逝きし世の面影

政治、経済、社会、宗教などを脈絡無く語る

成果が無かった『成果主義』

2009年02月14日 | 経済

バブル経済が崩壊した1990年代以降、日本企業の多くは従来の年功序列型の人事評価制度を取りやめ、アメリカ型の成果主義型の制度へと改めていった。
今では大企業の80%が何らかの成果主義を導入しているという。
『社員のやる気が引き出され、働いた者が公平に評価されることによって、企業はますます発展する』として日本に導入され、その後、成果主義に伴う『自己責任』や『客観評価』を口実にして職場は劇的に変化するが、それでは日本の企業内で何が行われ、何が失われたのだろうか。?
一番顕著に現れたのが、一般従業員の労働意欲喪失とモラル低下である。
同僚や後輩に対する助言や指導等の連帯感、助け合いの精神の喪失(技能のスムーズな伝承の阻害)(協働精神の欠如)や高い目標への挑戦意欲の減退など。
それによる企業業績の低迷と若手従業員の高い離職率。
長期的な視点やビジョンを失ったのは経営者側も従業員も同じで、長期的な経営戦略ではなく短期の利益や目先の成果に振りまわされる。
企業の経営トップはそれまでは会社にとって最大の『投資』であった従業員への投資(育成)を怠たる様になった。
また企業の管理職は、それまで最大の仕事だった部下に対するの公平で正しい『評価』を怠るようになった。
これ等は今まで相対的でしかも相互に関連していて総合的なものであった『各個人の業績や仕事の成果』が『成果主義』で簡単に個人別に数値化出来ると誤解した為に起こった事柄である。

『賃金抑制が主目的だった日本』
(成果主義賃金導入の背景と年功序列賃金の功罪)

最近、多くの企業で何らかの形で成果主義賃金の導入が進められている背景の一つには、高度経済成長期に入社した各企業の労働者(団塊の世代)が高齢化し、これまでの年功制では賃金が高くつくようになったからである。
日本の年功賃金制度は、若年時代に生産性よりも低い賃金に抑える代わりに後年において生産性よりも高い賃金を支払うことで、若い労働者の雇用継続と勤労意欲を高めることに貢献してきた。
90年代には失業者が多いにもかかわらず賃金は下がらなかったが、2000年代には賃金が下降してきた。
その秘密の一つが成果主義賃金の導入だったのです。
成果主義の導入目的として一般には『成果を上げた人に厚く報いる(成果を適正に配分する』、『成果主義の採用によって社員のモチベーションが向上し企業業績が改善する』といった事が言われていた。
しかし実際には、内閣府の調査でも『企業の業績と成果主義賃金との関係はほとんどみられない。』と結論している。
成果主義を導入された中高年は、若いときは安月給で働かされたのに、今になって、元が取れなくなった。
また、若い者も、生涯に受け取る賃金総額は、成果主義の賃下げ効果のため減少している。
小泉構造改革などのアメリカ型新自由主義経済が日本に導入され、そのための日本国内ではリストラと賃金切り下げ、既成労働法制と制度の解体が急ピッチに進められた。
『成果主義賃金体系への転換』は、経営者の哲学によるものというよりは、もっとも安易な賃金総額抑制・雇用制度破壊の「理論的」根拠として活用されてきたのです。
しかし本来のアメリカ式の『成果のあった人には報酬(カネ)で報いる』という成果主義の本旨は、
『新入社員であっても成果をあげれば年俸数億円も有りうる』という様に、必然的に『賃金の抑制』ではなく『賃金の高騰』を引き起こす筈のものであった。
(倒産した投資銀行リーマン・ブラザーズの3万人強の従業員の平均年俸は、一人当たりにして6千万円)

『根本的に間違っていた労務管理(人事問題)』

成果主義は企業の現場にそれまであった協調性や連帯感などが無くなる等様々な弊害をもたらしたが、その最たるものは『無責任体質』であろう。
成果主義の導入や人員の削減によって、まるでタコが自らの足を食べるように身を削って内部留保を積み上げた。
しかし10年以上たってバブル期以上に企業に現金はたまったが、それをいざ使おうと思っても、新規事業などの使い道がない。
行き場のなくなった現金はサブプライムなどのインチキ臭いアメリカなどの金融投機に狙われたり、本来は会社や従業員のために使うべき資金をいたずらに株主に対する増配によって投資ファンドに渡したりしている。
『成果主義』は、日本の大企業の多国籍化と密接に関連している。
海外進出の多国籍企業は、日本的システムだけではやって行けないが、それが結果的に日本国内にも跳ね返ってくる。
『成果』と『賃金』を単純にリンクすれば問題が起きるのは当たり前である。
持続的な安定した経済発展を維持するという目的の為には、個々の会社にとっても、また社会全体にとっても、成果は仕事で報い、
『賃金』は本来生活保障(その労働力の再生産の最低保証)を中心に制度設計すべき性格のものである。
労働力の再生産費を年齢ごとに最低保障すれば、それは自動的にアメリカ型成果主義賃金体系の対極に有る、従来の『日本型年功序列』、『終身雇用制度』という事になる。
長期的に維持できる賃金体系として日本型年功序列は、実は企業にとっても社会にとっても、最も安上がり(全勤労者の賃金総額が最低)な制度であったのです。
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成果主義の末路 (Ladybird)
2010-03-20 14:00:51
 トラバありがとうございます.これは1年ほど前の記事ですね.
 小泉改革の「成果」で日本の労働現場が荒廃しきって,その結果が民主党への政権交代だっただろうと思います.
 「成果主義」の「成果」について,きっちりした「評価」をくだすことが必要であろうと考えています.
小泉、竹中路線の犯罪的無責任 (逝きし世の面影)
2010-03-20 16:42:41
ほんの少し前までは、日本の終身雇用制度と年功序列賃金は、日本の経済を停滞させている元凶、近代以前の封建的な旧来の悪弊であるかのように思われていた。、
アメリカかぶれの自称近代経済学者の竹中平蔵などによって、アメリカや欧州型の其々の仕事を正しく評価して賃金を支払う『成果主義』こそが最先端の経済学の基礎であるかの様な主張がまことしやかに語られていた。
この竹中平蔵の主張は根拠がなく現実の日本社会を全く無視した全くのデマ(間違った学説)なのですが、
単なる『間違った考え方』以上の不幸は、日本に導入されたモノが、欧米の『成果主義』とは全く似て非なるも『制度』だったことでしょう。
欧米型の『成果主義』を、社会事情や国民性が違う日本に、そのまま導入しても大きな問題が起こったでしょう。
ところが日本に導入された『成果主義』と名づけららた制度はアメリカや欧州とは全く違う見掛け倒しの粗悪品のメイドインジャパン(経団連特注仕様)だったからたまらない。
これで問題が起きないほうがどうかしているのですよ。
メイドインチャイナのグッチやシャネルの高級バック以上のお笑いです。
日本のプロ野球選手が大リーグに憧れるのは勿論その技術水準の高さもあるが、それ以上に違いすぎる日米での選手の待遇差の違いなのです。
完全な成果主義のアメリカでは大リーグの選手の平均年俸は2~3億円で日本国内のちょうど一桁違い高給なのでが、それ以外にも10年間大リーグに在籍すれば引退後に生涯年金が保証されるなど年俸以外の待遇面でも違いが大きいのです。
しかも大リーグ選手会は絶大な権限を持っているし選手個人も色々な特典があるのです。日本もアメリカ並みの成果主義なら選手の待遇は格段に良くなる。
何故ならイチロー級の選手は誰もが欲しがり何十億円もだすので、『成果主義』が導入されると自動的に年俸は高騰する構造になっているのです。

ところが日本に導入された『成果主義』では全体の賃金総額は低下してしまったのですが、何故こんな事になったのかの原因ですが、日本の場合には元もとの成果主義の導入目的が経団連主導の『賃金抑制』なのですから、当たり前すぎるほど当たり前な結論になる。
ですから日本に竹中平蔵によって鳴り物入りで導入された『成果主義』なる代物は、実は成果主義などではなく『成果主義モドキ』で中身が全く正反対の真っ赤なニセモノだったのです。
その結果が現在の格差社会とデフレによる日本経済の停滞と日本国の少子化の深刻化なのです。
経済学的に見てこれは偶然そうなったものではなく、小泉竹中路線の必然的な帰着である。

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