鹿の庵

鹿の書いた小説の置き場所です。
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第23話 姫様の献身

2009年10月31日 19時45分52秒 | オリジナル
<今話は一部に性描写を含みます。18歳未満の閲覧はご遠慮下さい>

>>ヒスイ:side<<

 戴冠式翌日の朝、私は恋人として彼を起こせる事に浮かれていた。どのように起こせば彼が心地良い目覚めを迎えられるか、いろいろと大胆な起こし方も想像はしたけれど、結局は普通に起こす事になった。

 それと言うのも何時の間にか吸い寄せられ、ベッドに上り込み彼の寝顔を覗き込むように見詰めている時点で、もう十分に大胆な行動を取っていると気が付いてしまったからだ。

 この状況は布団の中に引き込まれて、その……どのような事をされても文句は言えない。元より彼が望むならば全てを捧げる覚悟とは言え、これ以上の行動は、ねだっているようで……はしたな過ぎる。

 そんな煩悶も彼を起こすべく声をかけ始めれば消え去り、自然と発せられた穏やかな声は、自分でさえも初めて聞く声音だ。こんな風に新しい自分を発見す機会も多くて、彼と出会ってからの日々はとても楽しい。

 寝ぼけ眼の彼と微笑を交わすだけで、今日が良き日だと確信できる。

 彼が私の髪を優しく梳いてくれたのも、嬉しくて……心地良くて……声を出さないように我慢したぐらいだ。そして彼は髪色の序列を意識させない純粋な言葉で、お母様譲りの髪を褒めてくれた。

 目覚めてからほんの数分で私を幸せにしてくれる彼に、されて嫌な事なんて何も思い浮かばない。彼に望まれた次の瞬間、それは私自身の望みになっているのではないだろうか、尽くしたくて堪らなくなる。

 彼の情熱的な視線を唇に感じると、まるで視線に熱が有るかのように唇が暖かくなり、彼に唇を捧げたくて、私が口付けをしたくて……自然と瞼が下りるのを感じて、肩を掴まれると身も心も任せたくなる。

 唯一の不満は、頭が真っ白になってしまい感触を覚えられない事だ。

 それも目覚めの口付けとして毎朝して貰えるのならば、何度でも新鮮な気持ちで口付けを交わせるから逆に得している。その上に言葉でも好意を示され胸がいっぱいになった。

 朝のお世話をするのも楽しくて、もっと沢山のお世話がしたいかも……。




 これほど早くに、お茶会の時間を取り戻せたのも彼のお蔭だ。

 秘匿の必要性が有り、対外戦争は国王の専権事項とは言え、形式的な評議会も開かずに宣戦を布告したので、ある程度はごねられるのも覚悟していたのだけれど、青狼顕現の影響力は絶大だった。

 貴族達が信仰に厚い訳ではなくとも、神意に逆らったと見做された結果は想像できているようなので、ちまちまと会談して宥めすかし脅しすかしするよりも、今は教主としての立場を強調する方が効果的だ。

 つまり朝夕と大神殿に篭る事こそが、強力な牽制にして威圧になる。

 私がシセーで督戦する事も発表したので、停戦(実質降伏)派から見れば戦死するか捕虜になれば新王を立てれば良し、敗走すれば責任追求して譲位を迫れば良しで、結果を待てば労せずして望みは叶う。

 要害での防衛戦とは言え、最小の兵力で最強の敵であるイベリス軍と戦うのだから、普通に考えれば勝ち目はない。つまり勝手に自滅すると思わせて置けば、敢てリスクの高い直接的な行動は取らないものだ。

 早々に帝国へ義理を果たさせる為、教会関係者を匿う機会も与えた。

 その程度の自己保全行為なら見逃すが、直接行動に出られると一門ごと粛清せざるを得ない。そうなると派閥にも偏りが生じ過ぎるし有為な人材も減るので、潰せる自信が有っても何もさせないのが最上になる。

 むしろ戦争派が私のシセー行きを思い留まらそうと煩いが、勝算を教える訳にも行かないので少々困る。あまり守護神の加護を連呼するのも馬鹿みたいだが、それだけが自信の源だと思わせて置くには有効だ。

 隔離区画を臨時の大神殿に定めたのは、彼と一緒に居る時間を多く取る為ではあるけれど、青狼を召喚した彼の座す場所こそが最も相応しいとの思いも有る。理念的にも実質的にも、彼の居場所が最も青狼に近い。

 そして帝国に宣戦布告した事を彼に明かした。召喚直後に帝国の圧政ではなくイベリスの侵略を持ち出したのは、彼の戦力評価次第では帝国への宣戦を取り止め、対イベリス戦に絞る可能性も有ったからだ。

 他にも彼の性格等によっては、帝国への宣戦布告を隠してイベリスの攻勢のみを伝え、シゼーの防衛だけをして貰う選択肢も考えていた。我ながら身勝手極まりない皮算用だと思う。

 そんな私に、あの言葉は、嬉しくて……申し訳なくて……幸せで……。

 彼に強いている負担が少しでも軽くなるのならば、私の身も心も魂も全て捧げ尽くしたいと想う。その一方で震える彼を抱きしめることに、浅ましくも耐え難い悦びを感じてしまっていた。

 私は蒼眼の持ち主では有っても、聖女とは程遠いのだろう。彼に自身を望んで欲しい気持ちをまるで押さえられておらず、用向きを問わない来訪を誘ったのも、夜這いへの期待がなかったと言えば嘘になる。

 深夜であろうと護衛には、決して彼を妨げないように命じて置いた。






 可能な限り注意を払い衛生体勢を整えているとは言え、世界単位で環境が変われば健康を害する危険性は高いので、彼には私みたいな素人の見立てだけではなく、侍医による本格的な診断を受けて貰いたい。

 そして二重召喚に拠る急激な魔力増加の影響も未知数で、どんな影響が起こっても不思議はない。今日まで提案しなかったのは己が身を任せるに等しい診療行為は、信頼関係がなければ成り立たないからだ。

 彼が承知の上で診察を受け入れ、信頼を示してくれたのも嬉しかった。

 政務中も結果が気掛かりで仕方なかったが、アンの報告で重篤な症状は発見されなかったと聞いて安心した。あまりの嬉しさに浮かれテーブルを小さい物にしたりと、浅知恵で彼に迷惑を掛けてしまった。

 しかし、彼が私の我侭を優しく包み込んでくれたお蔭で、とても素敵な夕食を共に出来た。その後の私はみっともないほど有頂天になっており、彼の部屋に誘われた時も、あらぬ期待を懐いていた。

 ……彼の悩みを聞いた後は、無思慮だった己の振る舞いを悔いるばかりだけれど、こんな私を一生お傍に置くとまで言って貰えたのだから、今は彼の苦しみを軽くする事だけを考えたい。

 そんな決意も激しく口付けを求められる悦びに流され、私自身の望みとして奉仕したくて堪らなくなってしまった。彼が手淫を望んでくれなかったとしたら、淫らな言葉で誘っていたかも知れない……。

 とても苦しそうに熱く硬くなっている彼の性器を見ていると、いかに我慢を強いていたか実感させられる。早く楽にしてさし上げたくて必死で奉仕したので、気持ちよかったと言って貰えた時は心から安堵した。

 初めて見る子種は不思議な感触と匂いだったけれど、彼が心地良くなってくれた証だと思うと暖かくて愛しい。さらに彼が奉仕の指示をしてくれたのも嬉しかった。もっと沢山の事を要求して欲しくなる。

 しかし、彼に身を任せ抱かれるのならともかく、閨の作法を確認もせずに本格的な奉仕をするのは危険だ。性的な禁忌を侵してしまえば千年の恋も冷めると言うので、続きは私の部屋でと切り出す事にした。

 彼に残念がられるのは辛いけれど、万が一にも嫌われたくない……。

 提案は受け入れられ情事の後片付けをする事になったけれど、彼の子種をタオルで拭き取ってしまう事に躊躇を感じる。そうして私がもたもたしている間に、彼は自分で掃除を終えていた。

 お掃除してさし上げたかったのに残念だ。次の機会は逃したくない。




 彼と十分後の再会を約して自室に戻って来た。本とタオル等の準備はリタに任せて、私は《青白のドレス》を剥ぎ取るように脱いで、引越しの際に持って来させた、薄絹のナイトドレスに着替える。

 この手のドレス類は衣装部屋から、彼の為だけに取り出させて置いた。

 時間ギリギリに準備は整い、彼の心情を慮ればリタと鉢合わせさせる訳にはいかないので、申し訳ないけれどリタには中庭側の扉から出て貰う。そうして私はベッドの中心に座り彼を迎え入れた。

 彼の為の姿を彼に褒められるのは嬉しくて仕方がない。彼から放たれる熱い視線からしてお世辞でもないようだ。その後は羞恥に耐えながら本の説明をし、閨の作法に相違点が無いか確認して貰う。

 問題なしと保障して貰えたので、安心して彼へ奉仕が出来る……。

 二度目の奉仕という事もあって、張り切って服を脱がせてさし上げるところから挑戦したのだけれど、苦しそうな性器を早く開放してあげたいと思うほどに、気持ちばかりが焦って上手くいかなかった。

 ようやく脱がす事に成功した時に彼の性器が頬に当たった。私は嫌悪を感じるどころかあまりに苦しそうだったので、口で慰めてさし上げた方が良いのか悩むぐらいなのだけれど、彼は申し訳なさそうな顔をしている。

 彼に暗い顔をさせて置きたくはないので、私は殊更に明るく振舞った。

 上手く言えたかはともかく気持ちは伝わったと思う。少なくとも奉仕の口上は悦んで貰えたようで、興奮した様子の彼に具体的な指示をされた事が特に嬉しい。精一杯の愛情を籠めて奉仕をしたい。

 しかし、模型での練習を厭うた事が響いているのか、両手が思うように動いてくれない。その事を詫びると気持ちが嬉しいとまで言って貰え、彼ならば斟酌してくれると期待していたので感動した。

 彼との相性が良いと確信できて嬉しくなり、ついはしたない事も言ってしまったけれど、彼が悦んでくれていると気が付いてからは、幻滅されないかと不安を感じるほど、淫らな言葉が口を衝いて出て来る。

 それらの言葉と手技で絶頂に達した彼は、沢山の子種を私に向け勢い良く射精した。態々着替えたかいの有る薄絹のドレスは、彼の大切な子種を弾く事なく吸収し尽くし、私が望んだ温もりを素肌に伝えてくれる。

 僅かに柔らかくなった性器を両手で握りながら、先ほど教わった事後に性器を搾る奉仕を実践して見ると、再び硬くなる過程で刻々と変わる性器の感触と、彼の敏感な反応が微笑ましくて楽しかった。

 ドレス越しに精液を浴びた箇所は心地よく暖められ、右手が無意識に子種を肌へ擦り込むよう動いている。今は戦中の懐妊を避けるべく避妊薬を飲んでいるけれど、彼の子を授かりたい気持ちまでは否定したくない。

 彼に両手で頬を包まれ力強く引き寄せられた。幾たび経験しても口付けの予感だけで嬉しくなり自然に瞼が下がる。今度は特別に強く求められているようで、彼は私の唇を激しく吸ってくれた。

 夢見心地でも刺激を得れる強い愛撫が嬉しくて、私の方からも唇を動かす事で彼の求めに応える。やがて淫らな音が鳴り始めても止めたいとは思わないでいると、彼の舌が私の口内に入って来る。

 最初は未体験の感触に驚き戸惑ったけれど、彼の舌が私の舌を探していると気が付いたので喜んで舌を捧げた。唾液を啜られる羞恥心は口付けだからと誤魔化し、彼の口内に私から唾液の送り込むことすらした。

 彼の舌に自分の舌を絡め取られる快楽には効し難く、身体が熱くなるのと共に彼を求める気持ちも膨れ上がる。それだけに口付けが終わる事が本当に寂しく、絆のように思えた銀糸が途切れたのも悲しかった。

 今の私は浅ましい顔をしているに違いない。そう自己嫌悪している時に美しいと褒められたら嬉し過ぎる。身体を蕩けさせる甘い唾液に、心を舞い上がらせる甘い言葉、どちらも巧みで溺れてしまいそう。

 突然に《不息》を使われ驚きはしたけれど、中断せずに口付けを続ける為だと気が付いてからは夢中で応じた。彼に強く抱きしめられる事も望んでいたので、引き寄せられるまま自然と腕の中に納まれたのも嬉しい。

 かろうじて奉仕の最中だという意識が残っていたので、快感に震える手をなんとか動かして手淫を再開した。しかし、拙すぎたようで彼が物足りげに腰を動かしたので、焦った私は恐る恐る右手を陰嚢に伸ばした。

 慎重に触れるべき場所を愛撫し始めたのが良かったのか、口の方は成すがままになると割り切り奉仕に集中できた。それでも子宮の辺りに彼の熱を感じると心身とも温められるようで、ついうっとりとしてしまう。

 彼の体液なら何でも待ち望んでいると示す為、私は限界まで顎を上げ無作法になるほど喉を晒した。彼の唾液は私に下賜された大切な液体なので、最高級のワインを味わうようにしてから飲み込む。

 どんな美酒よりも……甘美で……胸が温まり……私を陶酔させる。

 送り込まれてくる唾液の量が増えて苦しくなっても、《不息》を解かれ息が続かなくなっても、お腹を突かれて子宮が疼いても、彼の体液は一滴も溢したくないから、必死に喉を鳴らし飲み込み続けた。

 お腹に当たる射精の勢いが強くて驚いたけれど、それだけ彼が感じてくれた証拠だと思うと嬉しくなり奉仕を再開する。彼に直接教わった方法は特に喜ばれるようなので積極的に行った。

 奉仕の感想を言葉に出して貰えるのも、とても嬉しくて安心する。

 彼に関する事柄では僅かな不安でさえも、心を引き裂かれるように感じてしまう一方で、ほんの些細な言動で天にも昇る心地を味わえるので、私は彼を愛しているのと同時に、恋もし続けているのだと思う。

 私は満足げな様子でベッドに寝転がる彼の様子を見て、お掃除の好機を逃さないよう急いで手を拭いた。そして嫌がられたら直に止められるよう心構えをしてから、彼の性器に付着した粘液をタオルで拭き始めた。

 本には事後に触れられるのを嫌がる男性も居ると書いて有り、先程までも射精後は慎重に扱っていたけれど、興奮が収まっているだろう現状では更に敏感だと思われ、お掃除には細心の注意を払う必要が有る。

 口で綺麗にして差し上げれば安全だとも思うが、彼の望む範囲で最善を尽くすと考えれば遣り甲斐も感じられるので、タオルの材質を把握しながら掃除計画を練り、タオルを使い分けながら丹念に拭うのは面白い。

 柔らかくなった彼の性器は、逞しさから一転して可愛らしいと思う。

 書によれば男性には喜ばれない感想とあるが、彼ならば愛しいと思う気持ちからだと忖度してくれるかも知れない。いつか彼に伝えてみたいけれど、少し怖いので暫くは心の中に仕舞って置こう。

 お掃除は好評だったようで、彼は太股を震わせながら喜んでくれた。

 身を起こした彼が満足そうだったので、私は嬉しくて顔が緩むのを止められない。このまま見詰め合っているのも幸せだけれど、彼が風邪をひいては大事なのと、拭き取りでは限界もあるので入浴を薦めた。

 本来なら扉まで出向く所をベッドの上から見送ったのは、とても立ち上がれる状態にはなかったからだ。足に力が入らないのも有るけれど、それ以上にショーツが役に立たないほど股間が濡れてしまっている。

 私が奉仕しながら快楽に耽っていたなんて、彼に知られたくない……。

 愛液自体はタオルで拭き取れば良かったのだけれど、身体の熱は暫く休んでも一向に引いて行かない。仕方ないので鐘を振って呼んだアンに相談してみたら、精霊術の《沈静》で消す事を提案された。

 《沈静》が性的興奮にも効果も有るとは知らなかったが、私はこの昂ぶりを消したいのではなく鎮めたいのだ。この淫熱も彼の与えてくれた感覚には違いないので、術式で跡形もなく消すのは絶対に嫌だ。

 そうアンに我侭を言ったら、お母様にそっくりだと笑われてしまったけれど、ハーブティや水浴びを薦めてくれたので採用する。そしてハーブティだけでは足りなかったので、浴室で冷水を何度も被る事になった。

 火照った身体に冷水を浴びるのは気持ち良く、静まった熱も消えずに身の内で燻っているのが感じられたので、私の望んだ通り満足のいく結果になった。けれども彼に知られる事への不安だけは拭えない……。



続く

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