歩きだす夏 著者あとがき

レム睡眠といって、眼球が急速に動いたり、呼吸があらくなったりする睡眠パターンがあります。レム
睡眠中に起こされると多くの人が夢を見ていたといいます。犬やネコも夢を見るといわれるのは、レム
睡眠があるからです。わが家のゴールデン、ハルも睡眠中によく体がけいれんしたり、ときにはかすれ
声でハフハフいったりします。
　レム睡眠を実験的にうばいつづけると、精神的、肉体的に悪影響が出るそうです。レム睡眠、しいて
は夢も、生理的に見る必要があるかもしれません。
　同じ夢でも、自分のしたいことやほしいものを望む夢は人間独自のものにちがいありません。こちら
の夢は見なくても病気にはなりません。でも夢をいだいている人は、夢に向かって歩いていくことがで
きます。そのこと自体が人生を豊かにします。子供たちにはぜひ夢を追ってほしい、好きなことをたい
せつに育んでほしいと思います。
　ちなみにわたしの長年の夢は本を書くことでした。それがかなうようになってきたいまこそ、一つ一
つの作品を心をこめてたいせつにつむいでゆきたいと思っています。
　最後になりましたが、「小川未明文学賞委員会」および審査のせんせいがた、編集者の皆様にはい貴
重な助言、ご指導をいただきました。心より感謝いたします。主人公の加奈子と同じように、夢を探し
て新しい道へとふみだした娘に、この本を贈ります。