イスラム国がイラク時間の29日日没まで、拘留されているヨルダンにおける爆弾テロ実行犯のリシャウィ死刑囚をトルコ国境に連れて来なければ、ヨルダン人のパイロットのムアス・カサスベ氏(空軍中尉)を直ちに殺害すると警告してきた時間(日本時間の29日午後11時半頃)がとうに過ぎた。
現段階ではヨルダン政府がリシャウィ死刑囚を移送した気配はない。昨日、イスラム国が後藤健二さんを通じてヨルダン政府にメッセージを出した後、ヨルダンのモマニ・メディア担当相は「あらゆるレベルでヨルダン人パイロットの解放に努めている」と述べたが、ヨルダン政府がリシャウィ死刑囚の釈放を決断しイスラム国側との人質交換の前提となるカサスベ中尉の生存確認はできず、リシャウィ死刑囚はヨルダンの刑務所から動いていない。
イスラム国が示した29日の日没時間が過ぎて、今、後藤さんとカサスベ中尉がどうなっているのかは、表面的には分からない。
楽観的に解釈すれば、ヨルダンとイスラム国が水面下で折衝中なので、人質には変化が無いのか。悲観的に考察すると既にイスラム国が警告したとおり、カサスベ中尉の身に危機が及び、合せて後藤さんにも危害が加えられたのかまったく分からない。
若し、カサスベ中尉が殺害されたとすると、リシャウィ死刑囚は解放されず、ヨルダンを通じての後藤さんの帰還は難しくなる。その場合には、後藤さんの救出は他の方法を取るしか道はなくなる。
ただ、その前にイスラム国が後藤さんを殺傷しないかという心配がある。しかし、イスラム国が後藤さんを殺傷しても何の得にもならない。それどころかますます世界の世論を敵に回すことになり、イスラム国の壊滅の時間が早まるだけだろう。
しかし、カサスベ中尉の生死によって、ヨルダン政府とイスラム国の交渉が途切れると、後藤さんの救出は長引く恐れが出てきそうだ。「関連:1月29日」