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この日本語、英語でなんていうの?その奥に深い文化の違いが見えてきませんか。

用意と準備の違い

2010年09月13日 | 言葉
 マレーシアの本屋さんで面白い本を見つけました。
BASIC JAPANESE VOCABULARYという本で、英語で書かれた日本語の解説本です。
特に日本語の中でも、似たような単語や紛らわしい単語、使い分けに迷う単語などを集めて、使い方の違いを解説しています。

 日本人が無意識に使い分けている単語も、外国人にとっては同じように感じるものがたくさんあります。
そんな単語のニュアンスの違いを解説しているため、普段はあまりその違いを意識していない日本人が、「日本語を発見」するのにも役立つ一冊です。

 例えば「用意」と「準備」という単語。
これは二つとも英語に訳すと、preparationなんですね。
辞書を引いた外国人が、「なるほどpreparationを言いたい時には、用意か準備かどちらかの日本語を使えばいいんだ」と思うでしょう。
大筋間違いではありません。確かにほとんど同じ意味の単語です。
しかし、日本人は非常によく似たこの二つの単語を微妙なニュアンスの差で使い分けています。
 例えば、「母は夕食の準備をしている。」という例文。
この場合は、準備と用意は入れ替え可能です。
「母は夕食の用意をしている。」という日本語も自然です。
「遠足の準備をする。」
「遠足の用意をする。」
これもどちらも自然な文章です。

 しかし、これはどうでしょうか。
「太郎君は、大学入試のための準備をしている。」
「心の準備ができている。」
この場合は、「太郎君は、大学入試のための用意をしている」「心の用意ができている」とは言いませんね。
同じような意味なのに、入れ替え可能な場合とそうでない場合がある。不思議です。
我々は確かに、自然に「準備」と「用意」を使い分けているのに、解説はできない。

 そんなところを解説しているのがこの本です。本にはこう書かれていました。

用意and 準備 can also be distinguished according to the ‘visibility’ of the outcome.

 なるほど。結果が目に見えるものの場合は、準備でも用意でもいいが、目に見えないものの場合は、「用意」は使わない、というわけです。
言われてみれば、夕食の料理や遠足の用意(リュックサックの中身など)は、目に見えるものです。心の準備は目に見えません。
太郎君の入試だって、単語を覚えたり、読解力をつけたりするのが「準備」なのであって、目に見えません。もしここで「用意」という言葉を使うと、鉛筆や消しゴムを準備する太郎君の姿が頭に浮かびます。
 言われれば納得、なのですが、あまりにも自然に使い分けてしまっているため、説明ができないのです。

 考えてみれば、日本人が英語について勉強する時も同じですよね。
 これは過去形がいいのか、現在完了がいいのか、なんて、ネイティブは意識せずに使い分けています。が、母語に現在完了という概念がない私たち日本人は、理屈でそれを理解しないことには使い分けができないわけです。
 逆に、「これは現在完了でしょ?」とネイティブに聞くと、「現在完了って何?」と聞き返されることがあります。自然に使いこなせる言葉に理屈は不要なのです。
 母語と外国語。その差は大きいようです。

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面白かったゼイ (銀砂館)
2019-11-27 06:35:00
アメーバブログの銀砂館とユーもの蛇

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