活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

本の時間 著者インタビュー「実測!ニッポンの地域力」藻谷浩介氏

2007-11-27 23:10:57 | 活字の海(新聞記事編)
プレジデント 2007.12.3号より  文:伊藤 晋


職場の定期購読雑誌に、本誌が今月より加わったことを受けて、
先日の東京日帰り出張の供に持ち出して読んだ際に目に留まったコラム。
#ちなみに、このときの出張では、ライオン銀座七丁目に行く時間は
取れなかった…

冒頭から出る氏の辛口な批評が、小気味よい。

曰く、最近は安易に数字的な裏づけもなく、感性のみで物事を
判断する傾向が強まっている、と。

その実例として、国内の自動車販売台数の減少傾向に関する
昨今の論調が、若者の車離れに代表される消費者嗜好の変化と
いった心理学に解を求めるような風潮を槍玉に挙げる。

氏としては、

 ・日本では、既に自動車の保有台数が国民1人につき一台近く
  となっていること
  ※ これは、自動車検査登録情報協会のHP
    からも確認することが出来た。

 ・自動車の主たる購買層である20代~50代の人口が、
  この5年で2百万人ほど減少していること
  ※ こちらについても、国立社会保障・人口問題研究所のHP上で、
    若干レンジは異なるが、生産年齢人口の推移で確認出来る。

等から、十分に自動車販売台数の説明はつけられる、としている。

実際に、軽自動車を除く、いわゆる登録者の販売台数の推移は、
社団法人 日本自動車販売協会連合会(通称自販連)のHPにて確認
することが出来るが、この10年で前年比で販売台数が向上して
いるのは、2001年と2003年の2回だけであり、後は逓減
傾向にあることが見て取れる。


こうした事象に対して、勿論自動車メーカーも手をこまねいている
訳ではなく、例えば利益率の高い高級車ラインナップの展開
(トヨタ レクサスシリーズ、日産 インフィニティシリーズ等 
※ただし日産は検討段階)や、40代以降をターゲットにした
スポーツ車の展開(日産 GT-R等)を進めてきている。

こうした動きも、一度じっくり分析してみたいが、今は本筋から
離れるのでここまでとしておこう。


そうした主張を行う氏は、また年間400回にも及ぶ講演活動を
行っている。
※ 年間400回といえば、一日に複数回しないと追いつかない。
  余談だが、氏は銀行員なのだが、本業は大丈夫なのだろうか?
  と、要らぬ心配をしてしまう。
  
その中での、氏の主な主張は以下の二つ。

 ・物事は”実数”で判断すること。
  ⇒割り算した瞬間から、数字は本来の意味から乖離してしまう。
   特に、○○指数となると、計算した人の主観の塊となる。

 ・物事は、演繹でなく帰納で考えること。
  ⇒事実の山の中から真実を見つけ出す、臨床経済学の勧め。


確かに、世に蔓延る社会調査の結果等は、施行者の質問の設定や、
回答の表示方法一つでどうとでもニュアンスを変えられてしまう。

※ このあたりは、『「社会調査」のウソ リサーチ・リテラシーの
  すすめ』谷岡一郎 文春新書 に詳しい。

ただ、本来指数というものは、物事の本質の理解を助けるための
ものの筈。
アンケートにしても、質問や回答のパターンを絞ることで、回答者の
意図のレベルを合わせて、質問対象の実態の把握を容易にするための
ものだ。

※ ちなみに、アンケートが英語でないということは、今回初めて
  知った。浅学、恥じ入るばかりである。

結局、道具は使われ方次第でどうとでもなるという、
言わば「いいも悪いもリモコン次第」という鉄人28号で示された
テーゼが再確認された、ということだと思う。

とはいえ、便利な道具=それを提供した人のバイアスが少なからず
かかってしまうことは間違いないので、氏の提唱したいことは、
二次、三次データとしての指数等のみを鵜呑みにせず、必ず実数に
当たって物事の真実の姿を自分の目で見極めよう、ということなのだ
と思う。

これは、演繹と帰納についても同様である。
ただ、事実の積み重ねから結論を導き出す帰納に対して、
演繹は前提の設定等を誤ると結論が収集のつかない方向に流れていく
恐れがあるため、演繹のみに頼った判断は危険だ、ということを氏は
提唱したいのだと思う。

#無論、帰納が完全無欠な訳も無く、そもそも扱う数字を取り違えると、
 結論はとっちらかってしまうことは、言うまでもない。


残念ながら、まだ本書自体を未読(どころか未入手)のため、
それらの思考法を持って、現状の日本の地域をどのように分析している
のかは不明だが、とても気になるところだ。

地域の崩壊と東京への一極集中が叫ばれて久しいが、それが果たして
事実なのか?

実は地域はしたたかに多様化して、No.1ではなくOnly1になることで
生き残るような進路を見つけ出したのか?

それら地域の総体としての日本力は、どうなると氏は見ているのか?

これらを数値データに基づいて、どのように解釈してみせてくれるのか、
今から読むのが楽しみである。


実測!ニッポンの地域力
藻谷 浩介
日本経済新聞出版社

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2 コメント

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トラックバックを承認いただきありがとうございました (島村由花)
2009-02-22 21:20:55
このたびは「ventus~風のごとく~」のトラックバックを承認いただきありがとうございました。
当ブログは、記事に関連のあることを書かれた、より専門性の高いブログにトラックバックを送り、承認いただいた場合は、月末の「アクセス解析コラム」にて、来訪者の皆様に、ご紹介することにしております。
今月は2月24日更新予定。「本、書評、新聞記事など、目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉を選んで書かれたコラム集」というような形のご紹介をしようと思うのですが、いかがでしょうか。
もし、「このようにご紹介いただきたい」というご希望がおありでしたら、お手数ですが2月23日中にventus_1@hotmail.co.jpまで、ご連絡いただけるとありがたいのですが。
今後とも「ventus~風のごとく~」をよろしくお願いいたします。
こちらこそ、ご来訪ありがとうございます (MOLTA)
2009-02-22 23:12:01
ご紹介、喜んでお受けします。

「より専門性の高い」のところに、内心忸怩たる思いはありますが(笑)、その形容詞に恥じないような内容目指して、更にがんばっていきたいと思っています。

その意味で、よい励みとなりました。

ありがとうございました。
こちらこそ、よろしくお願いいたします。

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さて、この本の著者は日本政策投資銀行地域振興部参事役。 首都圏と地方の関係を「経済」ではなく「人口動態」で読み解いたのが、この本。