もぐ菜のみっしり茶匣(はこ)院

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黒執事 StarRingSilver 白薔薇の揺り籠  エピソード1

2010-02-06 19:41:57 | 腐女子の御伴
※この小説はアニメ黒執事を基に、二次創作として執筆しております。
一個人の解釈なので、原作やアニメ制作会社、出版社とは一切関係ありません。
その点をご理解いただき、お読み下さる様お願いいたします。





もし、お目覚めになられましたら─────貴方は私に何を申しますか??





■黒執事 StarRingSilver 白薔薇の揺り籠 エピソード1





手入れがされていればさぞや美麗な庭園であっただろう。

時の流れのままに添い荒廃した庭園の玉座に座る幼き美しき王。そして膝まずく燕尾服を着た僕(しもべ)を、白く透き通る月明かりが照らす。


片腕で抱きしめるとシエルは、一瞬強張(こわば)るが拒む事なく、静かにその時を迎えいれる。
眼帯は外され瞳は閉じられており、セバスチャンはシエルを見つめる。

「どうした、セバスチャン??何を戸惑(とまど)って居る?? 契約を果たした褒美(ほうび)だ。」

「さようですね。」

「痛みは僕が生きていたと言う最後の証だ。もう、後は何も、遺(のこ)らない。」

「坊ちゃん────────では。」

瞳を閉じ深く深呼吸をするシエルにセバスチャンは手を翳(かざ)すと、シエル
の意識は消失し、身体はがっくりと前のめりに倒れ込む。

シエルのか細い首筋にセバスチャンは顔をうずめ、片腕で深く抱きしめ思う。
統べてを奪われた、あの日の晩に悪魔に魅入(みい)られた貴方は、抱きしめられる事を拒み続けてこの瞬間を迎えた。

(最後まで貴方が望む完璧な執事として仕えたかった…‥)

セバスチャンはアッシュとの戦いで左手を肩から失い、手のひらに刻まれた契約の陣が消えてしまい、魂を摂取(せっしゅ)しなければ片腕は再生しないのである。

(せめて最後のこの瞬間だけは、両腕で貴方を抱きしめたかった…)



意識を消失したシエルの横顔は穏やかであった。

こんなにも早く永久(とわ)の別れをするとは誰が思っただろう。

柔らかな首筋にそっと唇(くち)づけ牙を立てた。



─────セバスチャンは、物欲や性欲というような、俗世(ぞくせ)的な欲というものを人間が満たした時のようなレヴェルのものでは到底(てってい)量(はか)れない、悪魔だけが知るこの世界でもっとも満たされている気分に、恍惚(こうこつ)と酔いしれた────。



静寂(せいじゃく)が時を支配し包み込み、月明かりが荒廃した庭園を照らす。
玉座に座る幼き美しき王を、再生したばかりの左腕と右腕の両手で抱きかかえ、燕尾服を着た僕(しもべ)は立ち上がった。

静寂(せいじゃく)に耳を澄ますと女性の声が聞こえてきた。


「─────坊ちゃん。」



セバスチャンが振り返ると、姿はないが、かつて人で在ったモノの気配を感じる。
異府まで辿り着ける者などそう居ない… 流れ出したシエルのシネマティック
レコードの影響と思ったが、間違いなく確かに感じる。

「メイリンですね。貴方の様な者が来る場所ではありません。」

「坊ちゃん。」

メイリンがシエルに再び呼びかけるとシエルの口許は微動したように見えた。

メイリンは幻影から気配を伴い実体化すると、セバスチャンの足元に崩れ倒れ込んだ。

シエルの意識は、セバスチャンが手を翳(かざ)した時に統(す)べて消失しているはず。
しかしそれなのに─────?メイリンの呼びかけに反応したのであろうか?


何をどうしてへばり付き、シエルを追ってこの異府の最果(さいは)てに辿り着いたのかセバスチャンは呆れてメイリンを見る。

ただシエルを護(まも)りたい一心がそうさせたのだろう。

他の使用人達の気配は一切しない。

メイリンだけがシエルを追って来たようだ。


しぶとい… それだけは称賛すべきだろうと、セバスチャンはいつもの様に慈悲(じひ)と軽蔑(けいべつ)を混ぜ合わせた微笑を浮かべる。シエルを抱きかかえメイリンを構う事なく立ち去る。

紺碧(こんぺき)の森林に馬車が停車していた。

セバスチャンは馬車の客室の扉を開き、シエルを刺繍(ししゅう)が施(ほどこ)されたベルベット生地(きじ)の座席に座らせ、シエルを見つめる。

セバスチャンは振り返るが、すでにメイリンの気配と身体は消えていた。

(どこへ消えたのでしょうか、とにかく追う必要はありませんね)

馬車はセバスチャンの居城へと続く、紺碧(こんぺき)の森の中を走り始めた。



幾度も人間と契約を交わしては望みを叶え、引き換えにその魂を摂取(せっしゅ)して来た。

魂を摂取(せっしゅ)する時は、シエルの様に潔(いさぎ)よい人間も居れば、最後のその瞬間になると取り乱し錯乱する人間もいる。

悪魔と契約した者たちは、今までの享楽(きょうらく)と引き替えに、絶句する痛みと供に魂を
摂取(せっしゅ)され終わるのだ。

契約が果たされてしまえば主従の関係は終わり、魂を摂取(せっしゅ)されるのを待つのみで、もはやそれを拒むなどの選択の余地はないのだ。

────魂を摂取(せっしゅ)された、幼き美しき王を乗せた馬車は、セバスチャンの居城を目指し走り続けていた。

なぜシエルの体を放り出して立ち去る事が出来なかったのか?
当然のことをするように、自分の居城へと運んでいたセバスチャンであったが、ふと、自分のしている行動の意味が、自分自身で分からなかった。

<絶対的な存在の悪魔ではありえない行動>をしていることに自らで気がついた頃から、セバスチャンの身に異変が起こり始めた。

(なんだというのでしょう?胸の辺りが・・・・・)




黒執事 StarRi

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