あなたも社楽人!

社楽の会の運営者によるブログです。社会科に関する情報などを発信します。

授業で役立つ指導の技術-28-

2024-01-28 05:15:39 | 全員参加型授業の指導技術
《 考えさせるための技術 - 教材を研究し発問をつくる技術- 》
 
思考過程とは分析、総合、比較、抽象、概括などの段階である。
 
(1)分析は物事を細かな要素に分けることである。
 
(2)総合は分析に対して、物事を構成している要素を結び合わせることである。
 
(3)比較は物事の要素や性質を比べて、それらの類似点と相違点を明らかにすることである。
 
(4)抽象は物事の本質的なものとそうでないものを分けて、本質的なものを取り出すことである。
 
(5)概括は物事の類似点や抽象された本質的なものを一つにまとめることである。
 
さらに、教科特有の考え方もある。
例えば、社会的思考は、主に関連思考・比較思考・条件思考・因果思考・発展思考の5類型が考えられる。
 
教材研究とは、教材を分析、総合、比較、抽象、概括することである。
 
これらは子どもに考えさせるための技術でもあり、発問を作るヒントでもある。
 
例を挙げよう。
 
(1)分析「バスの運転手」
 
故 有田和正氏は「バスの運転手」の仕事を分析した。
乗客を乗せる、乗ったことを確認してドアを閉める。乗客が座ったことを確認して「発車します」と言う。ウィンカーを出して後方の安全を確認する、などと続いていく。
 
子どもたちにこれらのことを気づかせるために、有名な発問を考え出した。
 
「バスの運転手さんはどこを見ているのでしょう」
 
動きの分析が発問につながった例である。
 
その答えを総合すると、いくつかの安全確認が見えてくる。
そして、それらを抽象すると、「安全運行」「サービス」という本質が見え、概括すると、バスの運転手は、乗客を安全、正確に運行するために、細心の注意を払っているということを学習する。
 
 
(2)総合「東北地方の農業」
 
東北地方は日本の代表的な米作地帯であるが、果物の生産も盛んである。
 
青森県ではリンゴと米を生産している農家が多い。米とリンゴを比べると、農繁期は一致し、米価は一定なのに対して、リンゴの生産者価格は生産量により不安定である。
 
しかし、「米の作況指数」「リンゴの作況指数」「米の価格」「リンゴの価格」「平均気温」を調べていくと、やませによる冷害に米の生産量が大きく左右されるのに、リンゴの生産は影響されないことがわかる。
 
これらの情報を総合すると、リンゴを栽培することにより、冷害によるリスクを果実栽培で低減させていることがわかる。
 
ここから、「値段も不安定で労力もかかり儲けも少ないのに,なぜ,青森県では米とりんごを一緒につくるのだろうか」という発問を考えることができる。
 
 
(3)比較「ごんぎつね」
 
文学作品の基本的構造は次のようである。
 
 
「ごんぎつね」では、いたずら好きのごん(A1)が、おっかあの葬列(X)を見て、献身的なごん(A2)に変容(Y)する。
 
そこで、葬列の前と後のごんを比較することで主題が見えてくる。
 
たとえばこんな発問になる。
 
「人物A1を、人物A2に変えたもの(X)は何だろう」
「出来事Xは、人物をどう変えたのか」
「人物A1と人物A2を対比してみよう」
 
その他、「縄文時代と弥生時代を絵を見て比較しよう」「夏の雲と秋の雲を比べてみよう」など、子どもが考えやすく、教師にも作りやすい発問になる。
 
抽象、概括は省略するが、教材研究の基本はこれらにある。

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして (kacky)
2012-01-23 23:43:20
突然のコメント、失礼致します。
私は埼玉県で中学校の社会科教員をしている者です。授業で「りんごの作況指数」のデータを使おうとネット検索をしていたところ、先生のブログにたどりつきました。
勤務校で使用している教科書(東京書籍)には、りんごの作況指数のデータが掲載されていません。そこで、りんごの作況指数や価格に関するデータを教えていただきたいのですが、よろしいでしょうか?
コメントありがとうございます (管理人)
2012-01-24 20:44:27
 私は、基本的にデータ等の情報は直接問い合わせます。その方が説得力があるからです。
 リンゴの場合、(当時と名前は違いますが)青森県庁りんご果樹課などに手紙で問い合わせていました。
 今はメールがあるので、手軽に、安価でできますね。そこでは、さらに次の問い合わせ先を教えてもらえますよ。
ありがとうございました (kacky)
2012-01-25 22:22:28
早速「りんご果樹課」に連絡をしました。
どうやら「りんごの作況指数」は発表していないということで、pdfファイルで収穫量の変化(台風落果などの理由も含めて)、りんごの平均価格の推移のデータをいただきました。

授業計画としては、先生が掲載なさっている発問をねらいとして、
○青森県のりんごの収穫量+全国収穫量に占める青森県の割合
○米の作況指数
○やませに関する資料
の3つの資料を生かして、協調学習(ジグソー法)を進めていこうと考えました。

初コメントにもかかわらず、私のような若輩者に教えていただきありがとうございました。
はやい!すごい! (管理人)
2012-01-25 22:53:18
 フットワークの軽さに、社会科教師としてのセンスを感じます。確かに、時々により公開する資料も変わってくるかもしれませんね。
 私こそ勉強になりました。
 ありがとうございました。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。