逝きし世の面影

政治、経済、社会、宗教などを脈絡無く語る

戦争プロパガンダ10の法則

2009年02月18日 | 社会・歴史

『戦争プロパガンダ10の法則』(草思社)
アンヌ・モレリ Anne Mbrelli
歴史学者。ブリュッセル自由大学歴史批評学教授。
歴史批評を近代メディアに適用し、世論を特定の方向に誘導するからくりを体系的に分析。
第一次大戦中にイギリスで平和主義を貫いたボンソンビーの著書『戦時の嘘』に基づき、その当時、人々を戦争に駆り立てたプロパガンダの法則が、現在もやはり、同じように人々を欺くために使用されているということを、さまざまな実例を挙げながら、展開したものである。

戦争があるたびに、まったく同じプロパガンダが繰り返され、世論が操作されてきた。
戦争が終わると、世論は騙されていたことに気付く。
しかし、次の戦争がはじまると、また同じプロパガンダに騙されてしまう。
今度こそ、プロパガンダは本物だと信じてしまうからだ。
第一次大戦、第二次大戦から湾岸戦争、コソボ紛争、イラク戦争まで10の法則が交戦国双方でどの様に使われて来たかを解説している

「現代人は、かつてのように何でもかんでも信じてしまうわけではない。彼らは、テレビで見たことしか信じないのだ」

このアンヌ・モレリの戦争プロパガンダ10の法則は、戦前の日本に典型的に見出されるが今現在の日本でも十分に通用する。
9・11時件以後のアメリカは『戦争プロパガンダ10の法則』の見本市のような凄まじい有様である。





『アーサー・ポンソンビー』(1871年~1946年)

イギリスの名門に生まれ下院、上院議員となり大臣まで経験したが、平和主義を貫くポンソンビーは第一次大戦中に義勇兵を募集するために行ったイギリス政府の戦争のプロパガンダを批判するパンフレットを発行し、のちに「戦時の嘘」を書いた。
 
ポンソンビーによると、戦争プロパガンダの基本的なメカニズムは10の法則に集約出来るとしており、アンヌ・モレリがこの10項目を具体的に歴史の事実から証明をした。

『戦争プロパガンダ10の法則』

(1) 我々は戦争をしたくない。
(2) しかし、敵側が一方的に戦争を望んだ。
(3) 敵の指導者は悪魔のような人間だ。
(4) 我々は領土や覇権のためではなく、偉大な使命のために戦う。
(5) 我々も誤って犠牲を出すことがある。だが、敵はわざと残虐行為におよんでいる。
(6) 敵は卑劣な戦略や兵器を用いている
(7) 我々の受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大。
(8) 芸術家や知識人もこの戦いを支持している。
(9) 我々の大義は神聖なものである。
(10) この戦いに疑問を投げかける者は裏切り者である。





『プロパガンダ』

プロパガンダ(propaganda)の意味は『宣伝』『広報』で、商業的なコマーシャル(CM。commercial message)と良く似た意味、内容を含んでいる。
プロパガンダは、ある意図的な目的をもった国家や人達(団体、組織)が『その意にそうよう』に国家や大衆を誘導する組織的な行為のことである。

ところが、その情報を受け取っている大衆は『その真意』を読めず、素直に信じるし(または信じるように仕向けられている)、情報をそのまま飲み込んでいく。

プロパガンダは基本的にマスコミ等の報道機関を牛耳る事が出来る者達(権力者、あるい国家)が行うもので、権力を持っていない左翼が行う「大衆の不満をあおりたてて闘争に導くこと」が目的のアジテーション(Agitation)のような『煽動』とは表面的、形式的に似ていても意味が違います。


コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 1898年2月15日、戦艦... | トップ | また戦争プロパガンダが始ま... »

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ejnews)
2009-02-18 19:05:26
はじめてコメント出来ます。簡単で良いですねえ!Propagandaと言えばジグムント フロイトの甥のエドワード バーネイEdward Louis Bernaysの1928年の著書“Propaganda”が有名ですよね。彼の第一次大戦に始まる戦争だけでなく社会生活に対するプロパガンダによるコントロールは恐ろしい物ですね!今でもウイルソン大統領が平和主義者だったと信じている人が多いのですから。
処で私のブログのリンクにある“A VIDA EM ROSA”のカカセオさんもこの様な歴史に興味のある人なので時々覘いてやって下さい。より多くの色々意見の交換が出来れば良いと思っています。
 今後とも宜しく御願いします。
ejnewssさん。コメント有り難う御座います (ブログ主)
2009-02-19 11:51:37
殺人が「悪」であるならば大量殺人は「極悪」。
大量殺人が「極悪」なら、超大量殺人である戦争は言語道断の「超極悪」である筈。
それなら戦争参加者が皆『超極悪人』と言う事になる。
ところが人格者で皆より賢いはずの国家の指導者が戦争を指揮し普通の善良な一般市民が戦争を行う。
この『戦争プロパガンダ10の法則』は、つくづく人間とは『感情の動物』なのだと納得させられる内容です。
愛国心があろうが無かろうが、宗教的信念があろうが無かろうが、善いことをする善人はいるし、悪い事をする悪人もいるだろう。
しかし『戦争』のような『究極の悪』を為すためには何らかの『確信』が無ければならない。
人間は、宗教的な確信のような『完全な確信』を持って行っているとき以上に、完璧かつ快活に悪を為す事は無い。

プロパガンダなんて言うから何かエラクたいそうなものみたいですが『宣伝』『広報』『広告』なら世の中に溢れかえっていて陳腐そのもの。
CMを辞書で引くと、『番組の途中に流される広告放送のこと』となっている。
しかしプロパガンダは、番組の途中であろうが真ん中であろうが時間を選ばないので最強のコマーシャル・メッセージといえる。

プロパガンダもコマーシャルもアジテーションも意味するところの物はまったく一緒ですが、困った事に受け取る側の印象は全く違う。
プロパガンダとこれ等他の二つの類似行為との最大の違いは宣伝広報ではなく『中立的な真実の報道』と思わせるところでしょう。
戦争プロパガンダが『プロパガンダ』と見破られた時に神通力を失いますが、国民のみんなに宣伝広告の類いで有るとバレルのは大概は戦争が終わってしまってからなので、残念な事に常に成功してしまいます。
ご紹介の本 (カーク)
2009-02-22 19:23:22
ただいま予約しました。
騙され易い、あるいは踊らされ易い私なので、しっかり読みたいです。
これ程今の現実を反映しているものも珍しい (ブログ主)
2009-02-23 11:57:49
コメント有り難うございます。
この本は9・11事件直後の2002年3月に出版されていますが、これほど9・11以降のアメリカが起こした戦争の核心部分を突いているものも無い。
内容的には第一次世界大戦のフランスの例が色々紹介されていますが、第二次世界大戦やその他の戦争についても全く同じプロパガンダ技術が使われたいる。
『国家が行う戦争とは何か』を考える時に、最も参考になる書物であると思います。

コメントを投稿

社会・歴史」カテゴリの最新記事