川柳の仲間 旬のブログ

長野県伊那市を中心にした川柳の仲間です。ややガラパゴス気味。

「旬」206号ひとり句評会(その3)

2016-09-18 05:59:16 | 川柳鑑賞
「旬」207号も出たというのに、まだ206号の句評ですよ。
ささやかな時間旅行と思って、お付き合い下さい。

  音質を変えたいために風邪をひく  柳本々々

 連作十句中、あえて一番目立たない句を選んでみました。
 目立たない、というか「普通の」川柳に見えますよね。(「かっこいいカフカ走る走る走る」「ああこれはかわいい僧侶うれしくて」などに比べれば)。
 でもこれ、普通の川柳じゃないんです。
 まず「音質」。
 「声質」じゃないんですね。
 肉体から出た「声」ではなく、無機質な波長としての「音」。
 ではこれは、肉体性を拒んだ句なのか、というとそうでもない。
 「風邪をひく」という言葉はストレートです。手垢の付いた表現といってもいい。
 しかし、作者はあえて手垢の付いた言葉を選択しました。
 それは、手垢の付いた言葉であるだけ、作り方によっては無限の器になると承知しているからでしょう。
 誰もが書く言葉は、誰にでも伝わる。
 それはつまり、その言葉の核を、誰もが気に留めないということでもあります。
 だから、その言葉をぐにゃりと歪めることが有効なのです。
 人びとは〈その言葉〉を了解したつもりでいるし、そうであるからどんな読み方も可能になる。
 それが、無限の器ということです。
 そしてこの器をいかに歪めていくか、世界と反世界の架け橋にしていくかということが、〈詩〉に課せられた宿業であると思うのです。
 人と同じような発想を、人と同じように表現して、そのうまさを評価するのも、ゲームとしてはありでしょう。
 それはそれで尊重します。
 ただ私は、そんなゲームはつまらないと思うだけです。
 話が脱線しました。
 掲句、「声質」ではなくて「音質」であることに注目しました。
 「音質」であることによって、「変えたいために風邪をひく」が、詩として、異貌を見せるのです。
 それは、肉体性をいちどカギカッコに入れることで、新たな肉体の表現を手に入れようとする試みなのです。
 「音質」という言葉の選択によって、また「風邪をひく」という選択によって、この句は肉体を〈詩〉にまで持って行っているのです。
 それは「変えたいために」という〈選択〉を表現しているからかもしれません。
 いずれにせよ、柳本々々句と肉体性というのは、もっと人が注目して良い視点だと思います。
 いつだって、次回が楽しみです。
(大祐)
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2 コメント

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大祐さま (竹内美千代)
2016-09-21 17:06:19
大祐さん、この句評は良かったです!えっ?わたしにもよくわかった、という点で(笑) この私、ご承知の様に、どの句についても、何とか鑑賞させてもらえた、と思ったら、ヤッタヤッタと小躍りするレベルの人間ですから、々々さんの句の中では好きな句の一つなんです。

声質でなくて音質であるところに注目されたところから始まる大祐評。私の脳ミソから1m位離れたところに有るモノを、グイグイと手繰り寄せ、グイグイと分析解説してくださいました。なるほどなるほど、そうですね、そうですね、と100%教科書です。

そのうち、私に時間と能力が備わった暁には、もう少し中身のあるコメントが書きたいと思います。今は観客席からの拍手だけでごめんなさい。

次回も楽しみにしています。
>美千代さま (大祐)
2016-09-22 06:00:23
コメントありがとうございます。
足りない脳細胞を絞り出して書いているので、褒められると単純に喜んでしまいますよ?(笑)
美千代さんがこうしてコメントを下さることで、ブログが盛り上がっていると思います。
これからもよろしくお願いします。

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