまうかもという話。

モディ・安倍両首相がにこやかに握手しているのは、「日印オープンスカイ」、航空自由化です。このニュース、渡航医学的にも要チェックです。これまで日印間のフライトには厳しく制限がかかっていました。たとえばバンコクやクアラルンプールまで片道9900円!とかのポップアップ広告がパソコンに表示される方も当ブログの読者には多いかもしれませんが(これはLCC、エアアジアXの広告)、インド行き航空券が超激安9900円という話は聞いたことがないでしょう。

ソースによれば「日本は成田、関西、那覇の3空港、インドはデリー、ムンバイの両空港にしか相手国からの航空便乗り入れができず、便数も週42便ずつに制限されていた。 今回の合意により日本は羽田を除く全空港、インドはコルカタ、チェンナイ、ベンガルール、ハイデラバードを加えた6空港で乗り入れと便数の制限が撤廃される。航空会社が各空港の発着枠の範囲内で路線や便数を自由に決められるようになり、格安航空会社(LCC)を含めた新規路線就航が見込まれる(コピペ)」ということになります。

9900円というのは極端としても、LCCのセールを狙えばインド―日本間が1万円台で行き来できることになれば、これまで来れなかった/行けなかった階層まで含め激増する往来とともに「国境を越える感染症」の通り道がガン!と拡大されることになります。昨年の関空麻疹騒動のときも、管理人はTVで解説する際に関空発着のLCCがいかに増えているかボードにのせてもらいましたが、インドネシアどころじゃない、インド庶民層がどっとやって来るようになれば、あるいは日本の若者たちがどっとインドに出かけてゆくようになったらどうなるか・・・

思い出すのは昨年2016年正月の出来事。管理人の正月は例年、鹿児島県薩摩郡の、医局同期が院長やってる病院での当直が恒例です。2016年はそれが地区輪番当番にあたり、半日だけですがプライマリケアに。そこにやってきたのが30代前半のお兄さん。いわく、「年末にインドに一人旅で行ってきた。昨晩から下痢が止まらない。インドではガンジス河で沐浴してきた。食べたのは・・・」 潜伏期から考えられるものを説明差し上げて、新年の書初めならぬ「診療情報提供書初め」にて感染症指定病院へ送ったのはいうまでもありません。(こんな所で正月から渡航外来するかよ)

現在すでに、「ガンジス河で沐浴してきて、症状のある日本人」が、正月に、鹿児島県の山奥の(たまたま休日輪番当番日に当たった)精神科病院の外来に現れるという事象が起こっています

そういう事が、これからますます、全国津々浦々で起こるようになるのではないか、NDM1が、赤痢が、季節はずれのH1N1が、あるいは、地元のヒトスジシマカと協働してデングがチクングニヤがジカが・・・

むしろインバウンドのインド庶民よりも、ガンジス河にじゃぶじゃぶ入ってしまうような日本人の方が、医療過疎地まで来る可能性がある点で怖いのではないかという気もします。

この報道が載った日、報道で一番大きなスペースを占めていたのは「北の国からの飛翔体」でしたが、管理人的には「インドからの飛翔体(LCC)」の方が気になったりしてました。

10年後、インド発〇〇病(今まだ存在しない新興感染症?)案件で日本全国パニック起きてたら「私は10年前から想定内でした。2017年9月14日のこれがターニングポイントです」とか、したり顔でコメントしてやろう(笑)

 

 ソースは産経http://www.sankeibiz.jp/macro/news/170914/mca1709142126012-n1.htm


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