天路歴程

日々、思うこと、感じたことを詩に表現していきたいと思っています。
なにか感じていただけるとうれしいです。

熱帯

2017-07-23 20:49:24 | ショート ショート
熱がまだ冷めやらぬというように、彼は私を抱いている。

私は、彼の熱と汗に嫌悪していた。彼に背を向けて、横たわる。彼は私の首筋に唇をつけた。

私は、黙って目をつぶる。

彼の鼓動が正常に戻るまで。彼の気持ちが平静に戻るまで。

身じろぎもせず、やりすごす。

彼が悪いわけではない。

自分の心の隙間を、ただ彼の動きで埋めようとしたのだ。

本能が受け入れないことを、なぜ私は、無理矢理受け入れてしまったのだろう。

心の虚無を体の猛威で、なんとかしようと企てたのだが。

自分の自信のなさを、リトマス紙のように、彼で測ってみたからといって、何になるというのだろう。

魅力という魔法が、まだ使えるとわかったのは、新たな発見だった。

あまり、罪悪感は感じない。

私は、彼を試したが、彼は、私を抱いたのだから。

どっちもどっち。

同じ穴の狢だ。

彼の呼吸がゆったりとしてきた。

私はゆっくりと目を開ける。

天井のしみをぼんやりと見る。

彼がそっと、私の耳をはむ。

体は熱いのに、鳥肌がたつ。

虚しさばかりが、広がる。

夏の夜だ。


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