乙川優三郎著、横浜カセット文庫刊
生きて行く途上で振り返って思い惑うことは、誰しも経験する事だと思います。本作の主人公、高村喜蔵は、軽輩の家に生まれ、立身を願っていました。そこに、身分の低い足軽の娘が女中として雇われます。この娘の素直さ直向きさに、やがて喜蔵は惹かれて行きます。しかし、結果的に娘を捨て、身分が上の家から嫁を迎え、運にも恵まれ立身して行きます。
やがて子供も生まれ、自足した家庭を築きますが、妻や子供達と何とも心が通じない。妻もそのことに気付いて心を痛めていいる様子。やがて妻は病を得て亡くなりますが、跡取り息子は、喜蔵に原因があるとなじる。こうした、人生の終盤で、自らの来し方を振り返り、若い日に捨てた娘に対する哀惜の念と悔悟に沈み込んで行きます。しかし、乙川作品は、最後に淡い救いがあります。山本周五郎さんの作品「墨丸」を下敷きにしている感がありますが、乙川さんならではの情感と余韻があります。
評価は4です。
生きて行く途上で振り返って思い惑うことは、誰しも経験する事だと思います。本作の主人公、高村喜蔵は、軽輩の家に生まれ、立身を願っていました。そこに、身分の低い足軽の娘が女中として雇われます。この娘の素直さ直向きさに、やがて喜蔵は惹かれて行きます。しかし、結果的に娘を捨て、身分が上の家から嫁を迎え、運にも恵まれ立身して行きます。
やがて子供も生まれ、自足した家庭を築きますが、妻や子供達と何とも心が通じない。妻もそのことに気付いて心を痛めていいる様子。やがて妻は病を得て亡くなりますが、跡取り息子は、喜蔵に原因があるとなじる。こうした、人生の終盤で、自らの来し方を振り返り、若い日に捨てた娘に対する哀惜の念と悔悟に沈み込んで行きます。しかし、乙川作品は、最後に淡い救いがあります。山本周五郎さんの作品「墨丸」を下敷きにしている感がありますが、乙川さんならではの情感と余韻があります。
評価は4です。