逝きし世の面影

政治、経済、社会、宗教などを脈絡無く語る

『弱り目に祟り目』 ブラウン首相の小さな失敗

2010年05月02日 | 政治

『勝ちに不思議の勝ちあり 負けに不思議の負けなし。』

勝ちには偶然の運に恵まれた1989年参議院選挙の土井社会党の大勝利(マドンナ選挙)のような‎『幸運な勝ち』もあるが、負けに偶然の負けは無い。
必ず負ける時には常に明確な原因がある。
3年前の参議院選挙での安倍晋三自民党の大敗の理由は日本の憲政史上有り得ない現職大臣である松岡農水相の不可解なドアノブでの首ツリという不審死と、其れに続く矢張り赤城農水相の『何でもありません』と、よれよれスーツで弁明する絆創膏大臣の出現や、下痢が止まらないので首相所信表明演説直後の前代未聞の政権放り出しなどなど、
自民党の壊滅的な敗北は、誰が見ても納得するものだった。
半年前の8月30日の衆議院満了総選挙での麻生太郎自民党の崩壊も、麻生本人の新聞も読まない無知蒙昧ぶりも問題だったし、小泉政権以来の4年間の選挙を経ずに自民党内だけの政権たらいまわしの付けの清算の意味もあるだろうが、それ以上に直前のリーマンショック以後の最大の関心事(最高の重要事項)である世界の金融の再構築の為に開かれたローマでの世界主要国国立銀総裁、財務金融大臣会議にへべれけで出席した日本の中川財務大臣の国際的な恥さらしが大きかった。
アメリカなど先進諸国ではこのお笑い映像(日本にとっては国辱映像)が1週間も流されて視聴者の嘲笑を誘っていた。これで勝てるはずがないのです。

『巧言令色少なし仁』

5月6日に総選挙を控えた英国では選挙戦の真っ最中。
人気がない労働党ブラウン首相の戦略は『全国を行脚して一般国民と対話を重ねる姿勢を強調』することで、親しみやすさと人間性の演出だった。
ところが4月28日。思わぬところに落とし穴があった。
イングランド北西部の町での、テレビ放映される対話集会で偶然、年金生活者のジリアン・ダフィさん(65歳)が、『私はこれまでずっと貴方が党首を務める労働党を支持してきたが』と、前置きして労働党政権の推進する英国の移民政策についてかなり厳しい質問を連発した。
これに対してブラウン首相(59歳)は老練なベテラン政治家らしく、耳の痛い厳しい質問にも笑顔を絶やさず真摯に聴き、指摘された問題点について労働党の政策を一つ一つ懇切丁寧に説明していく。
最後にブラウン首相と年配女性は仲良く握手して、
『貴方は良い人だ。貴方は人生を通じて地域に貢献した』(ダフィさんは長年福祉活動に携わっていた)
『貴方とお話ができて、とてもよかった、本当にお会いできて嬉しかった』と満面の笑みを浮かべる。
続けてブラウン首相は『あ、そうそう、あと貴方は今日いい色のお洋服を着ていますね』『はは、はは~!』と高らかに笑って移動用の乗用車に颯爽と乗り込み立ち去っていく。(赤は労働党のシンボルカラー)

ところがブラウン首相は自分の車に乗り油断したのだろうが、車外に漏れないよう低い声だが吐き棄てるような激しい口調で、
『大失態だ。あんな女性をどうして私の前に引っ張り出したんだ。』
『誰の発案だ、馬鹿げているだろ!』
『なんだあの偏屈ババアは!(She is just a sort of bigoted woman!)』

『大人の本音?』

レストランの店頭の樹脂製のサンプルと運ばれてくる料理とが違っているのは当たり前の事柄であり、テレビコマーシャルで美人モデルが使う有名化粧品を使っても誰もが美人にはならない。
宣伝用見本と目の前の現実が違うことぐらい『世の中の責任ある大人は嘘を付かない』と信じている小学生低学年ならいざしらず、大人なら誰もが知っている。
政府の発表や最高責任者発言など公式論や定説は全部本当かどうかは何とも言えず、今のネット世界に流行る『公式論以外はすべて陰謀論』なる珍説は子供の願望で、『美しい誤解』ではあるが、残念ながら真実かどうかは分からない。
ですから今回の事件の様に、テレビ用の発言(笑顔)と、身内の中だけの陰口が違っていても誰も当人を責められないでしょう。
ところがブラウン首相は不幸にも、うっかりと選挙宣伝の為のテレビカメラ用のマイクを胸から外し忘れていた。
誰にも聞かれていないはずの『内緒の影口』が同時中継で全国放送になって有権者全員が知ることになったのです。
報道陣は大喜び。
スカイニュースは年配女性に、『あの!今ブラウン首相とお話しなさいましたよね!ブラウン首相が貴方のことを『偏屈ババア』と呼んだことについて率直なところ、どうお考えになりますか?あ、ちなみにこれ、生放送中です!』と追い討ちの放送をする。
マスコミは水に落ちた犬には厳しい。
直後にブラウン首相が出演したBBCのラジオ番組でも、
『では問題の音声を聴いてみましょう・・・で、首相、それでこの発言の真意は何だったんですか?』とブラウン首相に質問する。
頭を抱えて、何時もの最高責任者らしい落ち付いた物腰を全く忘れはて、ものすごい早口で謝罪の言葉を繰り返すブラウン首相。
たまりかねて首相はその後の日程を変更、
当該女性に直接謝罪したのはよいが、その後がまたまた良くない。
『謝罪をしてきました。私は彼女の発言を誤解していたんです、で、それが誤解であることを彼女も受け入れてくださいました、ええ!』
と四方八方、周りの記者たちに満面の笑みを振り撒いていたが、此処は笑う場面ではないでしょう。テレビに取り囲まれて、つい何時もの選挙用の飛び切りの笑顔で応対するのですが、この場合には矢張り笑っては不味い。
たぶん何時も何時も厳しい笑顔の練習をしたのですが、その時の状況が理解できていない。駄目です。身についていませんね。
これだけ白々しい裏表のある二面性を見せ付けられるとイギリスの有権者ならずとも呆れ反てる、こりゃ~駄目だ。

『支持離れが止まらない労働党』

投票直前のこの時期に来てこれまで労働党支持だった主要メディアまでが沈没する船から逃げ出していく。
長らく労働党を支持してきた高級紙ガーディアンは、『ブラウン首相は英国の未来を描けず、議員経費乱脈で問われた政治改革を主導する能力も欠いた』とし、労働党保守党という二大政党以外の第三党自民党支持を表明するし、
民主主義にとって弊害が大きすぎる長年続いた小選挙区制の廃止(中選挙区導入)を強く主張した。
同じく高級紙タイムズも『保守党のキャメロン党首は英国を健全で力強い未来へ導く不屈の精神と判断力、個性をみせている』と18年ぶりに労働党から保守党支持に転換する。
イギリスの有力週刊新聞のエコノミストも労働党支持を撤回し、保守党支持を表明している。
最大の部数を誇る大衆紙サンは、すでに昨年秋の段階でいち早く労働党との絶縁を宣言していた。

『中身以前に、外見が悪いブラウン首相』

5月6日投票の総選挙を控えた英国では現職の労働党党首ブラウン首相の評判が良くない。
野党の保守党と自由民主党の党首は、どちらの40代で若くてハンサム、顔立ちが整っており弁舌爽やかで笑顔が似合う雄弁家。
ところがこのブラウン党首は59歳でしかも顔立ちがいかつい笑顔が似合わない中年男。最初から大きなハンディキャップを抱えているようなもの。
ブレア首相から07年に次期首相にと、バトンタッチして首相になったのですが、
日本の小沢一郎と同じように実力者のゴードン・ブラウン財務相は当時から玄人受けするのですが一般大衆の人気がなかった。
彼の不人気の要因については色々言われているが、突き詰めると『写真うつりの悪さ』らしいのですよ。
ブラウン首相は『笑顔のイメージがない人』で、どうも本人は、『笑顔を作ること』が苦手らしいのですよ。
雄弁家でハンサムで見かけだけなら100点満点だったが、勝てない対テロ戦争にイギリスを引き込んだブレア首相から政権を引き継いで3年がたち、今回の総選挙では随分『笑顔を練習』したらしく満面の笑みを周囲に振り撒いているのですが、如何せん付け焼き刃なので時々はボロが出る。


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人間ブラウン (ましま)
2010-05-02 09:58:45
政治家は聖人君子たりえない。また聖人君子でも困る。その点、誰でも侵しかねない失敗。鉄皮面のコチコチより、人間らしくていいじゃないですか。少なくともみっともない日本の2A首相よりはるかにいい。
しかし、仕掛けを作りマイクに気づかなかった秘書はクビでしょうね。英国では執事やボディーガードはいても日本の政治家秘書のような人はいないのかな?。
本人には可哀想だが、 仕方がない (逝きし世の面影)
2010-05-02 17:18:15
ましまさん、コメント有難うございます。

身から出たさびとはいえ可哀想ですね。
本人に迷惑だろうが宇野宗助元総理の三本指は,助平の無責任男の代名詞で一月ほどの超短命内閣なのですが、今でもみんなが知っている。、
赤城徳彦農水大臣のことは忘れても恥ずかしい絆創膏大臣のことはみんなは忘れない。
中川昭一財務相は安倍晋三と共に与党権限でNHKを恫喝して従軍慰安婦の番組の編集に介入した右翼政治家というよりも、実父の中川一郎の国会での立小便とまったく同じレベルの、へべれけ記者会見のアル中の破廉恥政治家としてしか記憶に残らないでしょう。
イギリスのブラウン首相ですが間違いなく、この失言が人々の記憶に残る。
これで、もしも労働党が勝てば驚天動地の出来事ですよ。
先ず間違いなく大敗北間違いなし、そして教科書の歴史とは別に、庶民の記憶では2010年総選挙での与党労働党の記録的大敗北と、この車中での内緒の悪口のお笑い騒動の二つが一つの事件として記録されるのです。
この話は船場吉兆の囁き女将や冬季オリンピックの国母選手の謝罪会見での小声での『ちぇ。うっせ~な~』などの話よりも深刻で、政治家の表裏の話なので、政党の正式な公約(マニフェスト)の信用問題とも絡んでます。
これだけ表と裏が正反対だと、矢張り不味すぎる。
小泉純一郎の、『私に聞いても分かるはずがない』などの政治家、其れも日本の最高責任者の自分の戦後初めての海外派兵の大事な判断での国会での暴言が許された背景は、『言っていることは無茶苦茶でも正直だろう』との庶民の判断なのです。
そしてこの事件はその正反対に位置しています。
誰でもが犯す、ささいな小さな失敗なのですが致命傷になるでしょう。
このブラウン首相ですが、チャーチル首相や日本の吉田茂首相と同じで、貴族趣味で横柄で庶民に満遍なく笑いかけるタイプの政治家ではない。
記事にも少し書いたが、笑わない政治家として有名だったのですが、選挙戦用『笑顔』を必死の特訓で練習したのでしょうが、付け焼き刃なので身についていず今回、恥ずかしい大失敗を演じたのです。
それにしても、無理をして笑っていた裏表の格差の激しいブラウン首相も多少は問題ですが、それ以上に日本の小泉やイギリスのブレアのように見かけだけで選ぶ有権者の存在こそが一番の問題です。

イギリスの民主主義の発展の為には、何百年前の古臭い非民主的な有権者の意思を正しく反映しない『小選挙区制の廃止』が急務で、労働党の敗北とイギリス自民党の勝利なら、今度の選挙が最後の小選挙区での総選挙になるでしょう。

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